韓国国内における反日を推進する野党「共に民主党」や市民団体の勢いの衰えを感じざる。それは、歴史問題にこだわり、日本に対して不当な要求を突き付けてきた朝鮮半島出身労働者(いわゆる元徴用工)を巡る問題でも、対日感情の変化を感じ取ることができる。
裁判所が日本の企業に賠償を命じ、資産を差し押さえた問題について、韓国政府は、日本の誠意ある対応に期待し、公益法人が主体となって韓国企業などから受け取った寄付金で被害者に弁済する方式を検討している。
今回の解決案に対し、韓国KBSテレビが行った世論調査では、「被害者の意見反映が不十分で同意しない」との回答が59.6%、「日本との関係改善のため同意する」は33.3%だったという。
韓国の世論が解決案に批判的だという見方があるかもしれないが、これまで日韓関係に関する世論調査では、日本が好きか嫌いかの質問に対し、嫌いと回答するものが8割近くに上ることが多かった。
しかし、今回の国内世論は、日韓の歴史問題をテーマとした調査としてはむしろ穏健な結果というべきであろう。
この数値に示された国民の意思は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権に対して元徴用工と対話して丁寧に進めよというメッセージであり、何が何でも反対ということではないように感じられる。
元徴用工の団体や野党「共に民主党」は反対を叫んでいるが、SNSなどの投稿は政府案にそれほど批判的ではなく、大規模な反対集会も行われていないようである。韓国国民の対日世論の変化を感じ取ることができる動きである。
日本への旅行者の急増と
中年世代の意識変化
日本に対する否定的な感情のやわらぎは、日本への旅行者の急増にも表れている。
日本政府観光局(JNTO)によると、昨年日本を訪れた外国人は383万人で、うち韓国人が101万人と最も多かった。
さらに、通販サイトのGマーケットによると、今年1月1日から17日に韓国で販売された海外旅行券の予約状況も、大阪、福岡、東京がそれぞれ1〜3位を占めた。また、通販サイトのインターパークによると、昨年10月11日から1月11日の期間に日本路線の航空券を発券した人は、新型コロナ禍以前の19年と比べて4.84倍に増加したという。
市場調査専門会社エムブレイントレンドモニターが行った調査では、「文化・歴史的に日本に受けた被害を忘れられない」という項目に同意した人は、20年12月の80.3%から22年12月に71.0%に低下した。
また「日本は敵対国家だと思う」との回答は49.9%から36.1%に減少した。
韓国では、40代、50代を中心に革新系の固定層が約30%いることから、この数字の変化は、中間層の意識が大きく変化したことを示しているといえるだろう。
1審判決を「ポピュリズム」と
批判した朝鮮日報
朝鮮日報は3日付で、「日本から盗んだ盗品を返さなかった10年、被害を受けたのは韓国だ」と題する社説を掲載している。
社説の主張のポイントは次の通りである。
韓国の寺が主張する通り、仏像は600年余り前に倭寇によって略奪された可能性もある。2審も「略奪があった状況と蓋然性がある」とした。しかし、推定に過ぎず、立証されていない。
実際この問題は、法律ではなく常識で誰でも判断できる案件だ。ところが、韓国の寺が「仏像が日本に行った経緯が明らかになるまで返すな」という仮処分を申し立て、判事がそれを受け入れる事態となった。さらに17年、1審は600年余り前に略奪があったという状況と蓋然性だけに基づき、日本の寺の所有権を否定した。
現在、高麗時代の仏画の多くは外国にある。相当数は米国の所蔵だ。窃盗犯が米国からそれらの仏画を盗んできたとしても、「韓国のものだ」という判決を下す判事はいるだろうか。それは法理ではなくポピュリズムによる判決と言わざるを得ない。
世界の文化界で韓国は盗品すら返さない国と評された。傷を負って被害を受けたのは韓国だ。
この社説は、日本に対してだけ「国民感情という特別な判断基準」で判決を下していることが、国際社会から韓国の信用を失墜させているという事実を率直に指摘している。
このような韓国の対日国民感情の異様さを指摘する社説を一流紙が堂々と掲載する事例を、筆者は寡聞にして知らない。韓国国内が反日で盛り上がっている時には、財政基盤が強固で政府の揺さぶりに対しても揺るぎない一流紙と言えども、国民感情の行き過ぎを批判することはできないだろう。朝鮮日報がこうした社説を掲載したのは、国民感情の変化を敏感に読み取っているのであろう。
韓国国民の感情変化を
分析したコラムも
朝鮮日報はさらに、金昌均(キム・チャンギュン)論説主幹の署名入りで「井戸の中で横紙破りの反日…国の威信を害するだけだ」と題するコラムも掲載している。
このコラムでは、元徴用工問題の解決は常識的かつ現実的な解決法だが、国民世論が騒然となるだろうと予想した。しかし、そうはならなかったとして次のように論評している。
幸いなのは、韓国国民の反応が予想よりも淡々としている点だ。ある大学教授は「586(1960年代に生まれて80年代に大学に通った現在の50代)の扇動に、若い世代が呼応していない」と、その理由を説明した。
今の韓国の20代、30代は、日本に対して被害者意識も劣等感もないという。競い合うに値する競争者、と見なしている。文在寅(ムン・ジェイン)政権時代の「ノー・ジャパン」が力を得たのは、「安倍効果」が作用したからだいう。日本が、優越的な立場を利用して輸出規制という不当な嫌がらせをしているという感覚から、若い層が腹を立てたのだ。
そして、同コラムは次のような内容で締めくくっている。
野党首脳部を占める586学生運動出身者らは、無条件に日本を非難することが国の品格を高めることであるかのように扇動する。身内で酔いしれて、井戸の外では嘲笑を買うばかりだ。国際規範を外れた反日ゴリ押し外交は、国の威信を害するだけだ。
朝鮮日報のコラムの日韓関係は
筆者が50年前に期待していたもの
筆者は、1972年に外務省に入り、韓国語の学習を命じられた。80年代頃までは、日韓の経済格差は大きく、日本が韓国を併合していた当時に関連し、要求の多かった韓国であるが、韓国が経済的に豊かになれば、対等な国になり、こうした要求はなくなるだろうと期待していた。
しかし、そのようにはならなかった。
韓国では朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の長期政権時代や光州事件の際、多くの学生が政府の弾圧を受けた。この人々が、586世代を形成し、革新政権を樹立するようになり、政権を取った後も反日の中核となった。彼らは、韓国が経済的に日本と遜色がない状態となった後も、日韓の歴史をネタに、日本に対して一方的に要求を繰り返す国となった。その極致が文在寅政権である。
だが、586世代以降の若者は、こうした政治的背景のない人々であり、より現実的に未来に向けた日韓関係を志向している。そのことが、このコラムの趣旨である。
過去よりも未来が重要と
述べた韓悳洙首相
韓悳洙(ハン・ドクス)首相は6日、国会で行われた政治・外交・統一・安全保障の対政府質疑に出席し、日本による植民地時代の徴用工訴訟問題の解決に向けた政府の方向性について「韓日関係は現在われわれが置かれている外交・安保状況や経済状況からみて、過去に執着しすぎるよりは未来に向かって進むべきだと信じている」と述べた。
尹錫悦大統領の日韓関係への取り組みを見る限り、この発言は大統領の考えでもあると言えるだろう。
また、日本の側でも、韓国政府が過去に日韓の合意を度々反故にしてきたことに不信感を抱き、尹錫悦政権になってからの韓国の変化に目をつぶっている。
尹錫悦大統領が、韓国政府に合意をほごにするよう圧力を行使してきた市民団体の改革に取り組んでいることが、韓国の変化の何よりの証拠である。
元慰安婦や元徴用工の支援団体となってきた市民団体は、問題が解決されれば、政府や地方公共団体の補助金が大幅に削減され、市民の寄付が集まらなくなる。文在寅政権になってから、市民団体への政府の補助金は毎年4000億ウォン(約420億円)増額され、年間5兆ウォン(約5200億円)を超えるに至っている。
出典 ダイヤモンドオンライン(2/10)
2023年02月16日
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