国立感染症研究所の脇田隆字(たかじ)所長は同27日の衆院厚生労働委員会で、これからの季節は気温と湿度が高くなり熱中症リスクもあることから、「屋外で人との距離が十分ある場合は、マスクを外すことが推奨される。感染リスクが高くない場面では、着用は必ずしも必要ではない」と述べた。その上で「具体的にどのような場面でマスクを着けるか外すかまでは、直ちに提言できる状況にはない」と説明、今後議論を進めるとした。
■広がる「脱マスク」
海外に目を向けると、欧米を中心にマスク着用を義務から任意へと緩和する動きが広がり、様相が変わりつつある。
英国は1月下旬、オミクロン株対策として昨年12月に導入した公共施設でのマスク着用義務を撤廃。同株の流行のピークが過ぎたことなどを考慮したが、混雑した場所にいるときや普段会わない人と会うときなどは、引き続き着用が推奨されるとしている。
米国でも3月下旬、ハワイ州を最後に全50州で着用義務が終了。ほとんどの地域で、屋内でも着用が必須ではなくなった。航空機や鉄道などの公共交通機関では、米疾病対策センター(CDC)が4月中旬に着用義務の延長を決めたが、直後にフロリダ州の連邦地裁が「義務化は違法で無効」と判断。このため主要な航空・鉄道会社は乗客に着用を求めていない。
日本と同じく脱マスクに慎重だった韓国でも見直しの動きが出ている。屋内でのマスク着用義務は当面維持する一方、屋外については今月2日から、スポーツ観戦時などを除き解除することを決めた。
■連休後に本格議論を
各国と対応が分かれたのはなぜか。「マスクに対する意識の差が現れているのではないか」とみるのは、関西福祉大の勝田吉彰教授(渡航医学)。勝田氏によると、欧米でマスク着用の義務化が広がったのは「もともと着用の習慣がなく、法律で義務化しなければ着ける人がほとんどいなかったから」。マスク着用にあまり抵抗のない日本人と異なり、そうした事情が影響した可能性があるとみる。
とはいえ、マスク依存にデメリットがないわけではない。例えば夏場の常時着用には熱中症のリスクがある。勝田氏は「今後は感染状況に応じてマスクを外したり着用したりできるよう政府や専門家が判断材料となる情報を提供し、臨機応変に呼びかける必要もある」と訴える。
関西大の高鳥毛(たかとりげ)敏雄教授(公衆衛生学)も一律のマスク推奨を疑問視。「コロナ対策の経験値が蓄積しているのに、今も未知の感染症に対峙しているかのようだ」と話す。
見直しに際しては「1人で屋外を散歩するときはリスクが小さい」など、具体的な場面を提示する必要がある、と高鳥毛氏。連休後の感染状況を見極めながら、本格的な議論を開始すべきだとの考えを示した。(桑村大)
2022年05月01日
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