実は「運がいい」と思っている人も「運が悪い」と思っている人も遭遇している事象は大差が無い場合が多いのです。「運」というものは必ずしも、その人がもともともっていたり生まれつき決まっていたりするものではなく「その人の考え方と行動パターンによって変わる」のです。
「運のいい人」は自分の脳に「運が良くなる」考え方や行動パターンを習慣づけているとも言えるかもしれません。それではどのようにしたら良いのでしょうか? 脳科学者・中野信子氏の著書『新版 科学がつきとめた 「運のいい人」』は、科学的見地から、「運のいい」考え方や行動パターンを習慣づける方法を紹介しています。
◆運のいい人はあえてリスクのある道を選ぶ
人生は選択の連続といえます。そのときに何を選ぶか。これによってその人の人生はずいぶん変わってきます。運に左右される場合もあります。では、何を選ぶか、どちらを選択するかで迷ったときはどうするか。
あえてリスクのありそうな道を選ぶというのも、よい方法のひとつだと私は考えています。 なぜなら、リスクのある道を選んだほうが、脳が喜ぶ傾向にあるからです。このことを証明したある実験があります。
この実験では、AのカゴとBのカゴにそれぞれ一羽ずつ鳩を入れます。どちらのカゴにもエサのボタンがついていて、鳩がくちばしでそのボタンを押すとエサが出るようになっています。Aのカゴはボタンを押すと100%エサが出るようになっていますが、Bのカゴはボタンを押してもときどきしかエサが出ないようになっています。
この状況で鳩がどのように反応したかというと、Aのカゴの鳩は、おなかがすいたときだけボタンを押しました。一方、Bのカゴの鳩は、おなかのすき具合に関係なく何度もボタンを押しました。とくに、ボタンを押してエサがもらえる確率が50%のとき、つまりボタンを押しても2回に1回の割合でしかエサが出ないときに、この鳩はもっともボタンを押しつづけたのです。つまりBのカゴの鳩は、ボタンを押す中毒になってしまったわけです。
同じような実験がサルでも行われています。この実験では、一匹のサルの前にAとBの2台のジュースタンクを置きます。
Aのタンクは、ボタンを押すと必ず150mlのジュースが出てくるようになっています。一方、Bのタンクは、ボタンを押すと100mlもしくは200mlのジュースが出てくるようになっています。100mlか200mlかの選択をサルができる作りにはなっていません。
この状況だと、サルはBのタンクのボタンを押しつづける傾向があるのです。Bのタンクは100mlしか出てこない場合もあるけれど、Aのタンクより多い200mlが出てくる場合もある。
リスクはあるけれど、運がよければ得もある。サルは、このようなギャンブル性の高いほうを選ぶ傾向がある、ということがわかったのです。
これは、人間でも同じようなことがあるといわれています。たとえば同じくらい気になる異性がふたりいるとしますね。Aさんもいいけれど、Bさんもいい、というぐあいに。Aさんは、食事や飲みに誘うと100%OKの返事をくれて、毎回楽しい時間を過ごせます。一方、Bさんのほうは、食事や飲みに誘っても2回に1回は断られてしまう。ただしOKの返事をくれたときには、とても楽しく食事やお酒の時間を過ごせるとしましょう。この場合、最終的にはBさんのほうに気持ちがいく人が多いのです。
ちょっとつれない相手のほうが気になってしまう。ときどき断られるのはどうしてだろう、だれかつきあっている人がいるのだろうか、などとついつい考えてしまう。「次回も断られるかもしれないけれど、挑戦してみよう」という気にもなります。鳩やサルと同じで、人間も「100%安心」な状態より、ちょっとリスクのあるギャンブル性の高いほうを好むのです。
これは、心理学でいう「強化学習」を自分に応用するのです。ちょっとリスクのあるほうが脳の報酬系が活発に働くのです。
そこで、何かを選択する際にどれにするかで悩んだとき、あえて少しリスクのあるほうを選んでみるのです。安心・安全な道より、ちょっと冒険の道を選んでみる。そのほうが夢中になれるし、脳が喜んで、結果もよいものになる確率が上がるのです。
出典 現代ビジネス
2023年11月05日
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