ドイツのバーデン・ビュルテンベルク州(州都シュツットガルト)の南西約25キロ、広大な「黒い森」北辺にある人口約2700人のオステルスハイム町で、シリア南部スワイダー出身のリヤン・アルシェブルさん(29)が4月の町長選に無所属で出馬し、55%の票を得て当選を果たした。18日付で就任するが、積極的に難民を受け入れてきたドイツで、移民・難民の社会統合モデルとなるか注目されている。
アルシェブルさんは大学生だった2015年、反政府勢力を弾圧するアサド政権軍の招集を拒否して出国。ギリシャ・レスボス島から49人が乗り込んだボートで欧州大陸に上陸し、セルビアなどを通る「バルカンルート」でドイツに入った。当時メルケル首相は難民の受け入れを表明し、100万人以上が流入した。
アルシェブルさんは難民施設で暮らし、ドイツ語をゼロから学んだ。その後、近隣町の役場で働きつつ、公務員の専門職を養成する学校を卒業した。社会適応力や語学力が評価され、昨年、通常より2年早い在留6年で国籍取得が認められた。町長選への立候補は上司から勧められ、町の発展に尽くしたいと決断した。「若い家族に魅力的な町になるよう1日保育施設を増やし、行政のデジタル化も進めたい」と意欲を語る。
ドイツは少子高齢化対策として移民政策に力を入れ、2000年代に人口減少を食い止めた。外国人の定住要件を緩和して難民に国籍取得の道を開き、現在では人口8430万人の「4人に1人」は移民の背景を持つ。
宗教や文化の違いを背景にした摩擦など課題がある一方、各界で活躍する人材も多い。「元難民町長」の誕生は、移民社会の現状を象徴する事例といえそうだ。
出典;読売新聞(6/7)
2023年06月07日
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