韓国の経済全体をパイになぞらえれば、パイの大きさはほぼ一定のままである。しかも、文政権はこの一定の大きさのまま、自分の支持を集められるようにパイを切り分けなければならない。この結果が、彼の手法が「敵」と「味方」に分けるポピュリズム的である理由ともなる。効率化政策に踏み込めないのは、既に企業社会の中にいる人たち、特に大企業の労働者や組合が文政権の支持母体は重要な「味方」だということを示している。実際、大幅な賃上げを掲げた文政権の政策にその特徴が表れていた。文政権の雇用政策は、既得権者である大企業の雇用を守り、一方で若年失業率を累増させている。
その経済政策は、ポピュリズムの「敵」―「味方」に分けた政策の典型になっている。文政権の支持率は低下傾向にあるが、それは文政権のポピュリズムが持つ弱さにある。さらに、この「敵」−「味方」は徴用工問題でも顕著である。もちろん、この場合の「味方」は自国民であり、「敵」と切り捨てたのは日本国民である。我が家のちゃぶ台はそのまま、隣の国のちゃぶ台の足を揺らがしたことになる。
だが、この無法行為、その背景にある「敵」−「味方」の論理を、文氏は大統領になる前から肯定していた。
先日、ソウル市内に徴用工像を設置した主体は、全国民主労働組合総連盟(民主労総)である。韓国のナショナルセンターに当たる労働組合組織は、この民主労総と韓国労働組合総連盟(韓国労総)の2つが存在する。民主労総はより闘争的な組織として知られているから、これについては左派的な組織の動きだと言って間違いではない。しかしながら、この民主労総が文在寅政権が密接といえる関係を有しているかといえばそれは微妙である。徴用工像設立をめぐる動きの中で、むしろ歴史認識問題を利用して自らの存在を誇示しようという民主労組の思惑を読み取るべきであろう。
第二に重要なのは、徴用工問題では、「当事者」の力が大きいことである。この問題は第2次世界大戦時に労働者として動員された人々とその遺族が、失われた経済的補償を求めていることがその基盤となっており、当然、韓国各地で進められている裁判や徴用工像設置にはこれらの人々が深く関与している。とりわけ裁判は当事者なしには不可能であり、当然彼らの存在は重要になってくる。
元慰安婦は、その特性上、子女を持たない人が多く、また子女が存在する場合においてさえ、依然として慰安婦に対する社会的偏見が存在する現状では、慰安婦の遺族が自ら積極的にカミングアウトして活動するハードルも高い。生存者数が30人余りとなった元慰安婦らと異なり、徴用工の運動は、軍人・軍属や労務者はそもそもの被動員数が多く、当事者の数も比較にならないほど多い。 朴槿惠政権の反日政策の要になっていた慰安婦像設置などを進める左派の市民団体「韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)」との密接な協力のもと行われたか、といえばそんな事実は存在しない。歴史認識問題に関心を持つ左派の諸団体は、2015年末の慰安婦合意に反対していたように、徹頭徹尾、朴槿惠政権への対決姿勢を貫いたからだ。ところが、徴用工の問題は組織としても当事者、原告となりうる人々の裾のも広いのでこれまでの慰安婦問題以上に日本を敵に見立てて、話が済んだとは言わない事情に突き進んでいる。
参照HP:https://ironna.jp/article/11097?p=1 (田中秀臣)
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