
松戸駅からバスで20分程のところに3万坪の敷地に充実した施設が並ぶ。都内に近いこともあり、千葉県内ばかりでなく、都内からも通学してくる学校であり、本年から中高共に入学者が多くあり、男子がそのうちの4割を占める結果になったと学園側から報告があった。
記念式典の開催された講堂は1300人は収容する大きな会場であって、他に2つの体育館などの施設がある。帰りには、中学生と思わしきランドセル形状のカバンを背負った男子生徒たちが楽しそうに友達と談笑して帰る姿を見かけた。土曜日も通学する週6日制であった。オンライン授業にも早くから取り組んできていたので、授業を休校することなく対応したという。コロナ禍において私立、公立の差が多く出た時代となったようであるのを改めて感じた・
藤原和博*『本を読む人だけが手にするもの』日本実業出版社
成長社会から成熟社会への移行は、「ジグソーパズル型思考」から「レゴ型思考」への転換だ。
成長社会ではひたすら「情報処理力」が求められたのに成熟社会には必須のスキルがだんだん「情報編集力」に移行するとも表現している。
情報処理力と情報編集力の違いは何か?
情報処理力とは、いち早く正解を導き出す力のことを指す。正解を早く正確に当てる力だ。
これはジグソーパズルを早くやり遂げる力にたとえられる。ある1つのピースを置く場所=正解は、たった1つしかない。
それをいかに早く見つけるかという、「アタマの回転の速さ」が求められる世界である。
情報処理力は、テストの採点で明確に点数がつけられるため「見える学力」と呼ばれ、日本の教育は情報処理力を鍛えるのが中心の情報処理力とは「アタマの回転の速さ」だった。
これに対して、21世紀型の成熟社会で求められるのが情報編集力である。
情報編集力とは、身につけた知識や技術を組み合わせて“納得解”を導き出す力だ。
正解をただ当てるのではなく、納得できる解を自らつくり出すところがミソ。
納得解を導き出す力というのは、平面でジグソーパズルでピースを置く場所を探すのではなく、立体レゴブロックを組み立てるイメージだ。
つまり、正解は1つではなく、組み合わせ方は無数にある。
しかも大きな違いは、自分なりに世界観をつくり出せるのかどうかが求められる。情報編集力は「アタマの柔らかさ」といえる。
しかし、明確に点数がつけられる情報処理力とは異なり、情報編集力はテストでの採点が難しい。
したがって「見えない学力」とも呼ばれる。
情報編集力を駆使し、イマジネーションを働かせる力が、現実社会において、子育てや教育問題といった身近なことを考えたり、ビジネスにおいて新商品や新サービスのアイデアを出したり、顧客からのクレームに対応したりするときにも欠かすことができない力となる。
AIが情報処理力で人間を上回るような成熟社会の進展で、人生を豊かに選択肢の幅を広げ生きるには、柔軟でクリエイティブな発想をベースにした情報編集力が欠かせない。
読書と「情報収集力」について、本書にはこう書いてある。
『本の著者は、滅多にできない経験をしたり、深く研究したり、テーマをずっと追いかけたりして、その道のエキスパートになった人である。
そのエキスパートが考え抜いて表現した1冊の本は、著者の脳のかけらにアクセスするための端末だ。
しかも、本は持ち運び自由で、いつでもどこでも読める端末でもある。スピードも読み手の自由だ。
ざっと眺めることもできれば、じっくり思索を深めながら読むこともできる。
行きつ戻りつしながら、途中から目を通すこともできる。
読者の脳内にもともとあった情報と、新たにインプットした本の情報が混じり合い、脳内で情報が編集されることになる。
つまり、著者の世界観と読者の世界観が化学変化を起こし、再編集されて新しい世界観が生まれるのだ。
読書が世界に対する見方を広げ、味方を増やすことにもつながるというのは、そういうわけだ。』
「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」(ジェームス・ウェブ・ヤング)
アイデアというと、今までになかった発想というふうに我々は考えてしまう。
しかし、今まであったモノの新しい組み合わせなのだと思ったら少しは気が楽になる。
するとアイデアを生み出すために大事になってくるのは、既存のモノを多く知っている方が有利だということだ。
つまり、多くの出来事や情報を知るには、読書こそが最も効率的な方法だ、ということになる。
「組み合わせ力」とは、すなわち「情報編集力」のこと。
年間、ある一定量の読書を続けると、あるとき今まで得た情報が急につながり出すときがくる。
桶にたまった水が、あるときからあふれ出す、というような状態だ。
* 藤原はリクルート在籍中、年俸契約の客員社員「フェロー」制度を創設したほか、「たった一人からの教育改革」を旗印に自治体の教育委員会の教育改革担当を経て、東京都初の中学校の民間人校長として杉並区立和田中学校校長。同校では、生徒や大人も参加する形で自営業者やホームレスなど様々な立場の社会人の講義を聞くなどして世の中について学習する「よのなか科」の創設や、学習塾と連携した有料の課外授業「夜スペ」の実施に携わった。