研究の対象の細胞には、どんな意義があるのか。
Q 制御性T細胞とはどんな細胞か。
A 一言で言うと、免疫の暴走にブレーキをかける細胞だ。
Q 免疫といえば、外敵から体を守ってくれる。
A 免疫にはたくさんの種類の細胞が複雑にかかわっている。侵入してきた病原体をかまわず食べてしまう細胞や、多様な敵を見分けて攻撃をしかける細胞がある。重要な役割を果たすのが白血球の仲間のリンパ球で、大きくT細胞とB細胞に分けることができる。B細胞は「抗体」と呼ばれる武器を作って、外敵を無力化する。
Q T細胞の役割は。
A 種類によりさまざまだ。敵を殺すキラーT細胞や、B細胞に抗体を作る命令やキラーT細胞を働かせる命令を出して「司令塔」として働くヘルパーT細胞もある。制御性T細胞もその一つ。肺のそばにある胸腺という器官で、未熟なT細胞から育っていく。
制御性T細胞、がん治療につながる期待も 坂口志文さんの展望は
Q 胸腺はT細胞が成長する重要な場所なのか。
A 自分の体に反応するようなT細胞は取り除く役割がある。しかし、この選抜は完全ではない。関節リウマチや1型糖尿病など、自分の体を攻撃する自己免疫病をときどき起こしてしまう。
Q それを制御性T細胞が防いでいるのか。
A その通り。制御性T細胞は、ほかのT細胞の暴走を抑えることで、様々な免疫活動のバランスを調整する役割がある。
Q 制御性T細胞はがんとはどう関係するのか。
A がん細胞はおおむね免疫で排除されるが、制御性T細胞は排除を抑えてしまう。制御性T細胞の働きを弱めて、がんへの攻撃を促す研究が進められている。逆に制御性T細胞の働きを強めれば、自己免疫疾患やアレルギー、移植後の拒絶反応の治療に利用できる可能性がある。
出典 朝日新聞(10/6)
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