『令和4年度 介護給付費等実態統計の概況』よりますと、70〜74歳で介護保険の介護予防サービスと介護サービスを受給している人の総人口に対する割合は、男性4.4%、女性3.9%、75〜79歳でも男性7.9%、女性9.1%と1割に満たないのです。女性が数字上多く見えるが、夫を介護をしていることもあり、夫が亡くなってから配偶者がいないために独居となってサービスを利用するという実態があるからとも読み解けます。そうしてみると、利用している人がやたらに多いともいえません。制度化された後も、高齢者の中には家族以外の人に世話になるなんて恥ずかしいという意識が強い方も少なくありません。
そのため、実際に自立していない12年もあるという実態ではなく、健康であると思うかどうかのアンケートの読み取り結果なので、数字にまどっわされ、憂鬱にすることもないのです。
厚生労働省(以下、厚労省)が2021年12月に発表した「健康寿命の令和元年値について」の資料では、男性は平均寿命81.41歳に対して健康寿命72.68歳、女性は平均寿命87.45歳に対して健康寿命75.38歳となっています。このデータでは、男女ともに70代で健康寿命が終わっていることになりますが、これよりずっと元気な人が多いです。もちろん、70代で要介護になる人もいますが、今の70代の大多数は元気で、活動的で、おしゃれな方が多いです。では、平均寿命と健康寿命の差、男性8.73年、女性12.07年とは何によって出てきたか?
和田秀樹先生が教えてくれたことは、それはアンケート調査というとても主観的なもので、答えた人の考えを集計して決めてるのです。全国から無作為に選ばれた男女に、「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響はありますか」という質問をします。「ない」と答えると「健康」、「ある」と答えると「不健康」とみなして算出したのが、健康寿命となります。
たとえば、高血圧症と診断されて、食事で塩分を控えないといけないだとか、薬を飲まないといけないとか、そういう人は高齢者に多いのですが、本人がそれを「制限がある」と考えるかどうか。「その人の主観」によって、「健康寿命」が決まってしまっていたんですね。極端なことを言うと、そのときたまたま風邪をひいて体調が悪い人も「生活に制限がある」と答えるかもしれません。つまり、男性約9年、女性約12年という期間には、ちょっとだけ生活に支障はあるけれど仕事や家事も現役でまだまだいろんなことができる人から、寝たきりで昼も夜も介護が必要という人まで、さまざまな状態が含まれているのです。
ふだんヨロヨロして、家族が介護しているのに、「まったくもって元気です」なんていう、ええかっこしいの人、これは男性に多い気がしますが、そういう人でも「健康」の部類になりますね。反対に、何ごとも控えめに、おくゆかしくあれと育てられた世代の女性なんかは、「このごろは若いときのようにいかず、元気とも言えません」なんて控えめなことを言うと、「不健康」になってしまう。
出典 現代ビジネス
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