年齢を重ねると、程度の差こそあれ、細胞の炎症は必ず起こるものですが、ショーシャ博士は「細胞の炎症を極力抑えることで、50歳の見た目のまま120歳まで生きることも可能」と言います。炎症を最小限に抑えるためには、細胞が必要とする栄養素をきちんと送り届けて、炎症が起きても速やかに修復できるようにしなければなりません。
そのためには意識して抗酸化物質の豊富な食品を摂ることが大切です。抗酸化物質の代表はβカロテン(ビタミンA)、ビタミンC、ビタミンEなどのビタミン類と、亜鉛やセレンなどのミネラルです。ビタミンAはニンジン、ブロッコリー、ほうれん草など色の濃い野菜に多く含まれ、玄米や大麦などに含まれるビタミンEや、肉類や卵に含まれるセレンと一緒に摂ることで細胞膜を炎症から守る働きをします。野菜や果物に含まれるビタミンCは免疫系を活性化し、牡蠣や豚レバー、小麦胚芽などに含まれる亜鉛は、活性酸素除去酵素などさまざまな体内酵素を作るのに関わっています。
他にはトマトに含まれるリコピンや、赤ワインやチョコレートに含まれるポリフェノールなども抗酸化物質です。これらを参考にしつつ、要は好きなものを食べてください、ということです。食事の快感が免疫力のアップにつながり、ひいては認知症にもがんにもなりにくくなるのです。
前頭葉が老化すると、決まった行動を好むようになります。行きつけの店にしか行かなくなったり、同じ著者の本ばかり読むようになったりするのが一つのサインです。、新しい店に出かけたり、読んだことのない作家の小説を読んだり、可能ならば俳句を詠んだり小説を書いたりしてみると前頭葉が鍛えられます。
日本では大学でもあまり前頭葉を使う教育をせず、仕事でも自分で考えたことをやるのではなく「言われたことができればいい」という風潮が強いため、前頭葉を使うことが苦手な人も多いのですが、まだまだ続く長い人生のためにもぜひチャレンジしてください。
読書は言語を司る側頭葉を使うだけですし、計算やある程度難しい数学の問題を解くときも頭頂葉しか使っていません。ふだんから頭を使っているつもりの人でも、認知症と強い関連のある前頭葉は案外と使っていないもの。
前頭葉が使われるのは、何かを創造したり新規なものに対応したりするときで、他人としゃべるときには強制的に頭を働かせています。自分が話したことに対して相手からの反応が返ってくるというやりとりで「頭を使う」ことが有効なトレーニング法となるのです。
私は、新型コロナウイルスが蔓延していた時期に3回の陽性判定を受けてみました。しかし、いずれも無症状でした。私は高血圧、糖尿病、心不全を抱えていて、年齢も60歳を超えています。コロナ発症リスクが最も高いとされる条件を満たしていたにもかかわらず、なぜ無症状だったのかと言えば、免疫力が高かったからでしょう。
医者の言うことを聞かないで、血圧が高くても好きなワインを飲み、おいしいものを食べていました。逆にふだんからいろいろな薬を飲み、節制していたことで、さまざまな免疫力が落ちてしまって、コロナかかったりしやすいのではないでしょうか。
日ごろの運動は大切ですが、激しすぎると体内に活性酸素を増やすことになり、老化の促進につながる恐れもあります。スポーツジムの利用者データを見ると、最もよく利用している層は60代で、次が70代だそうです。年齢を考えても、あまり無理をすると、かえって筋肉や腱(けん)を痛めることになりかねないでしょう。
スポーツジムに通う場合は、プールのあるところを選ぶといいでしょう。泳ぐためというよりも、水中でのウォーキングが高齢者にとって最適の運動になるからです。水中では浮力が働くので、みずからの体重による負担がかからず、膝や腰を痛めることがありません。その意味では地上でウォーキングするよりも優れた運動だといえます。
また、水中では水の冷たさが刺激となって身体が体温を維持しようとします。すると体温調節機能の衰えを防ぐことができるうえに新陳代謝もよくなります。水中にいるとそれだけでリラックスできる効果もあります。
「この年齢になってスポーツジムなんて……」などと尻込みせず、ぜひとも水の中を歩く快さを味わってください。適当なスポーツジムが近所になければ、毎日散歩をするだけでも高齢者にとっては十分な運動になります。日光を浴びながら戸外を歩けば骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防にもなるし、セロトニンが分泌される上に、気分が晴れて、うつ症状も避けられます。
(初公開日:2024年11月29日)
---------- 和田 秀樹(わだ・ひでき)
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