能楽の謡(節づけされた台詞やナレーション)を初めて聞くと、聞いたことのない独特な声の響きとそのゆったりとした速度に驚くものですが、能楽の謡は、一説によると人間の体に最も心地の良い音とリズムで構成されているのだそう。日常生活の中に入ってきてしまう耳障りな音がないので、眠たくなるという効果があるほど、ストレスを感じる音がないのだと言われる。
能楽の歴史は、まずは平安時代に「散楽」が、「猿楽(さるがく)」と名前を変え、各地に広がり、室町時代に世阿弥という天才が出てきたことで大衆芸だった猿楽が芸術性の高い芸能に発展。江戸幕府の儀式芸能となっていた猿楽は、明治維新後は他の多くの芸能と同様廃絶の危機に瀕した。幸いに、皇族、貴族の支持者が増え、名称を「能楽」と言い換え猿楽継承の危機を乗り越えた。狂言は、猿楽から発展した日本の伝統芸能で、猿楽の滑稽味を洗練させた笑劇。
「式三番」は能楽(猿楽)が成立する以前の翁猿楽(老人の面を付けた神が踊り語って祝福を与えるという芸能)の様式を留める芸能である。各地の郷土芸能・神事としても保存されており、極めて大きな広がりを持つ芸能である。なお、能楽の演目としては「翁」とするのが一般的である。
世界遺産として認定された日本の芸能に触れることは縁遠くなってきているので、コロナ禍ではネットで舞台の様子を配信しているものもあるので、鑑賞してみるといいかもしれない。日本人のDNAに沁み込んでいる奥の深さ、を味わうことができるかもしれない。
歌舞伎「将門」
文楽
「浄瑠璃」とは、室町中期から琵琶や扇拍子の伴奏で座頭が語っていた牛若丸と浄瑠璃姫の恋物語に始まるとされる。のちに伴奏に三味線を伴奏楽器として使うようになり、太夫が詞章(ししょう)を語る音曲・劇場音楽となったのである。詞章が、劇中人物のセリフやその仕草、演技の描写をも含み、語り口が叙事的な力強さを持つ。このため浄瑠璃を口演することは「歌う」ではなく「語る」と言い、浄瑠璃系統の音曲をまとめて語り物(かたりもの)と呼ぶ。後に、河東・一中・宮薗(みやぞの)・常磐津(ときわず)・富本・清元・新内節などの各流派が派生した。清元とは江戸浄瑠璃清元節をさし、数ある浄瑠璃節の中では、一番新しくできたものである。
常磐津は「常磐津節」の略で江戸浄瑠璃(語り物音楽)のひとつで、長唄の三味線などとは異なり、あくまでもストーリーに忠実な音楽を奏でるのが基本で、演目に「将門」などがある。
単独で素浄瑠璃として演じられるほか、流派によっては人形劇である人形浄瑠璃として(文楽など)、歌舞伎音楽として、日本舞踊の伴奏として演じられる。
三味線には、太棹、細竿があり、長唄、小唄、端唄の伴奏は細竿を使う。
1曲の長さが、長唄は25分前後、小唄は4〜5分、端唄は2〜3分、です。
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