
無投票の場合、投票所を設置しないため、かかる費用は掲示板作成と設置・撤去。投票があった場合は、これに投票所に配置の人件費などが発生する。国、県、市町村の年間予算として選挙という民主主義のコストを計上することになっているのだ。このところ、10万人以下、特に町村の場合、立候者が定員に満たないケースも増えてきていたが、選択の機会ないことが重なるので有権者からは不満の声も出ている。
全国では41道府県議選は定数を超える立候補者がなかったため、無投票で当選が決まった。選挙がなかった地域では、「人口減少をどう食い止め、地域の活力を保つのか。いろいろの課題を議論してほしかった」の声も聞こえる。しかし、現職に対抗馬が出ない状況の中で出馬した候補者に「大した評も集められずに落選するなら、時間の無駄、経費の無駄だ」と冷たい声を上げる人もいたものだ。
千葉県内で無投票当選の選挙区は(1)千葉市中央区(3人)(2)千葉市稲毛区(2人)(3)千葉市緑区(同)(4)銚子市・東庄町(同)(5)木更津市(同)(6)勝浦市・いすみ市・夷隅郡(同)(7)我孫子市(同)(8)鴨川市・南房総市・安房郡(同)(9)袖ケ浦市(1人)(10)八街市(同)(11)富里市(同)(12)匝瑳市(同)(13)山武市・山武郡(2人)(14)大網白里市(1人)(15)長生郡(同)。
大川千寿(ちひろ)・神奈川大教授(政治学)は「今の日本の民主主義の機能不全を端的に表している」と述べ、地方選挙で無投票当選が相次ぐ事態に危機感をあらわにする。無投票当選が決まると、有権者は政策論戦に触れる機会を失うからだ。その弊害について、大川教授は「立候補者に対する有権者による民主的なチェックが働かなくなる。一方で議員は選挙を通して有権者の声を拾い上げることができない。その結果、政治と有権者がますます離れてしまう」と説明する。
さらに、「競争は地域の活力の表れでもある。無投票が地方の元気をなくし、それが無競争を生む悪循環に陥っている」と言う。
無投票の背景には地方議員の「なり手不足」の問題がある。総務省によると2022年末現在、現職の議員で都道府県は9割近く、市区は8割超を男性が占める。議会の構成が地域社会の「縮図」とは言い難い状況になっているのが現状だ。打開策として、議会のオンライン化やハラスメント対策の促進、報酬増のほか、現職有利になりがちな「1人区」の解消など区割りの見直しを提起する声が研究者らから出ている。
大川教授は、必要に応じて制度を見直すべきだと考えている。その上で、「住民の政治に対する意識を喚起していくことが重要だ。議会や議員は情報発信し、地方議会の存在価値を示さなくてはいけない。」と論じる。しかし、これまで、政治と宗教には関わるなと刷り込まれてきた上に、日本社会において、女性が男性の前にでるようなことは憚られると女性たちは言い含められて育てられてきた。人口減少の上に、市町村での経費が削られて、議員の報酬が下げられている。中には、議会の定数削減で辛うじて新人議員が当選すると、彼に先輩たちの業務が振り向けられていくことも多いという。議員活動の報酬が少ない上に、日常業務が増えては、自身の仕事をする時間が削られて過労になっていくとの話も聞く。
大川教授は「住民は地方自治には地域の未来がかかっており、最終的な責任を持つのは私たちだと再認識すべきだ」と強調する。
参照 毎日新聞【3/31】