中村良夫さん(東京工業大学名誉教授)のお話は、『土俗的、内発的なまちづくり』と題して、この所の転居の事情やご自身の疎開で10年程を古河に暮らした縁があったことで、御所沼の再生に関わっていたこと、消えかかった沼を新しい市民運動「御所沼コモンズ」として取り組んだ事例を取り上げられました。美しい景観という西欧的観点から、民衆に育まれた日本の地域に残る温かみがある味わいのある風物という風景の断片も大事にしていかれると良いのではと、示唆された。今回は、我孫子のシンボルゾーン、手賀沼に面した会場での講演であったからでしょう、手賀沼やハケ(崖線)があるとして、超一流の景観と称賛され、鶴見俊輔『限界芸術論』、柳宗悦、また嘉納治五郎の我孫子別荘の意義などを我孫子に関わりの多い方々を取り上げて、市民が取り組む景観活動の重要性を讃えられました。
岡部明子さん(東京大学大学院新領域創生科学研究科教授)は、『環境学の視点から水辺を取り戻すまちづくり』と題して話をされた。我孫子から東大キャンパス(新領域創成科学研究科)は車で15分ほどだと言われ、ヌマべリング、手賀沼まんだらの活動、安房における古民家・ゴンジロウ(土地での名称)の茅葺屋根の吹き替えなどの学生参加型プロジェクトの事例をPPTで映像を含め紹介、建て物と対話する、草木、生物と戯れ汗して耕して新しい実りを喜ぶなどとの話を織り交ぜて、中村教授の近著『風土自治』(四六上製 448頁)を持参され、共感した点が多いと取り上げられました。