一方で、既に同性婚が法制化されているニュージーランドでは元議員による反省の弁が話題になっている。
ニュージーランドでは2013年に同性婚を可能とする法案が可決された。その最終審議の際に「関係ない人にはただ、今まで通りの人生が続くだけ」などと述べたスピーチはこれまでも話題になっている。今回、注目されているのは、その際の法案に反対票を投じた議員によって行われたスピーチだった。自分が誤った判断をしたと認め、性的マイノリティのコミュニティに対して謝罪したのだ。
スピーチをしたのはニック・スミス元議員。引退を決め、自身の議員としての活動を振り返った演説の中盤でスミス氏は「私は過ちを犯しました」と話し始める。
「2013年、私は同性婚を可能とする法案に反対票を投じたのです。この過ちは個人的なものでもあります。私の20歳になる息子はゲイなのです」と明かし、「ニュージーランドのLGBT+コミュニティに謝罪し、議事録に残したいと思います」と述べた。
法案を提出した議員や、過去にニュージーランドにおける同性愛者らの権利獲得に動いた議員らに「敬意を表します」とした。
▼スミス元議員によるスピーチの動画。同性婚に関する発言は15分22秒から
息子「人は学ぶことができ、見方を変えることもできる」
スミス元議員は演説後、息子のローガンさんと共にニュージーランドの公共放送・TVNZのインタビューを受けている。
その中でスミス元議員は「息子のローガンは(スピーチした2021年の)3年前、ゲイであることを私に打ち明けたんです。
そのころ私はすでに、自分の考えが間違っていたと気付いていました」とし、「議員を引退する前に、公の場で謝罪をすることを息子に約束しました」と、スピーチに至る経緯を説明。
「最も重要なつながりである家族を大切にすることと、LGBTQ+コミュニティを尊重することは両立する」「私はそれが分かっていなかった」とも述べた。
息子のローガンさんは「(打ち明けたときには)父がすでに(同性愛に対する)意見を変えていることは分かっていた」と振り返り、話すことに不安はなかったとコメントし、スミス元議員のスピーチをこう評価した。
「父を本当に誇りに思います。人は学ぶことができ、見方を変えることもできるのだと示すことが重要ですから、政治や政治家、こうあってほしい」
このスピーチの動画がTwitterに投稿されると大きな話題になり、「政治や政治家とは、こうあって欲しいと強く感じる」「こういう議会を日本でも見たい」「謝罪する勇気」「素晴らしい。差別からは何も生まれない」など、反響が広がった。
日本では、今年5月に、総理のお膝元の広島市で先進7カ国首脳会議(G7サミット)が控えている。
同性婚に慎重な姿勢を示す岸田文雄首相の周囲で時代錯誤の発言が出ていては、国際社会からも指摘されるのは必至だろう。性的少数者への弾圧で知られるロシアでに、タス通信が、「(日本は)G7で同性婚を認めないただ一つの国。保守的な与党・自民党のメンバーには同性婚に反対する者が多い」と伝えた。
G7(先進7カ国)の中で日本だけが婚姻の平等やパートナーシップ法を認めていないため、英BBCは「いまだに伝統的な男女の役割分担、伝統的家族観に大きく縛られている」と指摘し、同性カップルが全国各地で婚姻の法的承認を求めて提訴している現状も紹介した。
総理の人権問題への遅れた対応であると既に国会審議にも影響をもたらしている。日本のあるべき姿勢を示すべきだとして、まずは総理もこの際に襟を正すことが求められそうだ。人権においてもガラパゴスではあってはならない。
参照、毎日新聞(2/5) さまざまなテーマを愛と毒のある切り口で、数々のコラムを世に送り出してきた故・高山真氏の自伝的小説を映画『エゴイスト』2月10日に公開される。映画の製作意図について松永監督は、「この映画はLGBTQ+への理解を求めるものではありません。見る方が考える1つのきっかけになってもらえればと思います」と説明した。
演技派俳優の鈴木亮平が主人公を演じた。
「題名からエゴイストの人の話かと思って小説を読んだら、むしろ逆で自分の愛を“エゴなんじゃないか?”とずっと反芻している人の話。読み終わって“これはいい作品だな”と思ったのですが、主人公の2人がゲイである作品を自分がやることで、ゲ
イに関する間違った情報や偏見を与えたり、ステレオタイプを助長しないよう慎重にやらないといけない、とても責任が重い仕事だなと感じました」
役を引き受けるまでには、悩んだものの映画の製作スタッフにLGBTQ監修がつき、友人役にゲイをキャスティングするなどのサポートもあって役を引き受けることを決め、いつも行っている役作りのための取材を開始したという。
原作者は同じ大学の先輩だったり、愛とエゴについて考えていたり、自分の心情を常に俯瞰で見て言語化しようとする癖などが似ているなと思って、なんだか他人に思えなくて(笑)。でもそのままやると人物としての生々しさが出ないので、思いとか背景とか、小説に書かれていないバックグラウンドみたいなものを自分に取り込んだうえで、寝かせて何が出てくるかなというところを目指しました」
主人公・浩輔(鈴木亮平)は、14歳で母を失い、田舎町でゲイである自分の姿を押し殺しながら思春期を過ごし、今は東京の出版社でファッション誌の編集者として働く、まるで自分を守る鎧のようにハイブランドの服に身を包み、気ままながらもどこか虚勢を張って生きていた。
物語が進むにつれて浩輔は、ジムで知り合ったパーソナルトレーナーの龍太と関係を深めるが、龍太が病気がちな母・妙子との生活費を稼ぐために男たちに身体を売っていることを知る。中学生で母を亡くしたときに何もできなかったことが心残りになっていた浩輔は、専属の客になって龍太を独占し、龍太親子の毎月の生活をサポートすることで亡き母への思いも取り戻そうとする。苦しくても幸せな生活が続くかと思った矢先、突然の出来事が浩輔を襲い、物語は思わぬほうへと動き出す。
鈴木は、小説だけでなくエッセイやブログなどにも目を通し、友人や仕事の関係者への取材やゲイの方たちとの座談会などを重ねた。「生きていらしたら高山さんひとりに話を聞けば済むことが、お亡くなりになられていたので……。でもいろんな方にお話を聞いたことで、多面的に捉えることができたんじゃないでしょうか」さらに高山さんの実家まで足を運んで家族に話を聞き、墓参りもするなど20人以上の関係者に会って作り上げたという浩輔役は、生前の高山さんを知る人の間で「会ったことがないはずなのに、どうして?」と驚かれるほど生き写しと話題だという。
「映画の試写を見てくれた人が、みんな長文のメッセージをくれるんですよ。それぞれハマっているところが違うけど、本当にびっくりするくらい反応がいいです。“説明できないけど、めちゃくちゃよかった”という感想もいただきました。映画では愛情とか、献身とか、家族や親子の関係とか言葉にするのが難しいことを描いているので、取材でいろいろと聞かれるけど説明しづらいんですよね(笑)。僕には僕なりの解釈があるけど、でもそれが正解では決してなくて、どんな解釈でも正解だと思う。だから映画を見た人が何に感動したかで自分自身についての新たな発見がある作品かなと思います。“愛って……!?”ということを考えながら見ていただきたいですね」
鈴木亮平は3月29日の誕生日で40歳を迎える。「年をとることに抵抗はないけど、40歳はキャリアという面で折り返し。自分のやりたいことへまっすぐにシフトチェンジしていかないと間に合わないぞと思っています。自分の人生が終わるときに何が残せるのか、逆算して考えることがコロナ禍以降に増えた気がします。これからは自分の人生の集大成だと思って失敗を恐れず、いろんなチャレンジをしていきたいです」
撮影では、監督から渡される指示書のメモをもとにアドリブで演技をするシーンが多くあったそう。
「作品にもよりますけど、僕らが演技として目指すところは、自分の心から出てきた言葉が結果セリフになっていることなんです。浩輔役として生まれたセリフなら何でもいいから、そのままその場所で生きてくださいと任されるのは、すごい集中力を使うしプレッシャーもありますけど、同時に監督やスタッフが俳優を信頼してくれている証拠。役者が演じることにリスペクトしてくれる現場でしたね」と鈴木。
パーソナルトレーナーの龍太役を演じた宮沢氷魚も、出演を引き受けるまでに試行錯誤があったようだが、最終的に引き受ける動機となったのは15年来の友人の存在だったそう。「友人はゲイなんです。彼と知り合ってからというもの、ずっと心地よく過ごせる自分の居場所を探しているんだなというふうに感じました。なので、この映画を作ることを通して、この友人のために何か少しでもできたのではないか。そして、LGBTQコミュニティのためにも何かできたのではないかと思います」と話していた。
宮沢は、米国と日本のクオーターで幼稚園から高校までインターナショナル・スクールに通い、カリフォルニア大学サンタクルーズ校から国際基督教大学に編入したバイリンガル。総理秘書官の1件で感じたこと意見をもとめられると、「間違いなく日本も前進はしていると思うけど、他国に比べると遅れを取っているところもたくさんある。今回の発言が出たことによって、たくさんの人が声を上げて、その失言に意見をする行動をたくさん見ることができた。日本の今までの歴史を考えても、とても大きなステップアッㇷ゚。(失言に誘発されて)世論の皆様がたくさん声を上げたことで、すごく日本の未来に希望が見える。それによって前向きな皆様の意思の強さ、意見をどんどん発信していこう、というのが見えた。そこの所に、もっと注目が集まってもいいんじゃないかなと思っています」と述べた。
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