我孫子に大手工作機械メーカーの本社をもつ日立精機があったが、バブル崩壊の経営不振から森精機製作所が営業譲渡の契約締結され、2004年9月にグループ各社と共に破産宣告。その森精機のその後を辿っていくと日独の工作機械大手が統合してたDMG森精機にも繋がっていた。ドイツの西部の都市・ビーレフェルトにドイツ側の拠点がある。
さて、2018年11月末、ドイツ本社が主催するコンサートを開く前日にちょっとした事件が起きた。プログラムには、DMG森精機と親交のあったイタリア出身のピアニスト、アドルフォ・バラビーノさんの名前がしるされ、地元のビーレフェルト・フィルハーモニーが加わり、築100年近いホールで取引先や社員、地域の住民を迎えてのコンサートを開くとなっていた。ところが、事もあろうにコンサート前日にピアニストが階段から落ちて手を骨折した。ドイツ本社にバラビーノさんから演奏できませんとの連絡が入った。主役のピアニストを欠いては、演奏会が成立しない。
社員たちが頭を抱えていたとき、音楽好きの1人が、ふと反田恭平さんのホームページの問い合わせフォームに出演依頼を送った。「あす、ドイツで演奏できませんか?」とはいえ、明日に演奏してくれというのは時間がなさすぎるダメモトだった。ところが、ポーランドにいた反田恭平さんは、突然の申し入れを受けて、演奏会場に立ってくれた。
その縁があって、2021年に、反田さんがショパン国際ピアノコンクールで2位に輝いた際には、名古屋に本拠点を置く工作機械大手の「DMG森精機」が反田さんの夢に共感してタッグを組むことになった。音楽事務所を作りレーベルも立ち上げ、株式会社のオーケストラを立ち上げた。技術を武器に世界で活躍するメーカーとピアニストとの出合いは、ピンチが生んだ絶妙のコラボレーションとなった。今後、反田さんは指揮者としての活動も目指すため、ウィーンで学び「クラシックの良さを子どもたちに伝える学校も考えています。今はその実現を逆算してただ歩んでいるのです」という。
コンクールはそれこそ何万とありますが、ショパン国際ピアノコンクールは世界最古で、トップに君臨しています。16歳から30歳までの年齢制限があり、年に一度の開催、過去の優勝者にはアルゲリッチやブーニンらがいる。
「だから、27歳の僕にとって本当にラストチャンスだったんです」と。ポーランドに住み、5年かけて準備をした。
第18回ショパンコンクールで第2位を受賞、1970年の内田光子さんの2位以来、51年ぶりに日本人歴代最高位を達成した。クラシック界の若きスターが凱旋生演奏を披露する夕べだが、昨年の予定が今年に延期されていた。ファイナリストになるまでには、今回は史上最多の53カ国502人のエントリーの中から、熾烈な競争を経た87人(日本は14人)が予備予選を通過した。「技術面は一次予選で選別され、二次では芸術面、三次では将来性を審査。」と熾烈なコンテストを勝ち抜いた反田さん、小林さんら12人がファイナルに進み、「そこまできたらもうお祭り騒ぎ(笑)」だという。
「コンクールに赤本はありません。受けるならトップを目指そう。過去2回の参加者、800人の挑んだ曲を調べた。どれがいいか辺りをつけるため、A4の紙に『正』の字を書き、その中から選んだ曲をコンサートで弾き、3年かけてフィーリングが合うかを試しました。ファイナルでは、世界一好きなピアノ協奏曲第1番を弾いた。「幸せな40分間でした」との弁。
https://www.youtube.com/watch?v=3bMF5wS7Mr4
2021年11月27日
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