感染を防ぐためには、外出の際にマスクを着用し、手洗いを励行、また不要不急の外出を自制して密を避けることが肝要だ。韓国は政府がマスク未着用者に罰金を科していることもあり、97.3%が外出時にマスクを着用していた(韓国疾病管理庁「2020年地域社会の感染症予防行動実態調査」、21年10月14日発表)。
ワクチンについても見てみよう。韓国政府は21年5月からアストラゼネカ製ワクチン接種を開始し、6月からはファイザーとモデルナのワクチン接種を開始した。まずは、高齢者と接客業従事者から接種を始め、徐々に対象年齢を引き下げて接種対象を広げた。だが、ワクチン接種を促す一方、ワクチンの効果に関する情報は発信していない。
今年5月、英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)とイングランド公衆衛生庁(PHE)が英国内のデータを分析して、ファイザー製ワクチンを2回接種したときの発症予防効果は85〜90%、アストラゼネカ製も同じく85〜90%と推計した。感染予防効果は、ファイザー製は70〜90%と推計した一方、アストラゼネカ製はデータ不足で確認できなかったと発表した。
感染症のワクチンは感染時の発症や発症を伴う感染を抑えるものであり、接種の有無に関わらず、リスクが高い生活を送れば感染する可能性は高くなる。
韓国政府は12月13日、防疫パスを導入した。ワクチンを2回以上接種した人などに発行し、未接種者や1回しか接種を受けていない人と区別する制度だ。ソウル市では12月第2週(5日〜11日)に感染が確認された1万1200人あまりのうち、3分の2に相当する64.9%がワクチン接種を完了したブレイクスルー感染者だった。また同期間に死亡した感染者147人中40.8%に相当する60人がワクチン接種完了者だった。
mRNAワクチンは接種後、5〜6か月で効果が低下するといわれているが、韓国国立保健研究院の分析で、免疫力が弱い高齢者が接種したアストラゼネカ製ワクチンは、接種後3か月で効果が半減していた。接種完了者のおよそ半分に相当する2100万人余りが2回目の接種を終えてから3か月以上経っている。
韓国政府は、3回目のブースター接種を呼びかけるが、ブースター接種も感染や発症リスクを軽減するものでしかない。
与党「共に民主党」から大統領選に出馬する李在明(イ・ジェミョン)候補は「ソーシャルディスタンス規制を強化すべき」だと政府を批判し、韓国メディアは医療現場の状況やワクチン効果の検証など周到な対策を行わないままウィズコロナを宣言した韓国政府を批判している。だが、現在の感染者数を減少させるには、人々の認識や行動もまた、変化を求められているのではないだろうか。
韓国政府は21年11月1日、段階的な日常生活の回復を目指すウィズコロナを宣言して、規制を緩和した。私的な集まりの人数制限を首都圏は6人から10人へ、首都圏以外は8人から12人へと緩和し、行事や集会の人数制限も緩和。飲食店やカフェ、映画館などの営業時間制限を解除した。
ウィズコロナ後、最初の週末となった6日には人数制限の緩和に伴い、ソウルの都心で20余りの団体をはじめ、各地でさまざまなデモが行われた。また14日には3000人規模のK-POPコンサートが開催された。
韓国の新型コロナウイルス感染症拡大の発端となったのは教会だ。2020年2月、キリスト教系の新興宗教団体「新天地イエス教会」の信者から感染が広がったのである。韓国政府は教会の集まりを規制し、3月22日から4月5日までの2週間を「社会的距離の確保を強化する期間」と定め、国民に外出自粛を要請した。
ドライブスルー診療所を設置して検査を行うなど対策を強化し、「社会的距離の確保」を5月5日まで延長した。新規感染者が10人以下となると、文在寅大統領は「K-防疫」の素晴らしさを国内外に自慢し始めた。ところが、その途端、梨泰院のクラブから大量の感染者が発生して、再び規制は強化された。
政府は以降、感染者が増加する都度、規制を強化してきたが、コロナワクチンの接種率が30%に迫った21年6月、規制を緩和する方針を発表。その直後から再び感染者が急増して、9月末には3000人を記録した。
10月に入ると、新規感染者が増えない代わりに減りもしない状況となり、コロナワクチンの接種完了率が80%に迫った11月1日、ウィズコロナを宣言。規制を緩和して、大量感染を導いた。
出典:文春オンライン(12/25) 韓国内の感染者が増える一方、日本のコロナ感染者が激減した理由について、韓国内ではさまざまな憶測がなされている。12月1日時点のコロナワクチン接種完了率は、韓国の79.5%に対して日本は77.5%と大きく違わないが、新規感染者は韓国の5120人に対し、日本は81人だった。慶北大学医学部予防医学科のイ・ドクヒ教授は、「(日本は)自然感染を防がなかったから」と推察した。国が防疫の名目で無症状や軽症で終わる自然感染を止めなかったことから免疫が形成されたという主張である。
2021年12月26日
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