「超過死亡」はもともと季節性インフルエンザの被害を推計するものとして発展してきた。インフルエンザが流行しなかったとしたら亡くなっていたであろう人の数を特定のモデルによって推計し、それと実際の死亡者の数を超過死亡として「季節性インフルエンザ関連死」とみなす考え方である。
ちなみに現在公表されている新型コロナによる死亡者数は約19000人、2021年の1年間の死亡者数は約1万5000人とされている。しかしこの数字は新型コロナを原死因とする死亡者数でもないし、新型コロナ関連死の数でもない。厚生労働省が状況を把握するために集計している数であり、内容は新型コロナ感染中に亡くなった人の数である。原死因が何であるのかを問わないものであり、また陰性になった後に死亡した場合にはこの数に含まれない。概念的に極めてあいまいな数字なので、実態をつかむにはやはり超過死亡推計や原死因別の分析などが進む必要がある。データが出そろい詳細な分析ができるまでまだしばらくは時間が必要であるが、最終的には2021年に前年よりも7万人以上多くの人が亡くなっているという事実の背景や理由は、何らかの形で説明されなければならないものであると思う。
2019年は季節性インフルエンザがある程度流行した年であり、インフルエンザを原死因とする死者数が約3500人、超過死亡としてインフルエンザ関連死と推計される人が約1万人である。もっともこの数値は関連死の最大値を表すものに近く過大推計である可能性がよく指摘される。そこで今回、活用した感染症疫学センターの超過死亡の推計は、米国CDCで用いられている方法(Farringtonアルゴリズム)にもとづいたものである。具体的には新型コロナがなかった場合に亡くなっていたであろうと推定される人数を推定し、その予想が最も上振れした場合の最大値(統計学的には片側95パーセント信頼区間の上限値)からの乖離幅を割り出している。この値は「確実な超過死亡数」ということができると思う。
下記のグラフはクリックで拡大
感染症疫学センターの推計によると2021年の1月から9月までの値では、点推定値からのかい離が51,568人であり、推定区間上限値からのかい離が9,782人となっている。実際にコロナ関連死と考えられるのはこの約1万人から約5万人までの間のどこかということになる。ずいぶん幅がある数字であるが、仮に中間付近の3万人前後だとしても季節性インフルエンザに比べればかなりの大きさであることがわかると思う。
死亡者が5パーセント前後増加することはこれまでもときどきみられる現象であり、高度成長期以降では6回程度発生している。ほとんどが大寒波や季節性インフルエンザの大流行、あとは東日本大震災などの災害に起因するものである。重要なことはこのような異常な死亡者増加が発生した翌年は死亡者数が横ばいになることが普通であり、したがって増加率自体は鋭く下落する形状となるのが通例である。唯一の例外は2010年と2011年の2年連続である。2010年はリーマンショック後の経済不況下で、1月〜2月に日本を大寒波が襲い、さらには梅雨時期の集中豪雨とそれに続く記録的な熱波という経済不況と異常気象が合体した年である。2011年は東日本大震災が3月に発生し直接的な死者だけでなく、その後の関連死なども継続し、ほぼ1年を通して前年を上回る死者を出した年である。
2021年の死亡者は数の上でも増加率の上でも高度成長期以降最大のものであることには違いないが、その評価が「季節性インフルエンザのすごいやつが大流行した」という程度になるのか、あるいは「大災害級の死者」となるのかはもう少し先まで見てみないと確定できない。ただしもしこのような死亡者増加状況があと数か月続くようであれば、死者数の観点からは、それはもはや「悪性の風邪の流行」というレベルではなく「戦後最大級の大災害」ということになるだろう。
※https://plutokitakita.hatenablog.com/entry/2022/02/07/160804
あくまで社会科学を探求する一人の学者・北川浩個人の考えを表示するブログ。
成蹊大学学長を務めるが、成蹊大学の公式な見解とはまったく無関係としている。
コロナが蔓延し始めたころでも死亡者数が減少していたが、ところが3月ワクチン接種以降から死亡者数が急増
2021年の9月までの死亡数が前年同期より約6万人増え、東日本大震災があって戦後最多の増加となった2011年を上回っていることが分かった。
1万3千人の死者増加が起こる確率は1万年に3回。
厚労省は、東日本大震災を上回る規模の人口減がなぜ起きているか、統計的にも有意な異常事態であるのに説明できていない
鈴木参考人からの調書が発表されていても、この死者数の異常さをメディアが注目していないのが、不思議なくらいである。
https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000900468.pdf