震災の前年、東北福祉大学に進学、同年のアジアアマチュア選手権で日本人として初の優勝を遂げ、翌年のマスターズ出場権を獲得。翌週の日本オープンでも並み居るプロゴルファーを従え3位に入りローアマチュアを獲得した。年に4度のメジャー大会での勝利をずっと目標に掲げ、19歳から33度目のメジャー挑戦で1勝目を挙げた。震災の年から3月で10年目、東北の被災地の多くの人たちにも最大級のエールとなったに違いない。スポーツでの一生懸命は、何よりも爽やかな感涙、感動がある。
ゴルフメジャー大会覇者はオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブの名誉会員となるため、今後も大会のレギュラーとして出場ができる。日本は米国に次いで、コースの数では世界2位というゴルフ人気であるが、松山が優勝を重ねることで、若い世代も育つと期待される。
これまでの日本選手のメジャー大会での活躍は、全米オープンで1980年、青木功(現日本ゴルフツアー機構会長)が長らく日本勢メジャー最高成績となる2位になった。その接戦は、歴代最多のメジャー通算18勝を挙げた帝王とも言われたジャック・ニクラウス(米国)と4日間、一騎打ちの名勝負を繰り広げ、「バルタスロールの死闘」は語り草になった。今回のマスターズ最終日の前に、ツイッターで「青木とはメジャー大会で何度もプレーした。彼は今でもヒーローだ」とつぶやいた。ニクラウスは、松山について、世界のゴルフ会を牽引する逸材になるだろうと太鼓判で応援してきた。
松山は6歳の時、地元愛媛のゴルフ場で練習していた青木と偶然会ったという。
初めて接したプロゴルファーは、世界タイトルを持つ人だった。「僕の背丈は青木さんの胸の高さくらいで、大きかった。子供ながらもオーラを感じたのを覚えている」と松山は語る。その時に、青木から手招きされて、近くで練習を見せてもらったのは、今日に繋がったかもしれない。
青木功選手を生んだ我孫子の地より、おめでとうございます!!!
🌸日本人選手の海外メジャー制覇🌸
☆レギュラー女子 1977年全米女子プロ 樋口久子
〇2019年AIG全英女子オープン 渋野日向子
★レギュラー男子 2021年マスターズ 松山英樹
*メジャー大会優勝のアジア人選手は梁容銀(韓国)が2009年の全米プロゴルフ選手権でアジア系として初制覇した。
*オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブで行われる大会は、マスターズの開催地の中でも格式が高い「ゴルフの祭典」として知られている。他の3つのゴルフメジャー大会が毎年会場を変えて行われるのに対し、マスターズだけは毎年同じため、他のメジャー大会とは異なる趣を持っている。ジョージア州のオーガスタナショナルGCは、球聖B.ジョーンズと設計家A.マッケンジーによる傑作、すべてのゴルファーの夢舞台と言っていい。最高のプレーヤが頭脳的戦略と技術を競い合えるように設計された大スケール(7475ヤード、パー72)のゴルフコースで、グリーンの難しさが特徴である。大小様々な傾斜が重なり合い、ボールが転がりやすくパットの技術力が問われる。通称アーメンコーナーと呼ばれる11番から13番ホールは通過するのが難しく、さらには隣に池がある。下記に松山英樹による、コース解説があるので、URLをクリックしてご覧あれ。
https://news.golfdigest.co.jp/tournament/pga/7099/course/h_01.html
ゴルフスイングのメカニズムを科学的に解き明かすことに取り組んでいる「WEB講座・ゴルフスイング物理学」の小澤康祐氏に、松山のスイングの“すごさ”を説明してもらうと、次のようなことだった。
https://youtu.be/PsZFVeGKdj0
松山選手ほど『止まって見える』プロは他にはあまり見当たりません。いったん動きを止めて、そこから改めて動き出すためには、筋力の意図的な出力が必要で、繊細なコントロールが求められる切り返しの局面で、クラブの動きに乱れが出る可能性が高まるためです。多くのプロたちは、クラブヘッドがまだバックスイング方向に動いているタイミングで、ダウンスイングの体の動きを始めています。バックスイング方向にクラブはまだ動いているため、体がその重さに引っ張られて伸ばされることで、筋肉がぎゅっと勢いよく縮む「伸張反射」という仕組みが働き、自然にクラブがダウンスイングへと折り返されることになります。このほうが「自分で戻そう」という操作が必要ないため、クラブの動きが安定するうえ、より大きな力を出すこともできるのです。一瞬止まったかと見えるタイミングの直後、左モモに乗っていくように沈み込む動きと同時に腕は脱力し、ヘッドが少し低い位置に動いてきます。それによって下半身と体幹から腕へとつながる適切な部分の筋肉に伸張反射が起きて、スムーズなダウンスイング〜インパクトへとつながっているのです。
ここからは少し専門的な話をしてみます。「上から入るダウンスイング」から「横から入る」最近のトッププロたちが共通して行なっている「シャローな(より低い位置からヘッドがボールへ向かう)」ダウンスイング」へと、ここ数年の松山プロは修正を試みてきたと見る人が多いようです。低い位置からヘッドがボールへ向かうスイングには利点が多くあるためです。そのために、レイドオフと言われる「シャフトがターゲットラインよりも左を向く」状態を追求してきたように見る方がいるかもしれません。しかし、切り返す前のシャフトをレイドオフにすると、実はダウンスイングのときにヘッドが手の軌道より高い位置に上がってきてしまい、結局スティープと呼ばれる「上から入るダウンスイング」になりやすくなるメカニズムがはたらきます。以前の、トップで手の位置が高かった状態では、さらにスティープなダウンスイングになりすぎていたと考えられます。一瞬の脱力によって沈み込み、伸張反射を使う体幹の動きと、レイドオフの状態からシャローなクラブのポジションを両立させるためにどうしたのか、というと、トップでの手の位置を以前より少し低い位置にし、より水平な円軌道を作れるように調整したのだと見えます。この調整によって、長いクラブでもシャローなポジションからインパクトすることができるようになり、正確性を保ちながら、飛距離を伸ばすことにつながり、今週の偉業につながった、と分析しています。
今回の大会に話題は戻り「ダスティン・ジョンソンが予選落ちしてしまった。タイガー・ウッズは事故で出れなかった。ジョーダン・スピース、ジャスティン・ローズが戦線で力出せずに、最終日になったのだが、それでも松山の重圧、緊張は最後まであったのがありありだった。