50年後の2070年には総人口が約8700万人、100年後の2120年には5000万人を割るという。
ただ、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。
ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。
※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。
ローカル線への大打撃
人口減少が鉄道会社の経営に与える影響としては、ローカル線の赤字も大きな課題だ。2022年7月に国交省の有識者会議がまとめた提言をきっかけとして、廃止に向けた気運が一気に高まっている。
国鉄分割民営化以来の大きな節目を迎えているということだが、国鉄民営化当時は人口が増えていた。大都市圏までが人口減少に悩む現在とでは環境があまりに違い過ぎる。
かつてローカル線が赤字を積み重ねてきた大きな要因は、道路が整備されたことに伴うマイカーの普及であった。鉄道利用者の減少に伴って運行本数が減り、運賃が値上げされて使い勝手が悪くなるとさらに利用者が減っていくという悪循環であった。だが、いまは鉄道利用者、マイカー利用者を問わず地域人口全体が減っているのである。
国交省の有識者会議の提言の内容は、輸送密度(1キロメートルあたりの1日平均利用者数)が1000人未満かつピーク時の乗客数が1時間あたり500人未満である場合などを目安として沿線自治体と鉄道会社に国も加えた協議会を設置して3年以内に結論を出すよう求めるものだ。特段、難しいことを言っているわけではない。
むしろ世間を驚かせたのは、提言に合わせる形でJR西日本とJR東日本が公表した区間ごとの赤字額だった。苦境ぶりを伝えるに十分だったからだ。
49億900万円の赤字区間も
JR西日本は17路線30区間で248億円(2017〜2019年度の平均)、JR東日本は35路線66区間で693億円(2019年度)の赤字額だ。
JR東日本の場合、赤字が最大だったのは羽越本線の村上駅―鶴岡駅間の49億900万円だ。100円の運賃収入を得るためにいくら費用を要するかを示す「営業係数」では久留里線久留里駅―上総亀山駅間が1万5546円もかかっていた。民間企業が抱え込む負担としては巨大すぎる。
両社はこれまで大都市圏の通勤路線や新幹線が稼ぎ出す利益を「内部補助」として回すことで、何とかローカル線を存続させてきた。
しかしながら、都市部でも人口減少が待ち受けるだけでなく、コロナ禍によるテレワークの普及で通勤客や出張ニーズの縮小が加わったことで、採算を度外視した大盤振る舞いをこれ以上続けられなくなったというのが本音である。
2024年04月26日
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