日本の場合、ストックや酒の肴として缶詰が買われることが多いと思います。英国では、地震の心配がないので、パンデミックによる長期ロックダウンが起こるまで、非常用に缶詰をストックする習慣はほぼありませんでした。
朝食メニューに使われるベイクドビーンズ、サラダに使うツナ、パスタに使うトマトなどの缶詰以外はどのように使えばよいのか分からない英国人も多く、缶詰自体がやや“ダサい”と見られていました。この20年間でグルメ志向が高まったとされる英国において、缶詰はやや忘れ去られた存在になっていたと言えます。
2023年に入り、米国では簡単タパス風メニュー「#魚の缶詰でデートナイト」がトレンドになり、英国にも上陸。お手ごろ価格の魚の缶詰を開け、そのままボードに置き、パンやピクルスを添えるだけで、インスタ映えするメニューになりました。
英国において、魚の缶詰はTikTokで広く知られるようになり、その後に新聞が取り上げたことで3月〜4月頃に大きな話題になりました。アイデア一つで魚缶のイメージがガラリと変わるという驚きとともに、食品や外食費の値上がりに頭を抱えていた人々の心をつかんだのです。
物価高が長引いていることもあり、外食せずとも自宅で「節約・時短・おしゃれ」を実践できるということで、このトレンドは今も続いています。また、英国人は陽光溢れるスペインやポルトガルなど、地中海地方への旅行が大好き。魚の缶詰ボードは休暇先で味わったタパスのようなおつまみ系料理に似ており、そのイメージを簡単に再現できるのも人気の一因のようです。これまで家飲みのおつまみはナッツやポテトチップスのような乾き物がメインでしたが、魚の缶詰の登場でバリエーションが広がったと言えるでしょう。
このトレンドを反映してか、かつては地味だったスーパーの魚の缶詰のデザインも、人気イラストレーターの手によっておしゃれにイメージチェンジ。デリにも魅力的なビジュアルの缶詰が増えています。
ハム、ソーセージ、パテなど肉の加工肉をボードに盛り合わせたフランスの「シャルキュトリー・ボード」にならい、「シーキュトリー(海のシャルキュトリー)」や「魚の缶詰シャルキュトリー」といった新語も生まれました。パンデミック期に保存食として再評価された缶詰ですが、しばらく進化は止まらないようです。
執筆/ネモ・ロバーツ
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