日本の自殺率は長年、先進7カ国(G7)で最も高くなっている。警察庁のデータによれば、昨年10月と11月の自殺者は、それぞれ約2200人、1800人。1月〜11月の自殺者は、1万9000人以上だ。10月の自殺者は、前年同月比で男性が約22%増。一方、女性は約83%増となった。新型コロナウイルスが日本においては、これまで以上に多くの人を自殺という選択に追い込んでいるようだ。これは、新型コロナウイルスによって日本経済が予期せず受けた影響で、失業者が増加、その7割近くが女性だ。これは、小売業やその他のサービス業で働く労働者に占める女性の割合が高く、「非正規雇用」の女性の比率が高いことを反映したものでもある。こうした働き方での仕事は、基本的にはパートタイムで、給料も手当も少なく、雇用の保障もほとんどない。現在の日本が抱える最も深刻な“持病”のひとつだ。
そして、日本政府が8年前、男女平等の実現を真剣に受け止めていると主張して以来、ほとんど何も達成できていないことを示すものでもある。安倍晋三首相(当時)は2012年の就任時、「女性が輝ける」場所に変える“ウーマノミクス”改革を約束した。2020年までに指導的地位に就く人に占める女性の割合を30%以上にするとの目標を打ち出し、企業経営者らに対し、より多くの女性を幹部に登用し、取締役会に加わる女性を増やすよう呼びかけた。残念ながら、新たに就任した菅義偉首相は、女性たちが受ける経済的逆風について、ほとんど何も語っていない。そして、彼が組織した内閣は、安倍前首相にみられたトークニズム(形だけの平等主義)を踏襲している。新たに閣僚に選んだ女性は、わずか2人。どちらも最重要ポストには就いていない。
世界経済フォーラム(WEF)は安倍前首相の在任中、(各国の男女平等の程度を指数化した)「ジェンダー・ギャップ指数」のランキングで、日本の評価を(2015年の)101位から20ランク下げ、(2019年には)121位とした。G7の1国である日本は、ベナン、アラブ首長国連邦に次ぐ順位となった。中国の台頭でアジアでも第2の経済国となって、金融の中心地としての地位の回復を目指す望むはずが、経済的に追い詰められて自殺者が増えているようでは、経済の回復などはとてもいえない。
政府は女性の就労率を約70%にまで引き上げたが、女性たちの大多数が、「非正規」フルタイム以外の形で働いている女性の割合、約66%の鏡像だ。社会学者たちは日本女性、特にシングルマザーたちの貧困率を憂慮していた。非正規雇用の従業員は、パンデミックが起きるなど経済的に困難な状況に陥れば、簡単に人員削減の対象にされる。
一方、エコノミストたちは、WEFのもうひとつの調査結果を重視している。それは、日本が女性たちに平等な競争の場を与えれば、それだけでも国内総生産(GDP)が約5000億ドル(約52兆円)増えるというものだ。さらに、米金融大手ゴールドマン・サックスの推計によれば、それはGDPを約15%押し上げる可能性がある。
ガラパゴスと揶揄される日本は、デフレだけでなく治癒が困難な家父長制と日本の既往症が染みつている。結局、閣僚になるような女性政治家も、家父長制を維持する旧来の性向であるのだから、デフレという日本の既往症の以前に根強い男女格差があある。今後、そうしたいかに予測不可能かつ危険な形で、新型コロナウイルスがもたらした混乱と融合しつつあるかについて、菅新首相が、女性の自殺者の急増に目を向けてくれることを願いたい、いかに予測不可能かつ危険な形で、新型コロナウイルスがもたらした混乱と融合しつつあるかについても新政権は考えて頂きたい。
出典:Forbs(https://forbesjapan.com/articles/detail/38829 政治経済 2020/12/17 掲載)
2021年01月06日
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