'12年に北京駐在員時代を経験し、現地で「マンガ学校」を主催した経験があるので、いまの中国の「アニメのレベル」が知りたいと思って、今月4日から、鳴り物入りの中国のアニメCG映画『ナタ 魔童の大暴れ』を見ることにした。何せこの映画、1月29日の春節に中国で公開されるや、1ヵ月で3000億円以上もの興行収入を挙げたのだ。これまでの日本最高が'20年公開の『鬼滅の刃』の404億円なので、一桁違う。
駐在員当時、中国で「国民的アニメ」とされていた『喜羊羊と灰太狼』を、北京の映画館であくびを嚙み殺しながら観たものだ。これでは日本のアニメに追いつくのは100年かかると思った程度なので、獏人気の中国アニメを見てみることにした。
それで、『ナタ』であるが、2時間20分の上映時間のうち、初めの30分くらいは、「なかなか進歩したな」と感心した。日本でヒットするかな?
それでも1時間半くらいは、やや冗漫に感じ、「アメリカ人にはウケるかもしれないけど、目の肥えた日本人にはどうかな?」だったが、ラストの20分が実に圧巻!ちっぽけな脳ミソも、すっかり破壊されてしまった。
ラスト20分の「破壊力」を目の当たりにして、中国的な大陸の気宇壮大さ、日本的な細部にこだわる繊細さ、ハリウッド的な高いCG技術、韓流ドラマ的なコミカルなエンターテインメント性、そして中国の若者が持つスマホで鍛え上げたゲーム的要素。これらが「五位一体」となって、これまで観たこともないハイレベルな「夢幻世界」を演出していたのだ。この映画の主題は「破」だと思った。超不景気な世の中で、既成のものを打ち破っていく中国の若い力が見えたのである。
そのうち、「アニメといえば日本より中国」の時代が来るかも?
「週刊現代」2025年4月28日号より
2025年04月20日
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