内閣府によると、1950年の日本人女性の平均寿命は62歳、男性は58歳でした。それが、2021年には88歳、82歳になりました。内閣府の予測では、2040年には90歳、84歳になります。2050年には全5261万世帯の44.3%に当たる2330万世帯が1人暮らしとなり、うち65歳以上の高齢者が半数近くを占めると想定されます。
この30年間で、日本人の平均寿命は6年も延び、65歳を迎えた女性の2人に1人、男性の場合は4人に1人が90歳まで生きることが予想されています。高齢世帯の過半数が、少ない収入でやりくりしているのが現実です。内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、高齢者世帯の平均所得金額は332.9万円で、高齢者世帯と母子世帯を除いたその他の世帯(689.5万円)の約半分なのです。60〜80歳を豊かで自由に過ごすために、どれくらいの支出がありそうなのか、どれほど稼げばいいのかを早めに把握しておくことが重要になるだろう。
高齢期の多くが不安に駆られる一つは保健医療費ですが、実際のところ、それほどの額ではありません。
実際に65歳から74歳において家計簿をみると、保健医療に関する支出は平均月1.7万円となっています。(『ほんとうの定年後』より)
住宅費に医療費、さらには教育費(60代後半からはほぼゼロ)などから解放された定年後には、生活費がぐっと下がっています。
もっとも、内閣府の「2019年度 全国家計構造調査」によれば、65歳以上の単身者の3割は貧困状態にあります。つまり、一人暮らしの高齢者が3人集まると、そのうち1人は貧困に苦しんでいるという状況になります。
総務省の家計調査報告書を過去10年にわたって追っていくと、そうした高齢世帯の赤字額の平均値は、夫婦世帯で月5万円、単身世帯で月3.5万円です(実収入から支出を引いた不足分の2010〜2019年における平均値。つまり、夫婦世帯なら5万円×12カ月で年間60万円、単身世帯なら3.5万円×12カ月で年間42万円ものお金が不足することになります。
老後生活を仮に25年間とすると、年金をもらっていても不足する金額を概算すると、夫婦で1500万円(60万円×25年)、単身でも1050万円(42万円×25年)になります。年金をもらっても、それを補うだけのお金がなければ、生活資金のほうが底をついてしまうのです。
これは、現在の高齢世帯の推定数字です。そのため、将来の高齢世帯ではもっと割合が高くなる可能性が高いと思われます。彼らが将来もらえる年金は今より少ない可能性が極めて高いからです。
10万部突破のベストセラー『ほんとうの定年後』では、多数の統計データや事例から知られざる「定年後の実態」を明らかにしている。
60代管理職に就く人はごく少数、50代で仕事の意義を見失うものの、70歳男性の就業率は45%になっている。退職後の年収は300万円以下になるため、月10万円位の稼ぎを継続することになる。住宅ローンの支払額が、60代では1万円台、70代ではほとんどゼロとのことだった。多くの人は現役世代のうちに返済完了しているようだ。
そこで、多くの人の家計において気になるのは、持ち家か賃貸かというテーマがある。
データからは、年齢を重ねるごとに、持ち家比率が上がり、60代では9割が家を保有することがわかっている。
34歳以下の年齢階層で51.1%であったものが、40代後半で80%、60代前半で90%を超える。そして、最終的には大半の家庭で家を保有するという選択をしていることが明らかになっている。
データからは、40代後半で80.8%だった持ち家比率が60代後半で92.3%まで上昇する。
子育てがひと段落したのちに、身の丈に合った小さな住宅を購入するという選択も十分に合理的なのである。(『ほんとうの定年後』より)
では、それにともなう住宅ローン返済を見てみよう。
〈住宅ローンの平均返済金額は、30代後半から40代前半の5万円程度をピークに下がっていく。現在のシニア世代は住宅バブルの真っ只中に住宅を購入した人も多く含まれる。それでもなんとか住宅ローンは払い終えている人がほとんどなのである。
住宅ローンの支払金額は、60代前半は月1.6万円、60代後半が同1.1万円、70代以降は住宅ローンを返済している人はほとんどいない。
〉(『ほんとうの定年後』より)
〈高齢期に住宅ローンの支払いが少ない理由は、多くの人は住宅ローンの繰り上げ返済を行っており、現役時代に債務を返し終わるからである。
住宅金融支援機構「住宅ローン貸出動向調査」によれば、2019年度の住宅ローンの約定貸出期間は27.0年であるのに対し、完済債権の貸出後経過期間は16.0年であった。
近年は資産価格の高騰や金利の低下による影響などから、住宅ローンの返済期間は長くなる傾向にあるが、現状では多くの人が20年以内には借入金を返し終えていることがわかる。〉(『ほんとうの定年後』より)
参照 現代ビジネス(5/4)
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