4月19日に日本政府観光局(JNTO)が発表した統計によると(https://www.jnto.go.jp/statistics/data/20230419_monthly.pdf)、コロナの収束に伴い日本を訪れる外国人観光客が増加しており、3月に日本にやってきた外国人観光客は181万7500人となり、コロナ禍(2020年2月以降)最大の人数となった。
そのうち、約140万人をアジアからの入国者が占めている。トップは韓国の約47万人、続いて台湾の約28万人、そして米国と香港からは約14万人もの人たちが訪れたことが分かった。香港の人口はわずか700万人余りにもかかわらず、である。香港は4月上旬、コロナ感染措置が緩和されて初めてのイースター休暇を迎えた。この時期は季節柄どこに行くのも快適な上、直前の清明節という祭日に加えてちょっと休みを取れば、土日を合わせて10連休にすることができるので、海外旅行にはもってこいなのだ。
香港はもともと、「旅行」といえばほぼ飛行機に乗って海外へ出かけていくことを意味するお土地柄だから、3年もどこにも出かけられないことが香港人を苦しめた。だからこそ、この久しぶりに「自由な」イースター連休をたっぷり楽しもうと考えた人は多かった。香港出入境事務処の統計によると、この連休中に香港から海外に出かけた人は、総人口の約5分の1に当たる140万人に上った。おかげで市内の飲食店は連休中、閑古鳥が鳴いていたとメディアは伝えている。
香港の二大旅行会社によると、この連休中に組まれた観光ツアーは300組以上、その半分以上が日本に向かうツアーだったそうだ。これに加えて、もちろんツアー以外にも多くの個人旅行客たちがおり、それぞれに日本を楽しんだ。特に今年は桜の見頃が4月にずれ込んだこともあって、連休前半に来日した人たちを喜ばせた。
この休暇中の香港人の日本熱は確かにすごかった。日本の空港に到着したものの、同じ飛行機から吐き出された乗客で入国検査所が大混雑し、成田のような大型空港では空港を出るまで数時間かかった……などという悲鳴が流れていた。さらには、現地を朝7時半に出発する飛行機に乗るために朝4時半に空港に着いたら、すでに空港のチェックインカウンターの前には超大型のスーツケースを持った人たちがズラリと並んでいる、なんていう写真付きの書き込みもあった。さらに、それに刺激されたかのように、今後の旅行プランをグループに投げかけてネットで相談し合う人たちも出現した。
香港人観光客の特徴は2〜3週間滞在用の巨大スーツケースをごろごろと転がしながら日本に乗り込んでくる。夫婦それぞれがそんな大型スーツケースを持っているのも珍しくなく、女性でもスイスイとその巨大スーツケースを押しているところを見ると、その中身はほぼ空っぽらしいとすぐに気付く。どうやら、それは日本でたくさん買い物をするためらしい。行きはすべての荷物をその中に放り込み、帰りはたくさんのお土産を詰め込み帰っていく……買い物好きな香港人の性格がよく表れた光景である。
彼らは食べることも大好き。日頃から和洋中華すべて食べ慣れている香港人はほぼ「オールマイティー」で、とにかく日本でも食べまくる。甘いものが大好きな男性も多いので、焼き肉にすしにラーメンに郷土料理にデザートに……とまぁ、とにかくネットでも食べ物に関する投稿と質問は引きも切らない。さらに、旅の情報収集に熱心でプランニングもうまい。
香港人旅行客はまた、カップルや家族、多人数のグループ旅行も多い。小さな子どもを持つ若夫婦が、友人夫婦と一緒に家族ぐるみで旅をするようなケースもよく見られる。思い切ってホテルや旅館で大きめの部屋に宿泊してシェアしあったり、子どもをどこかで遊ばせながら親たちは交代で買い物したり、夫婦水入らずのデートを楽しむなんてこともやってのけるのが香港人だ。
彼らの思い出がたくさん詰まった書き込みや写真が並ぶSNSで、改めて香港人旅行者たちの日本への熱意というか、激情にひたすら感心させられる。昨年秋、海外から香港入りする際に義務付けられていたホテル強制隔離措置がそろそろ撤廃されそうだという情報が駆け巡った頃から、彼らの日本ツーリング計画が始め、いつもより桜が満開の早かった日本の春を満喫したとのSNSでの報告があった。
実は日本には全国に支店を持つ、外国人客向けのバイクのレンタルサービスがあるのだという。メンバーの一人がそのオーナーと懇意にしていることもあり、レンタルは非常にスムーズに進んだらしい。それに加えて、一部メンバーの同行家族や荷物を載せるために3台の車を用意して、4日間かけて東京から草津、長野を巡る大ツーリングとなった。それがメンバーの一人であるプロのカメラマンによって撮影され、前掲のようなビデオになった。バイク旅の醍醐味は車よりも歩いている感覚に近いのだそうだ。
「バイク店の店主の息子さんがルートを決めて、ナビゲートしてくれたのもありがたかった。以前も日本でツーリングしたことはあるけど、グーグルマップ頼りだとどうしても目的地まで直線距離を走ることになる。日本の農村の中を走ったり、桜を存分に楽しめる道を選んだりと、風景をじっくり堪能しながら走れたから、ものすごく満足した旅になった」
そして、「車と違ってバイクは直接その空気に触れることができるし、身体にも生に道路からの振動が伝わってくる。その土地のムードに包まれた気分は最高だった」、「みんな笑顔で見てたよ。子どもたちが手を振ってくれたりして、それも楽しい思い出の一つだ」とのこと。さらに事前に準備したBluetooth接続のインカムをメンバー全員が付け、バイクを走らせながらお互いコミュニケーションできるようにしたため、他のメンバーが景色に上げる歓声もたっぷり伝わってきて、一体感も高まったという。話を聞いていて、こちら側も楽しくなった。飛行機代や前後の延泊費用を除くと、4日間のツーリング費用は1人平均1万香港ドル(約17万円)だったそうだ。
これから次第に日本にも外国人観光客が戻ってくる。こうしたさまざまな楽しみ方を心得た外国人観光客に、日本はどんな魅力を伝えられるのか。日本の地域が観光に知恵を絞っていくことに期待だ。
参照 タイヤモンド・オンライン コロナ禍で移動制限が敷かれていたこの3年。オンラインショッピングが急速に拡大した。
このところはウクライナ情勢で航空燃料が高騰しているほか、運行便数はコロナ前の水準まで回復していない。人気路線はエコノミークラスの価格が定価まで上昇しているという。海外旅行を目指すとしても、近い国が人気になりそう。 世界的な消費スタイルのトレンドが変化して、モノ消費から体験などのコト消費へ。ポスト・コロナ時代、人で賑わう観光地でなく、これまであまり知られていない、旅行客が少ない場所を探して旅することも増えそうだ。
旅行先では自然を満喫したい。買い物はネットショッピングで十分、人の少ない場所」というキーワードで検索される傾向がみられる。
2023年05月02日
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