2022年には、1人当たりGDPで、日本は台湾に抜かれた事実がある。IMF(国際通貨基金)のデータベースによると、日本、韓国、台湾の1人あたりGDPの推移は、10年前の2012年をみると、日本の1人あたりGDPは、韓国の1.9倍、台湾の2.3倍だった。
2013年に異次元金融緩和が導入されて円安が進み、日本の地位は顕著に低下した。それが2019年まで続いたのだが、2020、2021年に、韓国、台湾が日本に急迫したのだ。IMFの予測によると、日本、韓国、台湾の相対的な関係は、今後もしばらくはいまのままで続く。しかし、韓国の成長率が日本より大幅に高いので、近い将来に韓国も日本を抜く可能性が高い。賃金では、数年前から、日本は韓国に抜かれていたとの指摘がある。確かに、OECDのデータによると、年間平均賃金では、すでに2015年に、日本は韓国に抜かれている。そして、2021年には、日本が3万9711ドルに対して、韓国が4万2747ドルになっている。
ただし、このデータを見るには注意が必要だ。ここでは、市場為替レートでドルに換算しているのではなく、購買力平価で換算している。これは、世界的な一物一価が成立する為替レートだ。2021年には、1ドル=100.412円と、1ドル=847.457ウォンだ。他方、市場レート、1ドル=109.754円と、1ドル=1143.958ウォンだ。
したがって、市場レートで見れば、日本は上記の値を0.915倍して3万6335ドルであり、韓国は、0.741倍して3万1667ドルだ。このレートなら、まだ日本のほうが高い。
日本の1人あたりGDPが台湾や韓国に追いつかれたのは、2つの理由による。
第1は、円安によるものだ。第2の原因は、自国通貨建てでみた1人あたりGDPで、日本の成長率が低かったことだ。
2010年から2022年までの期間の成長率を見ると、日本 1.11倍。韓国 1.60倍。台湾1.71倍。日本の成長率が低くなる大きな原因は、人口高齢化が進んで労働人口の増加率がマイナスになっていることだ。ただし、ここでみているのは1人あたり計数なので、これによる影響はかなり緩和されている。もう1つ注意すべきは、韓国においても、出生率低下によって、労働力が減少していることだ。それにもかかわらず、韓国の成長率が高いのは、技術進歩率が高く、産業構造が高度化しているからだ。
なお、以上で見た状況は、日本と世界の多くの先進国との間で同様のことがいえる。いまの状態が続けば、日本は、先進国の地位を失う可能性が高まっている。以上のような統計の数字を示されても、日本は島国なので、これまではそれを実感できなかった。2022年には、iPhoneのような国際的商品が円でで大幅に値上がり、急激な円安の影響によって、市民生活への影響を感じた。そうなると、外国人労働者が日本離れを始めたことも報道された。これまで介護等の仕事でフィリピンから来ていた労働者が、所得の高いオーストラリアに行ってしまうといったニュースだ。
時代を遡ると、これとちょうど逆のことが起きていた。1980〜1990年代に経済大国となり日本は豊かになり、外貨持ち出し基準も撤廃されて、海外に格安旅行も、LCCも選び放題になった。欧米の豪勢なホテルに泊まったり、一人旅や気ままに買い物ができたり、そして、バックパッカーもと、自由な旅のスタイルになった。
また、日本の経済力が強くなったことで、日本で勉強し、日本語を勉強して日本で仕事に就きたいと望んだ外国人が増えた。彼らは、日本の大学に留学してきた。あるいは、日本経済を研究するために、日本の大学に滞在したいという学者も増えた。日本の高い生活費を払っても、それが価値あると考えられたのである。
しかし、日本経済の低迷が長引くと劣化も目立ってきた。文部科学省の科学技術・学術政策研究所が8月に公表した「科学技術指標2022」によると、研究内容が注目されて数多く引用される論文の数で、日本は3780本。スペイン3845本、韓国3798本に抜かれて、過去最低の12位に転落した。なお、1位は中国(4万6352本)、2位はアメリカ(3万6680本)。日本は中国の12分の1だった。
さまざまな国際比較ランキングでも、日本の人材の質が低下している。日本の給与が低いのは、生産性の低さからだと指摘される。こうした状況で、賃金が上がるはずはない。正確にいうと、本当は能力があるのに、いまの日本の社会構造のために、それを発揮できないのだ。多くの有能な人材が、潜在能力を発揮できずに安い賃金に甘んじている。これは、「安い日本」におけるもっとも深刻な現象だ。
観光立国を掲げて以降、東日本大震災は起きたが、それ以前の2007年から2012年までは年間800万人台だったのが、2013年に1000万人を超え、2019年には3188万人となった。国別では、これまで韓国、中国、台湾が大部分だ。銀座の表通りに観光バスが駐車して爆買い現象が目立っておきた。そして、外国人旅行客があふれることを観光地では歓迎した。それによって、売り上げが増加したからだ。
データ分析のグローバルデータ社は、2022年から日本の国内旅行がパンデミック以前に戻るのではとの明るい予測をしたし、インバウンド市場は2024年にパンデミック前のレベルに回復すると分析している。また、JNTOは「政府が掲げる2030年の6000万人、消費額15兆円の目標の達成は可能」との考えを変えていない。
海外へ観光に明け暮れていた日本人観光客も、円安なら国内の観光へと目を向け、海外旅行に勝るとも劣らない観光地もあると気づいてきた、これまで円高で足が向かなかった欧米からも、アジアのテイストを持つ国、このところはオリ・パラ、ラグビーW杯の開催国・日本の映像をみて、アジアの日本に旅行してみたいと興味を持たれるようになってきている。円安がそれを加速させれば、国際観光収入ランキングで13位の日本も、タイ(7位)や韓国(11位)に追いつき、やがて追い抜くだろう。日本においては観光のノリシロは大きい、経済の柱の一つになると考えられるのだ。
外国人にアンケート調査したところ、日本に来たい理由には、円安の国だからなどは入っていない。
1位:以前も旅行したことがあり、気に入ったから(88%)
2位:行きたい観光地や観光施設があるから(84%)
3位:清潔だから(83%)
3位:食事が美味しいから(83%)
「ミシュランガイド東京2023」では東京が引き続き世界でナンバーワンの星をもつ都市となり、日本が世界でも有数の美食国である、アルゴリズムを用いたフランスの「ラ・リスト 2023(LA LISTE 2023)」ではトップ1000レストランのうち、日本が138軒で世界トップ。
5位:治安が良いから(79%)
5位:体験したいツアーやアクティビティがあるから(79%) 1位:以前も旅行したことがあり、気に入ったから(88%)
2位:行きたい観光地や観光施設があるから(84%)
3位:清潔だから(83%)
3位:食事が美味しいから(83%)
5位:治安が良いから(79%)
5位:体験したいツアーやアクティビティがあるから(79%)
2023年01月03日
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