カレ氏は「施設を見て素晴らしかった。2つの大国が先端半導体をつくる大きなミッションで協力する一例だ」と述べた。最先端の半導体の量産を目指すラピダスが狙う2ナノ(ナノは10億分の1)メートルの半導体は「『7ナノ』のものに比べ電力消費が75%少ない」と話した。講演は、東京ビッグサイト(東京・江東)で開催中の半導体の国際展示会「セミコン・ジャパン」で行われた。
生成AI(人工知能)の普及で世界で電力消費が膨らんでおり、省電力を強みにできるとの見方を示した。ラピダスは2027年の量産開始を目指している。現在、7ナノ台の半導体は台湾の台湾積体電路製造(TSMC)や米インテルなどが生産する先端品だ。IBMとラピダスは22年、さらに線幅が微細な2ナノの半導体の製造で提携した。
齋藤健・経済産業大臣は、今年4月2日の記者会見で、政府・経済産業省が最先端半導体の受託生産を目指すRapidus(ラピダス)に対し、2024年度中に最大で5900億円の追加支援を行うと発表した。既存の支援額(3300億円)と併せて、政府の同社に対する直接的な支援の規模は1兆円に迫ることになる。手厚い支援の背景には、経済安全保障の観点から半導体のサプライチェーン確立が必要不可欠な状況や、ラピダスが2027年頃の量産を目指している2ナノメートルサイズの半導体が「生成AIや自動運転など日本産業全体の競争力の鍵を握るキーテクノロジーである」(斎藤経産大臣)との問題意識がある。
ただ、今回で政府による支援が終わりということはない。ラピダス自身も量産開始までに総額で5兆円程度の資金が必要だと認めている。客観的に見れば、ラピダスは、政府支援のほか、民間金融機関からの借り入れ、上場を通じた公募増資や売り出しなど、様々な資金調達を実現できないと、量産の開始前に経営が行き詰まるリスクを抱えているのが実情だ。
米国が中国とのデカップリング(経済の分断)を進める中で、世界の半導体業界のトップ3の中に自国企業がインテル1社しか含まれていないうえ、そのインテルが3位とはいえ、1位の台湾TSMCや2位の韓国サムスン電子に大きく後れを取っている状況に危機感を持ったからだ。そして、米政府は密かに、日本政府・経済産業省に対し、半導体製造部門を売却し、設計などに特化するファブレス企業への変身を目指しているIBMとのエクスクルーシブな(唯一の)提携先になるファウンドリを育成する考えがないか打診してきた。そして、この打診を「渡りに船だ」とみなした、日本政府・経済産業省が受け皿会社として設立・立ち上げを促したのが、現在のラピダスだったのだ。
日経新聞(12/13)
町田 徹 (https://gendai.media/articles/-/127442?page=2)Rapidus株式会社(ラピダス、英語: Rapidus Corporation)は、日本の東京都千代田区に本社を置く半導体メーカー。2022年(令和4年)8月10日に個人株主12人により設立。
設立時の代表取締役社長はウエスタンデジタル日本法人の社長を務めた小池淳義、取締役会長に東京エレクトロン前社長の東哲郎が就任。同年10月31日にキオクシアやソニーなど日本の大手企業8社から73億円の出資を受けた。2027年3月にプロセス・ルールが2nm以下の先端ロジック半導体の開発・量産を行うことを目指しており、そのための経済産業省の研究開発委託先として同年11月11日に採択されている。
社名はラテン語で「速い」を意味し、社長の小池淳義が命名した。ロゴマークは富士山をイメージしている。
1990年代以降、日本の半導体産業は凋落したが、半導体が経済・社会のデジタル化を支え、安全保障上も重要であるとの認識が2020年代にかけて高まり、各国は性能向上と自国および友好国内での生産を重視するようになった。
2022年(令和4年)6月、第2次岸田内閣がに発表した骨太の方針の中で、次世代先端技術の開発を行う民間企業への支援を検討することや、2020年代後半に次世代半導体の設計・製造基盤を確立することなどが盛り込まれた。ラピダス設立の後、10月3日の第210回国会における岸田文雄首相の所信表明演説の中で、デジタルトランスフォーメーション(DX)に対して官民の投資を促し、日米連携による次世代半導体の技術開発・量産化を進めていくと表明していた。
経済産業省は、5月に合意した日米の半導体協力基本原則に基づいた両国間での共同研究を見据え、次世代半導体研究を行う組織として「最先端半導体技術センター(LSTC)」を設立することを決定している。これにより研究開発拠点としてのLSTC、将来的な量産製造拠点としてのラピダ ス両輪での日本の次世代半導体量産基盤の構築を目指すとしている。
2022年に経済産業省および新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が半導体不足に伴う補正予算によって、公募を行ったポスト5G通信システムの基盤強化に関する先端半導体開発委託事業に応募し、11月8日に採択された。これにより、政府から9200億円の支援を受けている。
2022年(令和4年)12月13日、IBMとの提携を発表。この時点では大量生産技術の確立していないGAAトランジスタプロセス(2nm世代プロセス(英語版))製品の製造技術をライセンス購入することとなった。IBMは前年2nm製品の開発に成功していたが、自社では半導体の大規模生産は行っておらず、技術のライセンス供与先を探していた。微細化技術を生かした製品開発では、韓国のサムスン電子が2022年にGAAトランジスタプロセス(3nm世代プロセス(英語版))で量産を開始、台湾の最大手台湾積体電路製造(TSMC)は2025年にGAAトランジスタプロセス(2nm世代プロセス)の量産化を発表しており、先行企業を追いかけることとなった。
2023年(令和5年)に入ると、工場設立に向けた動きを開始し、2023年(令和5年)2月21日には、北海道千歳市の工業団地「千歳美々ワールド」に65ha(ヘクタール)の用地を借り受け第一工場設置を決定。そして、9月1日に当地において第一工場の起工式が行われ、工事が開始された。
当面の目標は、2025年4月までに工場の建設を完了し、試作プロセスの稼働が目標であるとされている。
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