ロサンゼルス・タイムズに「アジア系米国人は大谷の超人的な野球技術力に熱狂し、アジア人のステレオタイプをぶっ壊したがゆえの愛」(Asian Americans go bonkers over Ohtani for superman baseball prowess --and for shattering stereotypes)という見出しで、記事を書いた女性記者がいた。彼女は東京、ソウル支局長を歴任した日系女性ベテラン記者だ。
米プロスポーツの風景を塗り替え続ける大谷がいるのは、米国・ロサンジェルス、1万6000台の車を収容できる広大なドジャースタジアムがある。親民主党のドジャースが破竹の勢いでワールドシリーズに向けて突っ走れば、大統領選の行方を左右しかねない、との声もあるほどになっているのだ。
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スタジアムに来る客の8割はアジア系で、日本や台湾からの観光客もいるが、圧倒的に多いのはコリアンだ。ここでいうコリアンは、ベトナム戦争に従軍していて以降に移住した韓国系米国人、ビジネスなどで在留する韓国国籍の在米韓国人、そして韓国からの観光客の総称だ。白人やラティーノもいるが、黒人は一人もいないし、中国人もいない。
お土産物のユニフォームが売られ、メイド・イン・ベトナムだ。1着190ドル。シャツは56ドルから90ドル。スタジアムのショップに続々とやって来た人々のお目当ては、大谷翔平の「17」ユニフォームやTシャツだ。 ソウルから来たという韓国人の中年男性(45)に大谷をどう思うか、記者が聞いてみると;
「大谷は背が高いし、カッコいい。二刀流でホームラン王、MVPをとったスーパースターだ。大谷は(普通の)日本人じゃないね」
「日本と韓国との間には、過去の歴史問題でいろいろあるが、最近は尹錫悦(ユン・ソンニヨル)大統領の英断でかなり良くなっている」
「大リーグでプレーしてきた日本人選手は大勢いた。中には韓国嫌いなプレーヤーもいたが大谷は違っていた。韓国人を嫌っていない。エンゼルス入りした当初は、韓国車に乗っていた」
「人柄がいい。謙虚だ。だから韓国のプレーヤーたちもやっかみを超え、大谷は羨望の的になった」
「一時、韓国では『反日は正義なり』など言われていたが、今では『大谷が好きだ』と、公の場で言っても批判されなくなったね」
大統領が3月、いわゆる元徴用工問題の解決策(第三者弁済方式)を提示したことで文在寅(ムン・ジェイン)政権時代の「最悪の日韓関係」が一気に動き出した。尹錫悦大統領の決断で「反日イコール正義」という構図は崩れた。
その結果、日米韓3か国の安全保障関係が強化された。
日韓請求権協定という国際法上の取り決めを覆すような韓国大法院(最高裁)の日本政府・企業への賠償判決。これを金科玉条のようにしてきた文在寅前政権は、日米韓疑似同盟(Quasi-Alliance)にとっては、まさに「百害あって一利なし」だった。
「(ロサンゼルス市に隣接する)トーランス市議会の日系議員、ジョン・カジ氏は『二刀流の大谷は、そのずば抜けたプレーとチャーミングさで、米社会にこれまでも根付いているアジア人とアジア系米国人のステレオタイプ的イメージを一掃させてしまった』と言う」
「北ベトナムの共産主義者、旧日本軍の(真珠湾)奇襲、米国のハイテク技術を狙う中国のスパイ、米国の雇用を脅かす経済的ライバルである中国人、理数に強い無味乾燥な秀才たち、さらに最近では新型コロナウイルス感染症の元凶といったネガティブなイメージだ」
「ところが身長6.4フィートの、この大男は米国が生んだスポーツで投げてよし、打ってよし、守ってよし、と大活躍。世界にアジア人としての男らしさ(Masculinity)を見せつけた、彼は世界中の人たちの憧れの的になった」
「大谷ファンの中には韓国人女優、鄭裕美(チョン・ユミ=40)もいる。大谷が見たいと(エンゼルスとメッツの試合を観るために)ニューヨークまで飛んだ」
「それだけではない。大谷は人に慇懃で、思いやりがあり、親切だ。グラウンドのごみを拾う。ドジャースには無利子で6億8000万ドルのローンを提供、日本の小学校には6万個のグローブをプレゼントしている」
かつてソウルの日本大使館に勤務したことのある外交官の一人、W氏はこう見ている。
「確かに日本嫌いなコリアンですら、日本人のエネルギー、誠実さや優しさ、謙虚さを具現化した二刀流・大谷を否定できなくなってきた。ただ、今の韓国の政治情勢は完全に安定しているとは言い難い」
「12月28日には、大法院が賠償を命じられた判決に対し、三菱重工業、日立造船が行った上告を棄却している。同様の訴訟はまだ80件以上もある」
「尹錫悦大統領の解決策を韓国国民が支持するのか、大谷ファクターがそれを草の根レベルから押し上げる潤滑油になりうるのか」
出典 JBPress(1/2)
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1月13日に投票日を迎えた台湾総統選は即日開票、民進党の頼清徳候補が当選した。同一政党が3期連続で政権を担うのは台湾が民主化して以来、初めてとなる。アメリカと密接に協力し、中国の圧力に対峙してきた蔡英文政権の路線が引き継がれる。
昨秋から台湾・台鋼ホークスの投手コーチ補佐を務めている元阪神の福永春吾は、現役を引退して、台湾の実業団野球部のコーチ業に就いたばかりの福永は大谷と同学年の29歳だ。「言葉にできないくらい凄い存在ですよ、大谷くん。WBC優勝したあの瞬間は、1人の日本人として誇りを感じた瞬間でした」と当時を振り返る。頂上決戦に注目していたのは、日米の野球ファンだけではなかった。
2023年3月21日(日本時間22日)、第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)決勝の当時、台湾の社会人チームである「台中市成棒隊」でプレーしていた福永は「遠征に向かうバスの中が大騒ぎでした」と福留は振り返る。
9回2死から大谷翔平投手がマイク・トラウト外野手を空振り三振に仕留めた。「3-2で1点差でしたよね? 1球で展開が変わる場合があるので、台湾人の選手も必死に携帯やタブレットで日本とアメリカの試合を見ていました。1球に対してのリアクションで(車中が)盛り上がっていましたね」
息を飲む展開に、誰もが夢中になっていた。「ちょうど、試合会場に到着したタイミングで大谷とトラウトの対戦となり、バスを降りる選手はいなくて、見入ってました。」日本の優勝が決まった瞬間、両国の健闘をたたえて拍手が起こったのだった。
台湾では、日本でのプレーを希望している選手が増えたという。「もちろん、メジャーリーガーに憧れてアメリカを応援する選手もいますが、日本でプレーしたい選手も多いので、日本語を覚えていますよ。僕も台湾の言葉を覚えて、コミュニケーションを取れるようにしています」。技術伝達には、意思疎通が必要不可欠となる。
「みんな、日本人選手のムービーを見て勉強していますね。日本を代表する選手へのリスペクトがあって、興味があります。大谷くん、山本(由伸)くん、吉田正尚さん、村上(宗隆)くん……。熱中していますよ、台湾の選手たちは」
出典 Full count(1/17 真柴健 ・ Ken Mashiba)
17年前の2006年3月15日、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の第1回大会2次ラウンドがエンゼルスのアナハイム・スタジアムで行われた。日韓チームが激突した。その試合の直前の記者会見でのイチロー発言で、コリアンにとっては打倒すべき宿敵ナンバーワンとなってしまった。
イチロー(当時シアトル・マリナーズ)は韓国との試合について聞かれ、こう答えた。
「(韓国や台湾には)向こう30年日本にはちょっと手を出せないな、みたいな、そんな感じで勝ちたいなと思っています」
「対日本」に敏感な韓国では、この発言が直ぐに伝わって「屈辱を受けた」と感じた。イチローは、ただ意気込みを述べたに過ぎなかったが、台湾や韓国の野球ファンも注目する試合であれば、発言はその場では留まらない。こうした成り行きをネット世代の大谷は見聞しており、言葉を慎重に選んで対処して、好感度だけを上げまくっている。心技体が揃って唯一無二になった、勝っても奢らないし、プレッシャーに負けない、世界に誇れる日本人のアスリートだ。
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2024年01月20日
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