大河ドラマ第58作目となる本作は、宮藤官九郎オリジナル脚本で“知られざるオリンピックの歴史”を描いていく痛快&壮大なドラマ。中村勘九郎と阿部サダヲの2人がリレー形式で主演を務めるほか、綾瀬はるか、大竹しのぶ、生田斗真、役所広司、竹野内豊、杉本哲太、杉咲花、永山絢斗、さらにビートたけし、森山未來、神木隆之介、川栄李奈ら錚々たるキャストが集結している。今回の脚本は、つまり二人主人公という、これまでにないような形式であり、映画監督としても知られる北野たけしがナレーションを務める。「いだてん〜東京オリムピック噺」で幻のオリンピックとなった東京大会の事情、嘉納治五郎の無念の死、先生の意思を継いだ世界最長のマラソンランナーなどのエピソードを掘り起こし、つなげて2020へ盛り上げていこうというものだ。
その嘉納治五郎は教育者、また大日本体育協会会長として知られる講道館柔道の創始者で、日本体育協会を起こしてからは、一貫して国民体育の振興をめざしてきた。とりわけ長距離走と歩くことを重視し、東京高等師範学校でも、学生を年に2回、約20キロ走らせていと言われる。また、単に走るだけではなく、神社や仏閣などの名所旧跡を走ることも提案したとされる。体を鍛えるとともに地理歴史や産業についても学ぶことができるというのが、その狙いだというので、環境を考え、地域をよく見てもらおうと沿道の応援者が多い手賀沼マラソン大会に通じるところが多い。1920年に、金栗四三らによって始められたのが箱根駅伝で、中央学院大学のある我孫子は、こうした嘉納の考え何かしら実現した街になっていると言えそうだ。嘉納は我孫子に別荘をもち、当地に学園計画を講じるも、一族で灘校の開設の話しあり、我孫子農園に転じて野菜作りに取りくみ、余暇を楽しむ一方でなくブランド野菜を出荷したと伝聞される。
晩年の嘉納は、まさに老骨に鞭打って1940年の東京オリンピック招致のため、世界各国をまわった人生を送っていた。1936年7月、4年後の五輪開催地を決めるドイツ・ベルリンでのIOC総会では、当時のIOC委員長のラトゥルが、最初に発言する委員として「IOCのもっとも古い委員である、日本の嘉納治五郎」と指名、嘉納が立ち上がると会場にはちょっとしたざわめきが起こったという(※2)。彼はこのとき76歳になろうとしていた。それまで東洋で開催のなかった時期に、東京での五輪開催については、ヨーロッパからは遠すぎると反対の声もあった。そこで、嘉納は得意の英語でIOC総会の皆の前で演説し、「日本が遠いという理由で五輪が来なければ、日本が欧州の五輪に出る必要はない訳ですが、私たちは世界の大会に出ることを目指して参加しました」とヨーロッパ勢を一蹴し、最後は「アジアの一角に全世界の若者が集まる時、世界は新しい平和への幕開けの時を迎えるであろう」と結んだのだとされます(※2)。IOC委員による投票の結果、東京は強力なライバルであったヘルシンキ(フィンランド)を9票上回る36票を獲得し、オリンピック開催地と決定されたのです。
日本政府は、1937年に日中戦争を起こしていた時期で、嘉納は翌年のエジプト・カイロでのIOC総会で東京オリンピックの開催が改めて確認されたのを見届けました。すでに病の身にあった彼はその帰途、日本到着を2日後に控えた5月4日、客船・氷川丸の船上で息を引き取りました。それから2ヵ月後、嘉納が決めたオリンピックの東京開催ではあったが、戦費捻出に苦慮した政府は、開催地返上を7月15日に決定したのです。
※1 クリストファー・W・A・スピルマン「嘉納治五郎――柔道と日本の近代化」(筒井清忠編『明治史講義【人物篇】』ちくま新書所収)
※2 鈴木明『「東京、遂に勝てり!」1936年ベルリン至急電』(小学館ライブラリー)
※3 真田久「嘉納治五郎の考えた国民体育」(菊幸一編著『現代スポーツは嘉納治五郎から何を学ぶのか――オリンピック・体育・柔道の新たなビジョン』日本体育協会監修、ミネルヴァ書房所収)
参照:
http://bunshun.jp/articles/-/9984?page=2
もう一人のヒーロー
https://taigadrama-info.com/tabatamasaji
「いだてん」キャスト
http://taigadorama.xyz/idaten/181202-2/
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