グアムは米連邦法上「アンインコーポレッド・テリトリー(未編入領土)であり米連邦政府の所有物である」と明記されている。1950年、グアム島民に米国市民権が付与されて以来70年も連邦政府が定める法的義務を果たし、合衆国憲法を順守しながら生活をしているにもかかわらず、大統領選挙はおろか国政選挙の選挙権もなく、ワシントンDCの連邦議会に地域代表の議員を立てる権利も認められていない。未編入領土というと聞こえはよいが、事実上グアムは米国の「植民地」である。つまり、米軍基地外に住むグアム島民のコミュニティーは存在していないも同然で、グアム政府は連邦政府の決定には口出しができない一方的な支配関係が21世紀の現在も続いているのだ。
2006年、日米両国の政府間で合意された宣野湾市の在沖米軍基地再編に伴う「グアムビルドアップ計画」により2024年までに沖縄からの移転が決まっている在沖米軍海兵隊司令部要員8000人とその家族9000人の移入によってグアムの地域経済は隅々まで潤うようになるとも言われている。
そしてもし、中国との紛争に備え「弾道ミサイル防衛能力を持つイージス駆逐艦または巡洋艦防衛システム」のグアム設置計画の予算支出を連邦議会が承認した場合、今まで以上に多額の軍事補助費が毎年グアム政府に支払われることになるはずだ。
そのとき、沖縄全島の4分の1にも満たない(沖縄本島の半分以下)約549平方キロのグアム島の総面積のうち米軍軍事施設の占める割合は現在の33%から60〜70%近い数字になる可能性がある。軍関連施設が増えることにより、島内のライフラインのうち特に上下水道への負担が増し、一般住民への水の供給に不安が出ることや、周辺海域の汚染などを心配する声も多い。そして連邦上院下院議会の公聴会などで国防総省の高官たちがしばしば口にする「太平洋の要塞(ようさい)、米国最大最強の沈まぬ航空母艦(米軍軍事基地)」にグアムはなってしまうのではないかと危惧されている。
グアム政府観光局の統計によると、2019事業年度(18年10月1日〜19年9月30日)にはグアム島観光歴史上最多となる163万人の来島者(前年度は152万人)が訪れた。ここ数年韓国マーケットに押され低迷していた日本マーケットの復活と成長を20年度に期待していたグアム。この「日本から一番近い楽園」に再び観光業が戻る日はいつやって来るのだろうか。
終息の見えない「新型コロナ」と島内でかなりの比重を占める「米軍基地」の拡張。楽園グアムの観光はその両方から挟み撃ちに遭っている。
出典:ウエブhttps://www.jiji.com/jc/v4?id=202012nghs0001
2022年05月22日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック