新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが、インフルエンザ並みの5類に移行してから8日で半年となる。日常の感染対策は個人や事業者の判断にゆだねられ、法令に基づく行動制限はなくなった。ただ、8月末には長野県内の入院者数が一時急増。専門家は往来が増える年末年始を前に「警戒心を高めるべき時を見定めた対応を」と感染状況に応じた対策を呼びかけている。
5類移行に伴って県による感染動向の把握方法は、それまでの全数把握から、県内に88ある定点医療機関が届け出た新規感染者数に基づく「定点把握」になった。入院患者と外来患者の診療は、従来の確保病床を持つ医療機関と発熱外来だけでなく原則すべての医療機関で受け入れることになった。
一方、感染拡大対策として重症患者らに限定した病床確保は維持。冬場の感染拡大に備え、重症・中等症などの患者を対象とした即応病床を随時確保している。また、県新型コロナ受診・健康相談センター(0120・924・444)では、看護師が24時間態勢で発熱時の相談などに対応している。
5類移行後、県内で感染者数が一時急増したのはお盆明けの8〜9月。県は8月末に県独自の医療アラートである「医療警報」を県内全域に発出した。入院者数が目安となる300人を超える日が続いたためだった。
ただ、5類移行によって患者の自宅療養が増え、集団感染の人数も縮小傾向にあると、長野県専門家懇談会メンバーの信州大医学部付属病院感染制御室の金井信一郎副室長は指摘する。県内の医療体制について「濃厚接触者の就業制限が緩まったことで人的に余裕ができ、以前より医療が逼迫しにくくなった」という。
行政や医療機関の対応について、「保健所が入院先の調整を担わなくなるなど行政も段階を踏んで業務の集中を抑え、病院は既存の医療の枠組みで対応するようになった。高齢で基礎疾患のある方が重症化リスクが高いなどウイルスの性質もわかってきて、すでに体制をシフトチェンジしている」と説明する。
それでは今後、新型コロナウイルスに、どう向き合っていけばいいのか。
金井副室長は、「若者でも一定数は新型コロナの後遺症が出るなど、かからないほうが良いというのは変わらない。ワクチンや感染で免疫を獲得しても時間が経てば効果は薄れる」と注意を促す。
その上で、「年中警戒して構える必要はない。流行しやすい冬の前にワクチンを打つなど、雨が降ったときに傘を差すというように状況をみて対応してほしい」と話した。
まもなく乾燥した気候で感染が拡大しやすい冬を迎え、帰省などで人の往来も増える。金井副室長によると「昨年と比べ、感染によって一時的に免疫を獲得してかかりにくい状態になっている人が増えている」こともあって、これまでのような流行の波が訪れるかどうかはわからない。
定点把握などで感染者数の増減の傾向をつかみながら、マスクや手洗いなどの基本的な対策を続ける。ほかの感染症の予防のためにも、加湿器で湿度を維持したり、空気清浄機を使ったり、感染が広がりにくい環境を整えることが有効だという。(清水大輔、遠藤和希)
出典 朝日新聞デジタル(11/8)
2023年11月08日
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