理化学研究所は、「日本人に多い特定の免疫タイプが要因の一部だと解明した」と発表した。
新型コロナが細胞に感染すると、免疫作用で細胞の表面にウイルスが侵入したことを示す抗原となるペプチドという物質が表れる。これにキラーT細胞が刺激され増殖し、感染細胞を破壊し重症化を防ぐ。新型コロナに感染していない同じ免疫タイプの人から細胞を採取しQYIを投与すると83・3%でキラーT細胞が増殖した。これらからファクターXは、この免疫タイプの多さが要因の一部だと結論づけた。
研究チームは、日本人の約6割が持つが白血球の型「A24」という免疫タイプに着目。
このタイプの細胞が新型コロナに感染した際、細胞の表面にどんな種類のペプチドが表れ、キラーT細胞がどう反応するか分析した。その結果、「QYI」というペプチドにキラーT細胞が効率的に反応するのだと、日本人の新型コロナ感染者に重症者などが少ないファクターXの調べがついたとして。欧米人には「A24」は1〜2割にしかない。
QYIをワクチンとして投与すれば重症化を抑止できる可能性がある。理研の藤井真一郎チームリーダーは「ワクチンが効かなかった人の新たな治療法になり得るし、オミクロン株にも有効だとみている」と話した。
出典:産経新聞2021/12/8
厚生労働省は2021年6月16日、新型コロナウイルスに関する初の大規模な抗体検査の結果を発表したが、東京での抗体保有率は0.1%、大阪は0.17%、宮城は0.03%だった。5月31日時点の累積感染者数を基にした感染率が、東京は0.038%、大阪0.02%、宮城0.004%であることから、実際の感染者数は報告されている人数の2.6〜8.5倍に達することになり、PCR検査の陽性者数の数倍にあたる人々が感染に気づかないまま回復したことになる。
つまり、これらが示すのは、日本などアジア地域での新型コロナウイルスによる死亡率が、欧米地域などと比べて2桁少ないということだ。この点には関心が寄せられており、米国カリフォルニア州のラホヤ免疫学研究所が新型コロナウイルス流行前(2015年から2018年)に採取した健康な人の血液を調べたところ、半数の人の血液から新型コロナウイルスを退治できる「T細胞」が検出された(6月19日付日経バイオテク記事より)。
現在、治療薬やワクチンの開発などで注目されているのはB細胞のほうであるが、今回の研究結果はこれまで光が当たっていなかったT細胞に関するものだ。新型コロナウイルスが出現する前から、SARSやMERSのほかに4種類のコロナウイルス(風邪の一種)が見つかっているが、半数の人たちのT細胞は、過去のコロナウイルスに感染した経験を生かして新型コロナウイルスに対応できることがわかったのである。
人間の免疫機構はさまざまな免疫細胞が連携して働いている。大括りにすれば、自然免疫(生まれながらに身体に備わった免疫機能)と獲得免疫(病原体に感染することによって後天的に得られる免疫機能)に分かれるが、新型コロナウイルスに対処できるのは獲得免疫のほうである。獲得免疫も2種類に分かれ、「抗体という武器をつくる」B細胞と「ウイルスなどの異物を撃退する」T細胞がある。
どのような人が重症化しやすいかもわかってきている。T細胞には、司令塔の役割を果たすヘルパーT細胞とウイルスを直接攻撃するキラーT細胞がある。ヘルパーT細胞が攻撃命令を出すとキラーT細胞は猛然とウイルスに襲いかかるが、しばしば暴走することがある。そうなると本来守るべき自らの細胞をも傷つけてしまい、とても危険なことが起きる(サイトカインストーム)。
出典
2020年6月25日 Business Journal新規ウィンドウが開きますに掲載
https://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/fuji-kazuhiko/169.html
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日 沼 頼 夫(京都大名誉教授、1998年論文「ウ イル ス か ら 日本 人 の起 源 を探 る」部分)
話 は1981年 に遡 る。 京 都 大 学 ウイ ル ス研 究 所の 私 た ち は,ひ とつ の新 しい ヒ ト ・レ トロ ウ イル スを 発 見 した 。 人 間 の 白 血 病 の一 種,成 人T細 胞 白血 病(Adult T-cellLeukemia,ATL)の 病 因 ウ イル ス で あ る。
こ の ウイルス は母 か らその 子 へ 母 乳 を通 して 感 染 す る。つ ま り このATLウ イ ル ス に感 染 し て い る 人一 これ をキ ャ リア と呼ぶ が女性 で,こ れで母 にな ると,こ の乳汁 の中に ウイルス感染 したTリ ンパ球T細 胞 が どっさ りあ るので,こ れ を飲 んだ子 どもが これ に感染 す る とい うわ けで ある。
英インペリアル・カレッジ・ロンドンが10日発表した研究で、一般的な風邪と闘うコロナウイルスT細胞が多いと、新型コロナウイルス感染症を防御できる可能性があることが明らかになった。
T細胞とは、血液中を流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種です。 わ たしたちのからだを異物から守る機構(免疫応答)の司令塔ともいうべき大切 な細胞集団で、胸腺(thymus)でつくられるため、頭文字を取って T 細胞と名 付けられた。
この研究を執筆したリア・クンドゥー博士は「風邪のようなコロナウイルスに感染した時に体内で作られる既存のT細胞のレベルが高いと、新型コロナを防御できることが分かった」と述べた。
現行の新型コロナワクチンは、スパイクタンパク質を標的としている。ところが、スパイクタンパク質は定期的に変異し、オミクロン株のような変異株を生み出し、症状を示す感染に対するワクチンの効果を低下させる。
研究の共同執筆者のアジット・ラルバニ教授は「対照的に、今回同定した防御T細胞が標的とする内部タンパク質は変異が非常に少ない」と指摘し、「その結果、これらのタンパク質はオミクロン株を含むさまざまなSARS─CoV─2の変異株の間で高度に保存されている。したがって、保存された内部タンパク質を含む新しいワクチンは、現在および将来のSARS─CoV─2変異株から保護するための広範なT細胞応答を誘導できるだろう」と説明した。
* SARS-CoV-2は新型コロナウイルスの略称で、その疾病の名称が、coronavirus disease 2019(略称: COVID-19) である。
学術誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された今回の研究の執筆者らは、T細胞が標的とする新型コロナ(SARS─CoV─2)の内部タンパク質は、ワクチンメーカーにとって別の標的となる可能性があると指摘している。
新型コロナに対する免疫は複雑で、ワクチン接種後6カ月で抗体レベルが低下するという証拠がある一方、T細胞の保護を提供する上で重要な役割を果たしていると考えられている。第2世代の新型コロナワクチンへのアプローチにつながる可能性がある。
今回の研究は2020年9月に始まり、新型コロナの陽性反応者の家庭内接触者52人を対象に、過去の風邪によって生じた交差反応性T細胞のレベルを感染直後に調査し、新型コロナを発症するかどうかを調べた。発症しなかった26人は、発症者に比べてT細胞のレベルが優位に高いことが分かった。インペリアル・カレッジは、T細胞による保護がどのくらい続くかについては言及していない。
また、ドイツにあるシャリテ・ベルリン医科大学の免疫学者アンドレアス・ティール氏らはさらに、COVID-19にかかったことがない人でも、SARS-CoV-2に対抗する免疫を獲得している可能性があることを突き止めた。研究チームがSARS-CoV-2に感染した経験がない68人の血液サンプルを分析した結果、34%の人がSARS-CoV-2に反応するヘルパーT細胞を持っていることが分かったためだ。
この実験に用いられた血液サンプルは、COVID-19が発見される前の2015〜2018年に採取されたものだったことから、研究チームは「SARS-CoV-2に対する免疫反応は、過去に普通の風邪を引き起こす4種のヒトコロナウイルスに感染したことで獲得されたものである可能性が高い」と結論しています。
出典:ロンドンロイター(2022年1月11日)
2022年01月24日
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