移民が増加分断の構図はオランダのみならず、スウェーデン、デンマークなどの北欧や、ドイツ、イタリア、フランスなどの西欧、そして、中・東欧諸国でも鮮明になってきた。
オランダからの報道によると同国のルッテ首相の連立政権は7日、難民流入抑制策を巡る与党間の協議が決裂したことを受け崩壊した。ルッテ氏は8日、ウィレムアレクサンダー国王と会談し今後の対応を協議。総選挙は11月中旬以降とみられ、ルッテ政権は新内閣が発足するまで暫定政権となる。
ルッテ氏は7日に「移民政策を巡る与党間の意見の相違は克服不能になった。国王に辞表を提出する」と述べ、総選挙を実施する考えを示していた。
【ブリュッセル共同】(7/8)
オランダの多文化主義政策がいかに進んでいるかを知るには「移民のための市民権指標」(ICRI)で、第2位である(2013年現在。1位はスエーデン)。多文化政策のお手本と言われるカナダやニュージーランドよりもずっと評価が高いのだ。これは、オランダが宗教の自由に寛容で、マイノリティの権利を大きく認めているためである。
オランダはインドネシアや南米スリナムの旧植民地からの移住者や、モロッコやトルコからの出稼ぎ移民と家族を国家の一員として受け入れ、かれらの文化・宗教の自由を保護し、オランダ人と同等に公共サービスや福祉を与えてきた。
例えば、ヒンズー教やイスラム教系宗教学校など、マイノリティたちによる言語や文化の民族教育は国が全額補助した。国営放送のテレビやラジオの放送時間の20%は民族マイノリティ向けの番組に充てることが法律で義務づけられた。
さらに、民族コミュニティ内の「自治」を認め、国は一切干渉しないこととした。公の場でのヒジャブや「ブルキニ(イスラム系女性のための肌を露出しない水着)」が政教分離の原理に反するとして禁止した介入的なフランスとは対照的だ。
参照HP https://forbesjapan.com/articles/detail/27574/page2
オランダ国内の若者の失業率は依然として高い(2016年で14.3パーセント)。さらに、中東やアフガニスタン、北アフリカからの難民申請者が加わり、国の福祉システムへの負担が膨らんでいる。
欧州は多文化主義に対して懐疑的になってきた。「多文化主義は明らかに失敗だった」(2011年、フランスのニコラ・サルコジ大統領)、「Multikulti(ドイツ語で「ダイバーシティを尊重する態度」の意)は全くの失敗だった」(2010年、ドイツのアンゲラ・メルケル首相)など、グローバリゼーションの旗手であるはずの政治指導者たちが多文化主義政策の頓挫を公に認めているのだ。
多文化政策指数(MPI)や移民のための市民権指標(ICRI)など先進国の「多文化主義の進化度」を示す指標をみても、2000年をピークにどの国でも上げ止まりの状態にある(移民政策研究家ルード・コープマンズ、2013年の指摘)。
一部の専門家からは、多文化政策は移民の社会統合には効力もないばかりか、阻害要因になりうる、という大胆な研究も出されている。
参照HP https://forbesjapan.com/articles/detail/27575/page2
2023年07月12日
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