「インターバル速歩トレーニング」の効果を科学的に検証するだけでなく、その詳しいやり方や疑問点も公開します。
まず「体力」の定義について説明しましょう。体力とは、運動生理学で扱う体力とは「筋力」と「持久力」を指します。スポーツ競技でよい成績をおさめるためのトレーニング方法の開発など、さまざまな現場の要求に応えるために発達してきました。そのためには、筋力と持久力を別々に考える必要があったのです。
その違いは、インターバル速歩群の早歩きは、個人の最高酸素消費量の70%以上の運動強度になるが、1日1万歩群は最高酸素消費量の40%以下に相当する運動強度でしかないのです。
ウォーキングにおける「筋力」とは、途中で階段、急な坂道が出てきても楽にクリアできるかに影響します。とくに、酸素を使う代謝系(好気代謝系:この系による運動を有酸素運動と呼ぶ)が主となる遅筋が重要となります。一方、1日1万歩群では、ほとんど体力は向上しませんでした。
ところが、インターバル速歩群では、膝伸展筋力(大腿の前の筋力)が13%、膝屈曲筋力(大腿の後ろの筋力)が17%、最高酸素消費量が10%向上。
この速歩3分とゆっくり歩き3分のセットを、1日5セット(速歩が計15分とゆっくり歩き計15分)以上、週4日以上を繰り返すことを目標とします。
速度の切り替えを3分間隔としましたが、これは大部分の人が、これ以上の継続を困難と感じるからです。したがって、3分間の速歩の後に3分間のゆっくり歩きを挟むと、また速歩をしよう、という気分になります。
やり方は簡潔ですが、以下の5点に注意してウォーキングしましょう。
(1)視線は25m程度前方に向ける
(2)背筋を伸ばした姿勢を保つ
(3)足の踏み出しはできるだけ「大股」になるように
(4)踵から足を着地させる
(5)歩く際、腕を直角に曲げ前後に大きく振る
それぞれの根拠は『ウォーキングの科学』に細かく記されています。
Q&Aで解決します!
より効果を出したいとう人からいただく質問を抜粋して紹介します。
Q1. 1日30分の連続時間が取れない場合は、どうすればいい?
要するに、早歩きの1日の合計が15分になればよいのです。インターバル速歩は連続して実施する必要はありません。たとえば、朝10分、昼10分、夕方(夜)10分とバラバラに実施しても効果はあります。また、早歩き、ゆっくり歩きを3分間隔で繰り返さなくても、たとえば、2分間隔、5分間隔と自分に合ったやり方を見つけるのもいいでしょう。
Q2. 1週間4日はなかなか時間が取れない場合は、どうしたらいい?
平日が忙しくて時間が取れない人は、要するに、1週間の早歩きの合計が60分以上になればよいのです。
週末にまとめて実施しても問題ありません。たとえば、土曜日早歩き30分、日曜日早歩き30分といった具合です。
加齢による認知機能の低下の主な原因が体力(最高酸素消費量)であることを示唆しており、インターバル速歩は認知機能にも良い影響を与えます。
適度な有酸素運動を行うと、脳が活性化するといわれている。骨に刺激を与えたときに骨から分泌される物質が、体も脳も若返らせることがわかってきた。走れば十二分に骨は刺激されるが、フルマラソンが体にいいかどうかは、僕(中山伸弥)もわかりません。ただ、研究者には多いです。
秋田県由利本荘市の65歳以上の中高年者を対象に検証しました。由利本荘市は最近、インターバル速歩を導入し、市をあげてその普及に取り組んでています。
具体的に、どんな効果が見込めるの?
高血圧症、高血糖症、肥満症、異常脂質血症の有病率を先に述べた中高年者246名を対象に、インターバル速歩前後で比較しました。トレーニング前、低体力群と見なされた参加者の約80%が高血圧症、約70%が高血圧症、約40%が肥満症、約20%が異常脂質血症でしたが、5ヵ月間のインターバル速歩後に高血圧症、高血糖症、肥満症の症状が約30%の人でなくなっていました。
したがって、もし読者の皆さんが「血圧が高い」などと指摘されたら「病院にいく前に5ヵ月間インターバル速歩をしましょう」とすすめます。そうすれば30%の確率でそれらの症状がなくなると考えられます。
また、うつ症状改善にもインターバル速歩が効果がみられるメカニズムには、ミトコンドリア機能改善による最高酸素消費量の増加にあると考えられます。この効果の一つに、血中の脳由来神経栄養因子が増加することが考えられ、それが脳の海馬、大脳皮質、大脳基底核という記憶、思考、不随意運動をつかさどる部位の神経細胞を活性化すると考えられているのです。
また、インターバル速歩を1日の決められた時刻に行うことで生活リズムを整えれば、継続的な睡眠効率の改善につながります。
2023年06月22日
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