いまやどの国も企業も、経済成長をめざすだけではいけないということを、認識するようになりました。心の豊かさや地球環境への配慮、貧困問題などへの対応も含めて、トータルに「良い状態」であることが望まれる社会になっています。
幸福学の第一人者で、慶應義塾大学大学院のウェルビーイングリサーチセンター長・前野隆司教授にウェルビーイングについて教えて頂きました。
前野隆司(以下、前野):ウェルビーイングを辞書で引くと「幸せ」「健康」「福祉」と書かれており、複数の意味を持ちます。お医者さんは「健康」の意味で使い、福祉の分野では「福祉」と訳されます。大きく捉えれば「心と体と社会の良い状態」を表す概念といえるでしょう。
もっと簡単にいうと「自分の幸せを考えながら、みんなの幸せも同時に考えて、社会全体で持続的な幸せをめざす」。そんな状態を表していると考えています。

前野:私は長年の研究から導いた、幸せに寄与する「幸せの4つの因子」を提唱しています。4つの因子が、まるで四つ葉のクローバーのように欠けることなくひとつなぎに関係し合い、これらすべてが満たされているときに「幸せを感じる」と私は定義しています。
これからの時代は「世界の全産業がウェルビーイング産業になる」と私は考えています。幸せになれるオフィス、幸せになれる電車などウェルビーイングの条件を満たす製品やサービス、組織作りは全分野で可能だと思います。
そして、環境に配慮しない企業や労働環境を向上させない企業に対して、消費者が不買などのボイコットによって意思を表示することも珍しくなくなりました。それと同様に、これからは企業の態度としてウェルビーイングに重きを置くことが、その企業価値を左右する時代となっていくでしょう。今後はウェルビーイングの考えが更に広がり、より良い社会へ向かっていくことを信じています。
こうして企業が社会の幸福のためにも考える必要性が言われるようになった一方で、各人が個別にライフスタイルを見直すことが必要であるという事で、一時「定年後、○○円必要」のフィナンシャルプランナーの議論が注目され、個人の生活の安定に老後の貯蓄2000万円が必要との話も出てきましたが、目標額を設定することによって不安にさせる前提よりも、個々に幸せを感じる状態を創っていく事、なんとかなるとの心の持ちようが日々の幸福につながるので、企業の考え方の変化、このようなウエルビーイングの考え方を個人も上手に取り入れるのは参考になります。2000万円という金額は正当性に欠けるものであるとの精査がされたが、もちろん。経済的な余裕を持てるように無駄を排して貯蓄に回す一方で、心に余裕をもてる「なんとかなる」の潔さも持てるといいという事です。
50代でも、貯蓄がない、またはあっても100万円未満の人はおよそ半数近く。一方、1,000万円以上は24.2%という結果でした。国民年金と厚生年金では計算式が異なります。(ここでは細かい計算については割愛します)実際のところ、どれくらいの年金額を受け取っているのか?
国民年金の平均額は、男性58,866円・女性53,699円。
国民年金を含む厚生年金の平均額は、男性164,770円・女性103,159円です。
女性は妊娠や出産のタイミングで退職したり、子育てで働く期間が短くなるなどの影響で、男性より少ない支給額になると考えられます。
50代で無職の場合、年金額は平均額より下回るでしょうし、年金にも税金がかかるので手取りはさらに少なくなると考えられます。