成人以降は、脳は成長しない。老化によって機能が失われていくだけだといわれていましたが、先述したように、これは間違いであることが明らかになっています。
脳の機能は、神経細胞の数と比例するわけではありません。それよりも、神経同士のシナプス結合の数と関連するのです。
神経は、神経同士でネットワークを構成していますが、その接合部をシナプスといいます。1つの神経細胞は、数千のシナプス結合によって他の神経細胞と結合しています。物凄く緻密なネットワークです。
このシナプス結合の数は、脳を鍛え続けることによって、40歳をすぎても、50歳をすぎても増やすことができます。
シナプス結合の数を増やすことで、あなたの「記憶力」をも高めることが可能だということです。
老化による記憶力の低下には個人差があり、高齢者の中にも記憶力が目立って低下しない人がいることも数々の研究、実験によって明らかになっています。
何もしないと歳とともに脳細胞は失われ、脳は老化し、記憶力の減退が進んでしまいます。
しかし逆にいうと、脳を上手に使うことによって、神経細胞とシナプス結合の数を増やし、その結果脳の老化を阻止し、記憶力を高め、いつまでも脳を生き生きとした状態で活動させることは全く「可能」なのです。
最新の脳科学の知識や情報を上手に活用して、脳を活性化させ、今よりも記憶力を強化する。そして脳の衰えを防ぎ、認知症を予防することが可能です。
「大人の能力」で勝負する
老化にともなって体力のみならず、脳のほとんどの機能が低下すると思っている人は多いと思いますが、それは完全に間違いです。
歳をとって衰える能力がある一方で、歳をとってから育つ能力があるのです。
棋士の羽生善治日本将棋連盟会長は、その著書『大局観 自分と闘って負けない心』(角川書店)の中で次のように語っています。
「体力や手を読む力は、年齢が若い棋士の方が上だが、『大局観』を使うと『いかに読まないか』の心境になる。将棋ではこの『大局観』が年齢を重ねるごとに強くなり進歩する」
大局観とは、経験値の積み重ねとして養われる、全体を見通す力です。
何もしなければ記憶力や新しいことを学習する能力、あるいは注意・集中力は、加齢とともに衰えていきます。しかし、物事の全体像を概観し、把握する力や、考えをまとめ、再構成する能力などは、歳とともに成長していくのです。
それは、歳とともに、知識のストックが増えていくからです。新しく入ってきた情報を既に保有している知識のストックを参照してそれと比較したり、知識のデータベースを活用したりしながら、より正しい判断を下すことができます。
歳とともに衰えゆく能力を補完
特に、まとめ・整理する能力、全体を俯瞰する能力、関連づける能力。こうした能力は、年齢とともに伸びていきます。
一方で、先に「記憶力は衰えない」といいましたが、特に脳を使う活動もせずに普通の生活をしていると、記憶力や学習能力はドンドン衰えて、若い人に太刀打ちできなくなるのが普通です。
あなたが若い人たちと競い合う場合、若い人たちが得意とする「記憶力」で勝負するのか、若い人が苦手とする「まとめ・整理する能力」で勝負するのか。どちらが有利でしょうか?
歳をとることで伸びていく「大人の能力」というのは、あまり知られていません。こうした「大人の能力」を活用することで、歳とともに衰えゆく能力を補完し、それどころか若者に圧勝できる仕事力を発揮することができるのです。
2024年04月07日
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