片足で10秒間立ち続けるのは意外に難しい。それができるかできないかが、10年以内の死亡リスクの評価指標となり得るとする、新たな論文が報告された。運動医学クリニックCLINIMEX(ブラジル)のClaudio Araujo氏らの研究によるもので、詳細は「British Journal of Sports Medicine」に6月21日掲載された。
Araujo氏によると、有酸素運動能力や筋力、柔軟性などが加齢とともに徐々に低下していくのとは異なり、バランス能力は60歳ぐらいまでかなりよく維持されているという。しかしその後、急速に低下するとのことだ。同氏らは、「10秒間の片足立ちで静的バランスを簡便に評価できる。高齢者の定期健診に組み込むべきだ」と提案している。
研究の解析対象者は、1994年にスタートしたCLINIMEX運動科学研究の参加者のうち、2008〜2020年に登録された51〜75歳の中高年者1,702人(平均年齢61.7±6.8歳、男性68%、BMI27.6±4.5)。起立して両手を下げた状態で何にもつかまらず、片足を上げて、その足の甲をもう一方の足(地についている方)のふくらはぎの裏につけ、その姿勢を10秒間維持できるか否かを評価した。
その結果、20.4%がこれをできなかった。10秒間片足立ちができなかった群は、できた群に比べて、肥満、心臓病、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病などの有病率が有意に高かった。特に糖尿病の有病率に関しては、3倍もの差が存在していた(12.6対37.9%)。
10秒間片足立ちができなかった人の割合を年齢層別に見ると、51〜55歳は4.7%、56〜60歳は8.1%、61〜65歳は17.8%、66〜70歳では36.8%であり、71〜75歳は半数以上(53.6%)だった。つまり、50歳以降の20年強の年齢差で、このテストができない人の割合が11倍以上に広がっていた。
このテストを行った後、7年間(中央値)追跡したところ、7.2%の死亡が確認された。死亡原因は、がん32%、心臓病30%、呼吸器疾患9%、新型コロナウイルス感染症7%などであり、10秒間片足立ちができたか否かは、このような死亡原因の傾向に影響を及ぼしていなかった。ただし、10秒間片足立ちができた人の死亡率は4.6%であるのに対して、できなかった人は17.5%だった。
ログランク検定により、両群の生存率の推移に有意差が確認された(P<0.001)。また、年齢、性別、BMI、併存疾患の影響を調整後に全死亡リスクを比較すると、10秒間片足立ちができない群は84%高リスクだった〔ハザード比1.84(95%信頼区間1.23〜2.78)、P<0.001〕。
著者らは、本研究は観察研究のため、10秒間片足立ちの検査結果と死亡リスクとの因果関係に言及することはできないとしている。また、研究参加者は全員、白人系ブラジル人であり、この結果をほかの地域・民族へ適用するには、その集団での検証が必要という。さらに、過去の転倒歴、食事・喫煙・運動習慣、バランス能力を低下させ得る薬剤の服用などの影響を評価していないことも、本研究の限界として挙げている。
論文ではそれら解釈上の留意点を述べた上で、「10秒間片足立ち検査は静的バランス能力を簡便に評価でき、中高年者の死亡リスクに関する有用な情報を得られる」と結論付けている。(HealthDay News 2022年6月22日)
https://consumer.healthday.com/b-6-22-can-you-stand-on-one-leg-you-might-live-longer-2657526425.html
2022年07月06日
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