ソウル西部地裁は10日、韓国人元慰安婦を支援する市民団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連、旧挺対協)の寄付金不正流用疑惑をめぐり、業務上横領罪などに問われた前理事長であり、無所属の国会議員、尹美香(ユン・ミヒャン。58)被告に罰金1500万ウォン(約155万円)の支払いを命じる有罪判決を出した。
判決は、尹被告が活動資金1700万ウォン(約175万円)を個人用に使って横領していたと認定。
「誰の監督も受けずに自分の個人口座に資金を保管し、公的な支出と私的な支出を明確に区別できないようにしていた。少額のお金を寄付して運営を支援してきた市民の期待を裏切った」とした。一方で「横領額よりも多い金額を正義連などに寄付してきた」とも述べた。
検察は2020年9月、団体や職員名義の口座から個人口座に送金したり、認知症の症状がある元慰安婦に寄付や贈与を強要したりしたなどとして尹被告を詐欺や業務上横領などの罪で在宅起訴。今年1月の論告求刑公判で懲役5年を求刑していた。
尹被告は判決後、「検察が無理に起訴した部分のほとんどが無罪となった。横領はしていない。控訴してそのことを証明していく」と述べた。
尹の経歴では、1992年、日本軍慰安婦を支援する韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)発足時に幹事として参加。2008年〜2020年、挺対協と後の正義連でそれぞれ常任代表と理事長などを歴任、在ソウル日本大使館前で毎週水曜日に日本に対する慰安婦問題の抗議活動(水曜デモ)を主催してきた。「20年間の水曜日」(東方出版)を著すが、「元慰安婦女性の証言」には裏付ける資料が示されておらず、慰安婦本人からの確認すらない虚偽の内容との批判もでている。
1997年1月に元慰安婦とされる7人が日本政府によるアジア女性基金を受領した事実が明らかになると「ごく少数のおばあさんの行動は他の多くのおばあさんにさらに屈辱的だ」とした。挺対協は彼女らを裏切り者認定し、元慰安婦の認定から排除、他の慰安婦らには基金を受けとらないとする念書に印鑑を押せと迫った。他の元慰安婦される54人はそれを恐れ、基金を非公開で受理した。
7人のうちのソク・ボクスン(2005年死亡)は「私たちは年を取ってどんどん死んでいく。どこからであれ、くれるお金を受け取って使って死にたい。多数(の慰安婦)がこうだ…。おばあさんたちの要求は無理でもなく、そこで今度はまた挺対協で(アジア女性基金を)与えるなと日本に噂を言いふらしたんだ」「何であれ何千万ウォンもくれるなら、そのままおばあさんたちがもらえるよう放っておけばいいのに…おばあさんたちはみんな死にかかっているじゃないか。ところが募金を受け取るな、それを受け取れば汚い金だ、売女だ、こうした耳障りなことばかり言う」と証言していた。
2012年に尹が渡米した際には、国連人権理事会で米国など各国代表が日本軍慰安婦問題を提起することを要求する要請書を米国大使館側に手渡した。
2016年、慰安婦問題での日韓合意により設立された和解・癒やし財団が元慰安婦に対して償い金の支給活動を始めた際には、アジア女性基金の時のように元慰安婦を集めて受け取りを拒否するように再び迫った。元慰安婦らの一部はこれを恐れ、支援団体管理下に居ながら隠れて受給することを、信頼できる元慰安婦に明かした。
2020年3月に尹美香はソウル市の支援金を挺対協とその後身で事実上同一団体である正義記憶連帯の両団体の代表として重複申請し、審議過程で摘発された。そこで、市の審議委員会は「同一団体が支援金を重複受領するために不正な方法を用いた」との結論を下した。アジア太平洋戦争犠牲者韓国遺族会メンバーの一人は、挺対協は元慰安婦などの被害者を常に利用してきたこと、韓国政治も挺対協の活動を優遇し、被害者そのものへの対応を後回しにしてきたこと、アジア女性基金を潰し、和解・癒やし財団を解散に追い込むなど常に慰安婦問題の解決への道を妨げてきたと批判している。
疑惑を真っ先に暴露し、寄付金の使途などをめぐり正義連を批判、集会の廃止を求めたのが元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)さんだった。
2020年5月7日「自分は挺対協に利用された」「義援金が被害者に使われたことはない」「28年間にわたり続けてきた水曜集会(旧日本軍慰安婦問題の解決を求めて毎週水曜に開かれる定期デモ)に、これ以上参加しない」と主張した李容洙と関連して、所属する「共に市民党」のウ・ヒジョン代表は8日、「当党が把握したことによると、李さんの周辺にいらっしゃる方によって少し記憶が歪曲されたようだ」と話した。同日、尹美香は自身のFacebookに「1992年に申告電話をかけてきた時、私はオフィスで電話を受け、蚊の音ほどの声で震えながら、『私は被害者ではなく、私の友達が…』と話し出した当時の状況を昨日のことのように覚えている」と書いた。
2020年5月9日、韓国の50以上の慰安婦関連団体は「少数の慰安婦を懐柔して反日に利用した」「反米運動の先鋒を務めながら、娘を米国に留学させた」「夫が軍事機密提供の見返りに在日親北朝鮮団体から工作金を受け取った」「夫が運営するネットメディアに挺対協が広告を掲載していた」として、尹の当選辞退を要求する声明を出した。
デタラメな証言集を売っていたこと、慰安婦らの反対にも関わらず対米アピールのために「慰安婦を性奴隷だ」と主張していたこと、寄付金の5%未満しか慰安婦らに渡していなかったこと、韓国政府から支給された補助金である2017年の8500万ウォンと2018年の3億ウォンが会計帳簿で当該年度の補助金収入0ウォンにされているという組織会計がデタラメかつ不正だらけなこと、さらに慰安婦のためとして、寄付金を個人口座で集めていたことなど大々的な横領など数々の悪事も発覚し、30年以上も慰安婦らを騙して利用してきたことから良心がないと指摘された。
そのため、2020年7月には、28年も続けていた水曜集会であったが、社会から批判をうけるようになった正義連のメンバーが場所を変えて集まった。なぜなら日本大使館前に、正義連を批判する保守系団体の自由連帯が警察に「慰安婦像撤去」の集会場所を申し入れ陣取ったため、慰安婦像を囲んで反対側では、それに反対する「反日」を自称する学生団体が陣取り、集会は3つの組織が3カ所に分かれて三つ巴集会となった。
つまり日本大使館前で28年間、毎週水曜日に続けられてきた慰安婦問題を日本政府へ抗議する「水曜集会」は、1000回の集会で記念に慰安婦像を設置した。1500回を目指す最中で、2週連続で別の場所に移ることを余儀なくされた。1992年にスタートした同集会が場所を移して行われたのは、当然ながら初めてのことだ。この3者の配置は、保守系団体の集会に反発する学生団体が慰安婦像を「死守する」と座り込みはじめた6月24日からだ。申請せず歩道占拠は不法行為であるため、退去するようにと警察は拡声器で、定期的に学生団体のメンバーに警告はするものの、それ以上の取り締まりに動くことはなく、座り込みは事実上黙認されて、そこに第四の団体も参入した。
しかし、学生たちには慰安婦像を中心とした日本大使館前の路上は、彼らが生まれる前から集会が毎週続いている「聖地」。正義連本体の集会が慰安婦像から遠ざかることを余儀なくされても、正義連による慰安婦問題の教育が染みついた学生たちが、正義連に代わり決死の覚悟で慰安婦像を守っている。尹美香氏や正義連の疑惑も、ウイルス感染問題すらも座り込みを続ける学生らにとっては関係がないようだ。
7月3日、地元のソウル市鍾路(チョンノ)区は、感染症予防法に基づく措置で、日本大使館前での集会が全面的に禁止となったのだ。禁止措置は感染の危機警報が「深刻」を解除されるまでだ。
出典 文春オンライン(2020/7/4)
2023年02月13日
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