動物性の食材に含まれるアミノ酸は、生よりも、固まりすぎても、吸収率が落ちますから、卵を食べるときは半熟に調理するのがおすすめです。個数でいえば、1日3個食べても問題ありません」(加藤氏)
卵に次いで効率よくアミノ酸を摂ることができる豚肉である。特に、豚モモ肉は牛肉、鶏肉とくらべてタンパク質が豊富で、それでいて脂質とカロリーが少ない。加えて、糖の吸収を助けるビタミンB1を牛肉の10倍も含んでいるから、血糖値を抑えて血管を守るはたらきも兼ねそなえている。
もうひとつ活用するべきは大豆、とりわけ納豆だ。東京医科大学名誉教授の高沢謙二氏が語る。
「よく知られているとおり、納豆にはタンパク質だけでなく、血栓ができにくくするはたらきのある酵素・ナットウキナーゼ、高血圧を防ぐカリウムなど血管によい成分が数多く含まれています。おすすめは、低カロリーかつ、血管の細胞壁を守る作用があるアルギン酸を多く含むひじきと混ぜて食べることです」
いっぽうで、肉などからは摂ることができないが、血管を強くするために欠かせない物質もある。たとえば、ウリ科の植物に多く含まれるシトルリンというアミノ酸だ。
「シトルリンは、血管を広げる一酸化窒素(NO)が体内でつくられるのを促し、動脈硬化を防いでくれます。とくに多く含んでいるのはスイカですが、きゅうりや冬瓜などにも含まれています」(前出・家光氏)
日本では古来、11月上旬の立冬に冬瓜を食べる習慣がある。気温が下がって血圧の変動が激しくなる時期に、血管にいい食材を摂るための生活の知恵なのだろう。
また、にんじんに含まれる色素のβ‒カロテンとリコピンは、血管の細胞の老化を防ぎ、しなやかに保つために欠かせない。千切り器などを使って細く切り、オリーブオイルとあえてサラダにすると、意外にたくさん食べられる。
ここまで登場した食材を駆使すれば、硬くなった血管をよみがえらせる食材の選びかたや調理法だけでなく、味付けにもコツがある。「究極の一食」は、味噌、とりわけ赤味噌を活用することである。
「近年の研究で、ふつうの味噌や白味噌と比べて、赤味噌にはメラノイジンという色素がはるかに多く含まれていることがわかっています。この物質は血管の健康を保つのに役立つほか、糖尿病を予防する効果も高い。愛知県は全国でも糖尿病や脳梗塞の発症率が低いことで知られていますが、赤味噌を日常的に摂っているためではないか、という見方もあるほどです」(前出・加藤氏)
血管も実は『筋肉』でできています。人の血管は3つの層からなっていて、外側から外膜、中膜、内膜と大まかに分けることができます。そのうちの中膜は、血管平滑筋という筋肉からなっている。これは歳をとるにつれて石灰化(カルシウムが沈着すること)して硬くなっていきます。
「血管が硬くなり、さらに損傷すると、炎症が生じたところにLDL(悪玉)コレステロールなどが入りこみ、血管の内側にたまります。それが肥大化すると『プラーク』という塊ができて血栓をつくり、脳や心臓の血管を詰まらせるわけです」
日本人の死因のトップ5には、つねに脳血管疾患と心疾患がランクインしているが、これらはいずれも血管が破れたり詰まったりすることで起こる病気だ。また、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の背後にも、動脈硬化が隠れている。日本人の多くが「血管寿命が尽きて死んでいる」と言っても言いすぎではないのだ。
それでも、あきらめる必要はない。血管が「筋肉」からできているということは、血管も体のほかの部分と同じく、ストレッチしたり、鍛えたりできるということにほかならない。メンテナンスさえ怠らなければ、衰えた血管はふたたび元気になる。つまりは、血管寿命を伸ばすことができるのである。
ただしそのためには、正しい手順をふむ必要がある。まずやるべきは、硬くこり固まった血管を「ほぐす」ことだ。
固まった血管をほぐすうえで効率的なのは、体の中でいちばん筋肉の量が多く、太い血管も通っている脚をねらったストレッチです。血流が悪い人は下半身に血液が溜まりがちになりますが、脚をストレッチすれば、溜まった血をしっかり心臓へ押し戻す効果も期待できます」(家光氏)
とりわけ、脚についている血管と筋肉で重要なのが、次の4ヵ所だ。
(1) 太ももにある大腿動脈と大腿四頭筋
(2) ふくらはぎにある後脛骨動脈とヒラメ筋・腓腹筋
(3) 膝の裏を通る膝窩動脈
(4) 足の甲を通る足背動脈と足先の毛細血管
これらをストレッチするための4つをしていこう。いずれも、イスに座ったまま15秒ずつキープして、片脚につき合計1分やるだけで、十分に効果がある。
「ストレッチに一生懸命で呼吸が止まってしまう人が多いのですが、息を止めると血圧が上がり、かえって血管に負担をかけてしまいます。どうしても呼吸が止まる人は、声に出して15秒数えるのがいいでしょう。
また、いちばん血流が増えるのは、実はストレッチの最中ではなく直後です。ですから、すぐに次の動作へ移らず、10〜20秒ほど休みながら、ゆっくりとストレッチしましょう」(前出・家光氏)
3の「膝裏伸ばし」でも、2と同様にイスに浅く腰かける。片脚を前へ伸ばしたら、膝に手をあてて下へ押し込むようにする。このとき、膝と肘が曲がらないように気をつけよう。
ここまでで、脚の主な血管と筋肉がほぐれたら4の「足の甲伸ばし」で総仕上げだ。片脚をもう片方の膝に乗せたら、足先を持って背もたれにもたれかかる。足先には毛細血管が集中していて、血液が流れづらい。足の冷えが気になる人はとくに動脈硬化のリスクが高いので、入念にやろう。
続けることでだんだんと血流がよくなって体温が上がり、血管はしなやかになっていく。姿勢をキープする時間はそれぞれのポーズにつき5秒や10秒でもいいので、毎日やるのが肝心だ。
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