「ハンチバック」(文学界5月号)で芥川賞に決まった市川沙央さん(43)は19日夜、東京都内で記者会見し、「非常にうれしく、我に天祐あり、と感じております」と感慨を語った。主な質疑応答は次の通り。
◇
−−まず今のお気持ちを
「私は一つ訴えたいことがあって、去年の夏に初めて純文学を書きました。それが『ハンチバック』です。なので、こうして芥川賞の会見台に取り次いでいただいたことは非常にうれしく、我に天祐あり、と感じています」
−−20年以上小説を書いてきましたが、いま芥川賞を受けて、会見の場に臨んでの思いは
「芥川賞を全然目指してはいなかったので、驚いています。この場所はニコニコ(動画の生放送)でよく予習していました。ああ、こういう感じかと感慨深いです」
−−ユーモアを交えながら話されますが、他の方を笑わせることはお好きですか
「いや、全然そういうことはないです。まじめにやっています(笑)」
−−マスコミからは当事者小説と表現されるが、そうした自作への当事者性の強調をどう思いますか
「私はOKを出しています。なぜかというと、私はこれまであまり当事者の作家がいなかったことを問題視してこの小説を書きました。芥川賞でも重度障害者の受賞は初でしょうが、どうしてそれが2023年にもなって初めてなのか。それをみんなに考えてもらいたい、と思っています」
−−作品を通じて、どんなことを伝えたいか
「私が一番訴えたいのは読書バリアフリーが進むことです。とにかく読みたい本が読めないのはかなり厳しいものがあるので、環境整備を進めてほしいと思います」
−−今後の目標を
「いろんなものを、いろんな視点で、いろんな角度から書いていきたいと思っています」
−−最後に一言あれば
「ちょっと生意気なことを言いますけど、各出版社の方々、学会誌とかの電子化がなかなか進んでいません。そういうものの障害者対応を、もっと真剣に早く取り組んでいただきたいと思います。よろしくお願いします。今日はお付き合いありがとうございました」
日テレNEWS
第169回芥川賞受賞「ハンチバック」市川沙央さんが会見
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市川さんは幼い頃に難病と診断され、中学時代から心肺機能が低下し、横になる時は人工呼吸器を使う生活になった。7歳上の姉も同じ病気だと明かしている。呼吸困難を引き起こす痰を処理するための吸引器は手放せず、10代後半からは電動車いすでの移動で外出も思うようにできなくなった。
小説を書き始めたのは同世代が就職する20歳を過ぎた頃、自分なりの仕事を求めてだった。最初は純文学系の新人賞に挑戦するも筆が進まず断念。以降は慣れ親しんできたSFやファンタジー作品などライトノベル系を中心に新人賞を目指して20年以上書き続けてきた。湾曲した背骨に負担がかからないよう、もっぱら執筆に使うのは小さくて軽い「iPad mini」。寝ながらゲーム機のように両手で持ち、親指で創作してきた。
2023年07月20日
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