都が東京大会開催で負担する費用は1兆4000億円を超える見通しで、都がこれまでに組んだ新型コロナ対策の予算のうち、都の負担分に匹敵する(※)。新型コロナ対策費は、感染状況次第ではさらに増える可能性があり、都の財政を考えれば、東京大会に使うことができる予算には限界がある。大会開催の是非などをめぐって、論戦が見込まれる。
※注 新型コロナ対策予算=総額2兆8000億円余、国と都がおおむね半分ずつ負担(都による 2月18日現在)
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今回の五輪大会予算の大部分はすでに執行されている。
2020年末に発表された予算計画第5版によれば、開催費用は総額1兆6440億円とされて、その半分以上が東京周辺の恒久施設への公共投資で占められたほか、エネルギー・通信インフラの整備など準備期間の支出が大半を占める。競技場建設なんとか開催にこぎつけたことで、期待した直接的な経済効果はおおむね実現したことになる。
中止であれば、ケータリングや輸送、エネルギーインフラなどの大会運営コストや、選手村をマンションに改修する費用は削減できる。が、何よりも収入がなくなってしまう。また、主催者側は国内スポンサー企業への協賛金の一部返金が33億ドル(約3600億円)、IOC拠出金の払い戻しが13億ドル(約1400億円)など、莫大な額を負担することになる。赤字分は、都や国が税金から補塡することになる。
政府はすでに断腸の思いで海外一般客の受け入れを諦め、予定した900億円と見積もられた観戦チケットの売り上げの大半を失している。そのため、今の段階では国内の観客についてはまだ決定が下されていない。五輪組織委員会の収入は、国際オリンピック委員会(IOC)負担金とスポンサー収入、そしてチケット売り上げの3本柱からなる。
本来、都が平成29年に公表した報告書では、コロナ禍前は東京五輪を契機に訪日外国人客が一層増加し、東京都が国際観光都市として飛躍するイメージが描かれていた。観光需要の拡大や国際ビジネス拠点の形成など、12兆2397億円のレガシー効果を見込んだが、それら取らぬ狸である。
参照:AFP(5/26)
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実のところ、東京の総経費は2019年末時点で1兆3500億円(115憶ユーロ)の計上になっている。それはコロナ禍前、復興五輪として開催へ向けての盛り上がりがあった東京大会に向けてはスポンサーを募りやすかった。
次の開催国・フランスの場合を考えると、今年になりコロナウィルスの感染がパリのこのサンドニ地域にクラスターとして集中的に発生,都市封鎖と厳しいフィジカル・ディスタンス政策によって交通量は本来の30%の水準にとどまり,会場施設の建設工事は大きく遅延している。
当初の仏五輪開催予算案は民間収入(スポンサー,チケット,国際五輪委員会寄付)による38億ユーロで,その内訳はスポンサー収入10〜12億ユーロ,チケット収入10億ユーロ,IOC予算の14億ユーロ、これに31憶ユーロの建設費等の五輪投資予算が加わえていたが,民間スポンサー予定社のなかにはコロナ危機で損害を被っている企業には、現在、資金協力の要請をするわけにはいかなくなっている。多くのフランス企業は協力する姿勢は見せているのだが、どうして12億ユーロを集めるのは非常に困難を伴う予想である。
要するに、フランスと日本の五輪開催国としての被害の差は、フランスは大会前に民間の恊力予算が縮小気味となってきたことと、日本の場合は無観客開催でのチケット収入が激減、宿泊、飲食、インバウンドによる経済効果の当てが大きく外れたということになる。
今年1月の時点で、英国の名選手のマシュー・ピンセント氏(50、五輪ボート競技で4連覇)も、東京五輪を24年へ再延期すべきとの持論を自身のツイッターで展開した。英国で報道された新型コロナウイルスの変異種による世界的な感染拡大が念頭にあるとみられ、「東京には24年まで延期できる選択肢を与え、パリは28年、ロサンゼルスは32年と開催時期をずらすべき。アスリートは五輪を失うことになるが、感染を広げないことが優先だ。」と主張していた。
1992年までは夏季オリンピックと同年に冬季オリンピックも開催していたのであり、次の1994年リレハンメル冬季五輪から夏季五輪から二年後に開かれ、その後、夏季と冬季は2年ずれての開催となって現在に至っていた。2年順延を想定すると、日本もコロナ終息で経済の持ち直しも期待できそうではあるし、パリでは企業からの資金調達も余裕がでてくると考えられ、パリを25か26年にスライド、ロサンゼルスで28年に帳尻合わせをしてはどうかとの案も考えられるのではないか。
参照:スポニチ(1/13) 1つ目「2022年にはすでに北京五輪があります。23年の可能性もあるわけですけれども。24年にはパリ大会があります。そういう間で、本当に時間が取れるのかどうか。ただ単に時間を取るだけじゃなく、関係者もそれに向かって準備をする、何年もかけて準備をしている。1年違いの五輪っていうのは今までやったことありません。今回が初めてなんですね。そう簡単にできるものではないんじゃないかと」
2つ目の理由として、選手のモチベーションを挙げた。
「アスリートの方に意見を聞くと、今回の1年延期でも、モチベーションをどうやって維持するか?と、本当に真剣な課題として向き合っておられると私は理解しています。それを1年、2年と先送りして、何度もやっていけるかというと、これも現実的ではないと思います」
最後に挙げた理由は選手村の確保だった。「何よりも非常に技術的なことだが」と前置きした武藤事務総長はこう語った。
「選手村が確保できない限り五輪はできません。選手村はご承知の通り特別な場所を用意しました。民間の開発計画として、当初はきちっと約束して使わせていただき、1年延期のときには真っ先にご相談して何とか対応していただきました。また、さらに延期して民間の契約に勝手にこちらの都合をぶつけるというのは非常に困難だと思います。選手村が今の場所に確保できない、恐らく他の場所を確保することができない、従って非常に大きな技術的な理由によって無理ではないかと私個人は考えている」と、武藤事務局長は説明した。
40年前の1980年モスクワ五輪はソ連(当時)のアフガニスタン侵攻に抗議し、米国や日本などの西側諸国がボイコットしたことで知られる。東西冷戦下、政治に翻弄されて「幻の代表」となった日本選手は今も葛藤を抱え、スポーツ界の苦い記憶として残る。当時、柔道男子代表だった日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長をはじめ、陸上男子マラソンの瀬古利彦氏やレスリング男子の高田裕司氏、バレーボール女子の代表だった三屋裕子さんらも理不尽に夢を絶たれた選手として悲運をかった。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長も当時西ドイツでフェンシング代表だったが、幻の代表を経験している。
さらに40年さかのぼる1940年の開催都市は夏季大会が東京、冬季大会は札幌が予定されていたが、日中戦争の拡大でまさかの返上に追い込まれ、これは「幻の東京オリンピック」とも呼ばれ、代替地を検討したIOCも最終的に開催を断念した経緯がある。圧倒的に不利な状況の中で「柔道の父」として知られる嘉納治五郎氏が日本の初代IOC委員として世界を駆け回り、不穏な状況だからこそ、平和のスポーツ祭典の開催がひつようだと説得していた。しかしながら、嘉納氏は、IOC総会から帰国する貨客船「氷川丸」の船内で肺炎のため亡くなり、軍部の圧力もあって大会開催を返上した。
東京開催は二度目だが、二度ともすんなりとは開催できない事情となったのは皮肉であるが、第一回東京五輪は開催国としての栄誉と自信となり、その後の国際社会での躍進ぶりもめざましかった。振り返って、東洋初のオリンピックを呼びかけて嘉納氏の心持ちを考えれば、これまでに開催地となっていないアフリカでも新たなチャンスをもたらすよう、経費拡大型のオリンピックではなく、分散、縮小型での開催ができるオリンピックにしていく音頭を取る事なのではないか。
オリンピック開催までにオリンピック選手はワクチン接種を優先して受けられることになっている。
高齢者3600万人の接種を終えるなら理想だが、1日あたり100万人の接種を前提としなければならず、60〜80万人/日が良いところなのだろう。
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4年サイクルで発表されるIOCの収入は、ソチ冬季五輪とリオデジャネイロ五輪が行われた2013〜16年の収入は57億ドル(約6200億円)に上った。また各国内オリンピック委員会(NOC)や各競技の国際連盟はIOCから分配金を受け取っていて、コロナ流行ですでに厳しい財政状況にあるため、東京大会が中止になると、スポーツ界全体が危機にさらされることになる。
その収入の4分の3は放映権によるもので、関係者の間では、東京五輪でIOCは少なくとも15億ドル(約1600億円)を受け取ると予想されている。残りの収入は世界のスポンサーからのもので、中止の場合は各パートナーと返金額について綿密な交渉が必要となる。
10億ドル(約1100億円)以上の蓄えがあるIOCが分配金とせずに手元に残す収入は10%のみだが、東京五輪による収入を奪われれば大打撃を受けることは間違いない。しかも、中止になった場合、放映権料は払い戻さなければならない。
出典:AFP(5/26)
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パリ五輪組織委は昨年、複数の競技会場の建設を取りやめるなど、パリ大会はコロナの影響でスポンサーが全く集まっていない。2024年は100年ぶり開催(前回は1924年)という記念大会だ。国際オリンピック委員会(IOC)と東京五輪組織委員会は再延期はないとの見解を示している。そうなると国民体育大会でもないのに無観客の“鎖国”状態で開催することになりそうだ。今夏に開催できない状況に追い込まれれば、五輪延期ではなく中止の公算が大きくなるが、それは所々の事情で金欠になってしまい、それは避けなければならないという状況だ。
2021年05月27日
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