複数の関係者によると、政府は経済財政諮問会議の民間議員に積極財政論者で知られる元日銀副総裁の若田部昌澄早大教授の起用を決めた。4日には新設された「日本成長戦略会議」の委員に財務省の財政再建路線に異を唱えるクレディ・アグリコル証券の会田卓司チーフエコノミストなどを任命した。
若田部氏は2018年から23年まで日銀の副総裁を務め、日銀による大胆な金融緩和を提唱するリフレ派の代表的な論客。23年には当時円安進行への懸念を背景に浮上していた2%の物価目標の見直しに副総裁として反対を表明している。
会田氏は、日本の財政を巡り、歳入の低迷と歳出の拡大でワニの口のように赤字が拡大し続けるとの財務省の主張を否定。他の主要国では採用されていない国債の60年償還ルールなどを撤廃すれば、日本の財政は危機的な状況でないと主張。日銀の利上げについても、人手不足で雇用がひっ迫していても実質成長率の低迷する現在は時期尚早との立場だ。
会田氏は、今回のメンバー起用を受けてロイターの取材に応じ、「自身の主張が政策に反映される保証はない」としつつ、「機能していない国債60年償還ルールを前提として、債務償還費を計上し、歳出と税収の『ワニの口』の拡大や歳出に占める国債費を過大に見せるなどの財政危機の誇張は止める」、「日銀には、強い経済成長の実現と物価の安定を両立させるため、適切な金融政策を行うことを期待する」などと述べた。
成長戦略会議には元日銀審議委員でPwCコンサルティング合同会社上席執行役員の片岡剛士チーフエコノミストも起用された。片岡氏は安倍晋三政権で、首相の経済アドバイザーであった本田悦朗元内閣官房参与(京大客員教授)と二人三脚で消費増税の延期判断などで理論的支柱だった。
若田部氏と会田氏らは、財政再建の目安として、政府がこれまで重視してきた基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化達成よりも、債務残高の対GDP(国内総生産)比の安定的な低下を重視する点で高市首相や城内実経済財政相と見解を一にしている。
財務省関係者は「成長戦略会議は他にも10人の有識者がいるが、諮問会議の民間議員は4人のみで、若田部氏起用のインパクトが特に大きい。来年夏の『骨太の方針』などでは、若田部氏が反対するものは事実上書き込めない可能性がある」と身構える。
今回の人事を他の民間エコノミストはどうみているのか。
農林中金総合研究所の南武志理事研究員は「アベノミクス復活だ。高市首相の明確なリーダーシップが表れているのは良いのではないか」とし、「景気は決して良くはなく、消費の活性化には財政・金融政策を両方発動する高圧経済が必要な場面ではある」と評価する。
同時に「財政出動の歯止めが効かず、円安にもブレーキが効きづらいリスクはある」と指摘する。
実際、会田氏は、日本経済が十分活性化すれば為替は円高トレンドに転じるとして日銀による早期利上げは景気の腰折れリスクの方が大きいと主張している。
SBI証券の道家映二チーフ債券ストラテジストも、金融市場関係者は高市政権の積極財政姿勢を十分織り込んでおらず、今後、非常に積極的な財政拡大方針が徐々に浸透し金利上昇などの反応が想定されるとみている。
(竹本能文 編集:橋本浩)
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