プーチン氏の公式路線を少しでも疑う市民は投獄され、全国の学校や大学ではロシア帝国とソ連への郷愁がない交ぜになったカリキュラムが急いで導入された。
芸術家や作家、俳優は批判的な見解を示唆しただけで表現の場を奪われ、作品はプーチン氏が法制化したソ連的な「伝統的価値観」を忠実に守るものに換えられる。教師や司祭が戦争ではなく平和を唱えれば、子供がそれを非難する。
ロシア政府は国民の支持を取り付けようと、貧しい地方の住民に現金を給付し、政府の公式見解に批判的な目を向けるメディアを残らず閉鎖に追い込んだ。一方で、政府が演出するイベントは国営メディアが大々的に報道。プーチン氏はめったにウクライナでの戦争に直接言及せず、経済的な成功や新たな社会給付、医療施設のリニューアルなどを強調し、戦争は遠い地での出来事だとのイメージを維持している。
今週の年次教書演説でも、伝えられたのは同じメッセージだ。この演説でプーチン氏は、ウクライナでの戦争は米国とその同盟国が原因だと非難しつつ、戦争終結の時期について何ら示唆することはなかった。一方で兵役経験者やその家族に対する新たな給付を約束し、戦闘経験の価値は「人生最良の学び」だと喧伝した。
今のところ、このメッセージはうまく伝わっている。侵攻が当初期待した数日よりはるかに長引き、ロシア軍の死傷者数が数万人に膨らんでも、ロシア人の過半数は独立系の世論調査に対し戦争継続の用意があると答えている。ロシア大統領府のコンサルタントによると、敗北を認めることを意味するとしても戦争の早期終結を望むとの回答は2割程度にとどまった。
経理担当として働くダリヤさん(36)は、昨年の侵攻開始直後に夫が戦争に志願する計画を明らかにした際は断固反対し、それなら離婚すると迫ったという。それでも退役軍人で戦闘経験のあった夫は戦地に赴いた。夫は休暇で夏に戻ってきたが、それまでにダリヤさんの考えも変わっていた。
「今では夫を英雄だと考えるようになった。祖国が必要としているときに、男たちは母親の後ろに隠れているべきではない」とし、夫が3月に帰ってきたら兵役での収入で住宅ローンを完済する計画だと語った。ダリヤさんは米国のメディアに公に話すことを懸念し、姓と居住市を明かさないよう要請した。
ロシア軍がウクライナで敗走を重ねた後、プーチン氏はロシアが戦っているのはウクライナではなく、西側全体だとの説明にシフトし始めた。世論調査会社によると、同氏が当初の侵攻理由として主張していたウクライナ政府の排除よりも、この説明は市民の共感を呼んでいる。米国とその同盟国は実際に戦闘に加わっていないが、それでもこの認識は揺るがない。
強固な支持を得ているとの認識が、はるかに大きな犠牲を伴うとしてもロシアが最終的に勝利できるとの確信を強めていると、ロシア指導部に近い関係者は述べた。
原題:Russians’ Support for Putin’s War Hardens as His Crackdown Grows(抜粋 2/24)
2023年02月28日
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