図表1-5は内閣府「国民経済計算」から実質GDPと名目GDP、GDPデフレーターの推移を取ったものである。改めて実質GDPの過去からの推移を確認すると、1980年代の10年間は57.3%増加していた(269.7兆円→424.2兆円)。しかし、1990年代は13.8%(424.2兆円→482.6兆円)、2000年代が5.8%(482.6兆円→510.7兆円)、2010年から2022年は7.4%(510.7兆円→548.6兆円)と近年の経済成長率は緩やかなものにとどまっている。物価の動向を反映するGDPデフレーターに目を転じると、1990年代後半から2010年代前半にかけて長く数値は低下し、日本経済は長期にわたるデフレーションを経験してきた。
しかしその一方で、2013年を底にGDPデフレーターは緩やかな上昇基調に転じており、物価の基調は2010年代半ば以降変わってきていることがわかる。
日本の経済の動向を主要先進国と比較しながら振り返ってみよう。人口が一定規模以上の先進国6ヵ国(米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、日本)について、実質GDPの推移を表した。この10年ほどの成長率を主要先進国と比較すると、日本の経済はかなり悪いパフォーマンスであったといえるだろう。
2010年以降の実質GDP成長率(年率換算)を先進6ヵ国で比較すると、日本は最下位となる。実質GDP成長率を上から順に並べていけば、米国が2.3%、イタリアが1.5%、ドイツが1.4%、英国が1.3%、フランスが1.1%、最後に大きく引き離されて日本が0.6%となっている。年率換算の成長率は、毎年その比率が積算されていくことになるため、コンマ数%の違いであっても長期的には大きな差になる。
続いて、供給面から日本経済の低い成長率の要因を探っていこう。実質GDPは、一国全体の労働投入量である総労働時間数に、1時間当たりの実質労働生産性を乗じて算出することができる。この計算式で考えれば、経済規模を拡大させるために必要なことは、労働投入量(総労働時間数)を増やすか、1時間当たりの労働生産性を高めるかという2点に集約することができる。
このような関係性で経済の動向を考えたとき、日本の低い経済成長率をどう解釈できるだろうか。日本の労働者の1時間当たりの労働生産性は、2000年から2010年の間は年率1.1%の伸び、直近の2010年から2021年までの間は年率で0.9%の伸びとなっている。近年の実質労働生産性上昇率はドイツが1.1%、米国が1.0%で日本はそれに次ぐ水準である。この結果を見ると、日本の労働生産性は主要先進国と比較してもわりと堅調に上昇しており、日本経済の低迷の元凶が必ずしも労働生産性の低迷にあるわけではないことがわかる。
なお、これらの数字はいずれも1時間当たりでみていることは留意しておきたい。「一人当たり」ではなく「1時間当たり」としているのは、一人当たりでは働く時間が少ない高齢者の増加などによる影響をかなり受けてしまうため、本来の生産性の動向をみるのであればマンアワー当たりの生産性をみるほうがよいと考えるからである。
日本の経済成長率が他国と比べて低い原因について、労働生産性の低迷が原因ではないということは、裏を返せばその主因には総労働時間数の減少があるということが理解できる。他国と比較すればこの10年あまりで労働力が減少したのは日本だけであり、労働投入量はこの10年ほどで0.3%減と他国と大きく乖離した数値となっている。
労働投入量が減少している背景には、先述のとおり人口動態の影響がある。近年は女性や高齢者の労働参加が急速に進んでおり、過去と比べればこの10年間は労働力の減少を比較的抑えてきた方だと言える。
しかし、今後は日本人の就業率の上昇だけでは労働力の減少を十分に補うことは難しくなっていくだろう。他国は人口が増加しているなかで労働投入量が増えているのに対して、日本は労働力人口の減少や高齢化などに伴う労働時間の短時間化などによって、総労働時間数は持続的に減少していくと予想される。
将来を展望すると、労働力の減少速度はさらに加速していくことは間違いない。そう考えるのであれば、これからの日本の経済成長率のさらなる鈍化は、もはや既定路線と考えた方がいいだろう。
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