日本ではこれまで「スクラップアンドビルド」がまことしやかに唱えられていて、建物を長く大事にしていけば住めるという概念がなかった。その頃の日本人は、家で過ごす人生の楽しみ方を知らないで、家という建物がライフと結びついって本当の暮らしになってきます。
人口減少時代に入った現在の日本では、かつてのような住宅不足は払拭されました。そのため政策面でも「量より質」へと転換しました。日本でも過度の「新築信仰」が消え去るように法整備をすれば、イギリス・アメリカ型の住宅ストック市場が確立されることになるでしょう。アメリカのようにインスペクションが普及すれば、中古住宅の査定がより明確になり、中古不動産市場の成熟化につながることでしょう。イギリスでは築年数の古いものほど価値が高くなる、といった日本とは全く逆の現象が起こっています。
現在の消費税はあらゆる商品・サービスに一律の税率が掛かりますが、他の国では生活必需品については非課税であることが一般的です。特にEU諸国では既存住宅の取得には消費税が発生しない、というのが一般的です。日本でも中古住宅取得やリフォームの際には非課税にする、といった議論が起こっても不思議ではありません。今後は3世代に渡って住めるような、より優れた構造を持つ「長期優良住宅」「ロングライフ住宅」が主流になると予想されます。
新築住宅が主流なのは先進国では日本だけ。それは「25年で上モノの価値はゼロになる」という不動産業界のかつての常識が示すように、資産価値としては重きが置かれず、「古い物件は更地にした方が売れる」という結果を生み出しました。これまで長らく「建てては壊し、壊しては建てる」という発想が当たり前となっていました。そのため、中古住宅の建物が資産として認められにくく、ある程度の年数が経った一戸建ては土地代で評価され、マンションにしても築年数・立地・面積で単純に価値が決められてしまいがちです。
ところが欧米の住宅を見ると、日本の事情とは対照的なことがわかります。少し前のデータによると、日本の住宅の平均寿命は約30年。これに対して、アメリカの場合は同約44年、イギリスにいたっては同約75年と、住宅の寿命に驚くほど大きな差があります。アメリカでは住宅全体における中古住宅の割合が8割近く、イギリスでは9割近くを占めるのに対して、日本ではわずか3割ほど。これには「新品のほうが良い」と考える日本人の新築信仰のようなものの影響もあるでしょう。アメリカの住宅市場では、新築物件の流通数は少なく、中古物件中心で市場が形成されています。具体的な数字で見ると、2017年時点で住宅流通量の82%が中古住宅で、新築住宅は18%に過ぎません。
不動産セールスにおいては、日本で言う「中古住宅」はアメリカでは“used home”ではなく“existing-home”と使う。そしてユン氏は、マーケットを説明する際、中古物件セールスを第一にとりあげている。それだけアメリカでは中古物件が流通しているわけだが、しかし、そのためには、家の耐久年数が長いこと、良質な建材を使いしっかりした構造であること、そして住む人がよく手入れをする、
このため中古住宅の流通量は低調なものになり、査定の方法論や取引制度の発達が遅れるなど、市場としては未成熟なまま現在に至ってしまいました。欧米の住宅事情を見ていくと、今後は日本でも中古住宅が不動産市場のメインとなっていきそうです。
「木造文化」を築き上げた日本では「住宅はいつか朽ち果てるものだから、適宜建て直すもの」という意識が根強いのに対して、「石造文化」の欧米では「住宅は永続的に残るものだから、使い続けて改良していくもの」と考える人が多いようです。この違いが日本では新築重視、欧米では中古重視の傾向につながっているのでしょう。
住宅への意識の違いは中古住宅の査定にも強く影響しており、例えば日本では築年数が経てば経つほど価値が下がるのに対して、欧米では築年数にあまり重きを置いていません。アメリカでは、取引の諸制度がしっかりと整備されています。中古住宅セールスには不動産エージェント、建物の状態を調査する「インスペクター(物件調査士)」、「アプレイザー価格の査定をする専(物件査定士)」、金融関係者など多くの専門家達が関わるが、とりわけホームインスペクターによる中古住宅の検査は絶対に欠かせない。家を売る際にはその家についての詳細を正直に書き込んで役所に提出せねばならないが、家を買う側はさらにインスペクターを雇って検査する(銀行がインスペクターを送る時もある)。 例えば冬が長い中西部では暖房システムは必須で、あとで故障したり交換するとなると大変な金額がかかる。ボイラーとかヒーターとかいうファーネス(furnace) システムで暖かい空気や蒸気を家中に送り込むセントラルヒーティングが通常備え付けられているが、“ファーネスの手入れがよくしてある”とか、“新品に取りかえてあるからあと20年は大丈夫だろう”などと記述される。暖房同様に冷房設備、屋根、土台、上水、下水、電気系統なども検査され、その結果で中古住宅の概要がつかめるというわけだ。 各州の認可・免許を必要とする専門家制度は、日本でも大いに見習うべきものと言えます。そして売る側、買う側の不動産エージェントを通じてセールスの交渉が行なわれる。
アメリカでは、家の売買が検討されたときの建築費をベースにしますので、物価が上がっていれば、中古であっても、住宅価格は新築したときより、上がることになります。また、住宅の価格が下がらないようにするため、アメリカでは住宅のグレードアップをはかるため、住宅を買ってから住んでいる人がいろいろ手をかけています。古い家ほど、手が加えられていることになるので、住宅価格が大幅に暴落することはなく、逆に中古住宅でも価格は上がっていくという仕組みのようです。
日本では経年変化によって減価償却するという考え方から、建築費を参考にしながらも減額されてしまうので、中古住宅は安くなってしまうのです。新築よりも割安な中古を買ってリフォームしながら暮らすという欧米スタイルが定着し、日本の住宅の平均寿命も延びていくのではないでしょうか。“お古” の家に住む事にこだわりはないのか?新築に比べて不良箇所が多いのでは?中古を購入直後に故障が起きた時の責任は?
参照HP:https://gentosha-go.com/articles/-/20650
1番目の理由は、アメリカでは新築住宅の供給そのものが極端に少ないからです。2番目の理由が、DIY文化が根付いていることにより、住宅の古さを気にする人が少ないからです。
1番目の理由ですが、アメリカでは土地の開発や建物の建築について、州または郡レベルでの非常に厳しい審査があります。日本でも都市計画法で用途地域というエリアが定められており、低層住宅専用などの用途規制が行われています。また、建築基準法により、容積率や建ぺい率の基準も定められています。 しかし、アメリカにおける土地の利用や建物の建築に関する規制は、日本とは比べものにならないくらい強力なものです。どのような用途で土地を利用して良いかという区画分けの規制を「ゾーニング」と言います。
アメリカと言えば「自由競争、自由経済の国」というイメージをお持ちだと思いますが、こと不動産開発に関してはまったく事情が異なり、多くの州、多くの都市で、日本よりも厳しい規制があります。まず、州内で人口が密集しているエリアの多くには、マスタープランが定められており、マスタープランに従って、どこの地区にどういった建物(集合住宅、戸建住宅、大型商業施設、小規模商店、工業施設、倉庫等々)を建てて良いのかが定められています。また、一定の面積の中に、どれだけの住宅を建てて良いといった、区画規制もあります。
つまり「このエリアでは、何軒くらいの新築住宅を供給しよう」ということが、あらかじめ決められている場合が多いのです(なお、マスタープランは必ず制定されているわけではなく、存在しないエリアもあります)。したがって、「いい空き地があるから、ここを買って住宅を建てよう」と思っても、まずマスタープランに合っていなければ不可能です。住宅街でも、その外れにコンビニがあったら便利だろうと日本の皆さんなら思うでしょう。
アメリカでは、住宅地としてゾーニングされたエリアにコンビニをつくることなどは、普通は認められません(これは、アメリカのコンビニが日本のコンビニのように便利ではなく、またあまりいいイメージを持たれていないこともありますが)。ただし、最初から住宅と商業施設の混合エリアとして計画されている場合もあります。
また、ゾーニングに適合していたとしても、一定の面積に対して何戸建てるのか、どういう人(所得階層など)が住む家を建てるのか、どんな家(タウンハウスなのか、シングルファミリーハウスなのか、何階建てなのか)を建てるのか、各戸の土地面積はどれくらいで、建物面積はどれくらいか、各戸はどれだけ離れているのか、その他膨大な計画要素を、すべて市と打ち合わせしながら決めなければなりません。
打ち合わせと言っても、単なる書類上の計画ではなく、実際に設計士に作ってもらったレイアウトを基にしてプランを作っていくのです。デベロッパーが行う大規模な開発といったことになると、コストも時間も非常にかかるのです。このように、新築住宅における建設への許認可のハードルが非常に高いことが、アメリカで新築住宅の供給が大きく増えない主な理由です。
家を選ぶ際に「よい学校のある地区」「環境の静かな地域」「都心で華やかな場所」「仕事場に自転車で行かれる地区」「森林や公園がある所」「固定資産税が安い地区」など、各人の目的と予算を考え合わせて、20も30も物件を見るが、新築物件は中古住宅物件(マンションも含む)に比べて数が少ないのだ。 特にここ数年の景気停滞で、住宅開発会社は新築住宅建設を手控えてきているし、もとは新築マンションや一戸建て住宅として売り出したにもかかわらず、景気の低迷期で売れ残り、賃貸に変えた事業者も少なくない。新築か中古かという質問はナンセンスであった。
2021年02月05日
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