2021年03月16日

何かできたら儲けもの、生きていけるだけで大したもの

山口周 『ビジネスの未来』プレジデント社


「幸福」、「創造性」、「主観的な幸福状態」、「楽しみ」の研究(いわゆるポジティブ心理学)の心理学者・チクセントミハイが指摘しているように、多くの人は「夢中になれること」を見つけられないままに人生を終えていくが、これがなぜそれほど難しいかというと、「夢中になれること」はいくら頭で考えてもわからない、いろいろなことを行ってみた後で事後的に身体感覚として把握することでしかつかむことができないからです。

私たちが「知性」という言葉を聞いて普通にイメージするのとは大きく異なる「身体的な知性」が求められるのです。自分が何に夢中になれるのかは、結局のところは試してみないとわからない。

大西洋単独無着陸飛行にはじめて成功したチャールズ・リンドバーグの妻であり、また自身も女性飛行家として活動して素晴らしい紀行随筆を残したアン・モロー・リンドバーグは次のような言葉を残しています。

《人生を見つけるためには、人生を浪費しなければならない》

彼女の随筆にはそこここに柔らかな光を放つ宝石のような一文が埋め込まれていますが、これは中でも珠玉といえる至言でしょう。
私たちは「浪費」や「無駄」という言葉に、非常にネガティブなイメージをもっています。でもその「浪費」こそが、自分らしい人生を見つけるために必要だとリンドバーグは言っているわけです。

なぜなら「人生」は理性的に、先見的、効率的に見つけることができないからです。
私たちは、自分が何かに夢中になれるのかということを、事前に先見的に知ることができません。

なぜなら「夢中」というのは「心の状態」なので理知的に予測することができないからです。

それがたとえ「何の役に立つのかわからない」ような営みであっても、多くの時間と労力の浪費と無駄の先にしか「人生」を見つけることはできないというリンドバーグの指摘は、多くのキャリア論に関する研究からも裏づけられています。

結果的に成功した人は一体どのようにキャリア戦略を考え、どのようにそれを実行しているのか?
この論点について初めて本格的な研究を行ったスタンフォード大学の教育学・心理学の教授であるジョン・クランボルツは、アメリカのビジネスマン数百人を対象に調査を行い、結果的に成功した人たちのキャリア形成のきっかけは、80%が「偶然」であるということを明らかにしました。

ただ、当初のキャリアプラン通りにはいかないさまざまな偶然が重なり、結果的には世間から「成功者」とみなされる位置にたどり着いたということです。クランボルツは、この調査結果をもとに、キャリアは偶発的に生成される以上、中長期的なゴールを設定して頑張るのはむしろ危険であり、努力はむしろ「いい偶然」を招き寄せるための計画と習慣にこそ向けられるべきだと主張し、それらの論考を「計画された偶発性理論=プランド・ハップスタンス・セオリー」という理論にまとめました。

クランボルツによれば、我々のキャリアは用意周到に計画できるものではなく、予期できない偶発的な出来事によって決定されます。

それでは、キャリア形成につながるような「良い偶然」を引き起こすためには、どのような用件が求められるのでしょうか?
クランボルツが指摘したポイントを挙げてみましょう。

●【好奇心】自分の専門分野だけでなく、いろいろな分野に視野を広げ、関心をもつことでキャリアの機会が増える
●【粘り強さ】最初はうまくいかなくても粘り強く続けることで、偶然の出来事、出会いが起こり、新たな展開の可能性が増える
●【柔軟性】状況は常に変化する。一度決めたことでも状況に応じて柔軟に対応することでチャンスをつかむことがけきる
●【楽観性】意に沿わない異動や逆境なども、自分が成長する機会になるかもしれないとポジティブに捉えることでキャリアを広げられる
●【リスクテーク】未知なことへのチャレンジには、失敗やうまくいかないことが起きるのは当たり前。積極的にリスクをとることでチャンスを得られる

このクランボルツの指摘を先ほどのリンドバークの指摘に重ねあわせてみれば、私たちが真に自分の人生を見つけるためには、一見すれば「時間の無駄、時間の浪費」に見えるような営みにも、積極的に参加することが大事なのだということがよくわかります。

本書の中に「夢中になる」についてこんな文章があった。
『さて、どのようにすれば、自分が夢中になれる仕事を見つけることができるのでしょうか。
答えは一つしかありません。《とにかく、なんでもやってみる》

これに尽きます。


予防医学者の石川善樹さんは、ハーバード大学に留学していた際、あまりにも自分の興味範囲が広いため何からどのような優先順位で手をつけてよいかわからず、悩んだ挙句に指導教官だった教授に相談してみたところ、次のようにアドバイスされたそうです。
すなわち「興味あることは、全部やりなさい。興味のないことも、全部やりなさい」と。実に強烈なアドバイスですが、これは即ち「とにかく、なんでもやってみなさい」ということです。』

山口周氏はビジネスはその歴史的使命を終えているという。今日本が直面している「低成長」「停滞」「衰退」という状況も、物質的なものがほぼ充足された状態「祝祭の高原」。いってみれば、日本は世界でもっともはやく、この状況(ゴール)に行きついたと考えられる。
逆にいうなら、文明化の未達なところほど、成長率が高いともいえる。

そして、資本主義の終焉が近づいている。では、資本に変わるものはなにか。
シュワブは「資本主義から才能主義への転換」と言っている。
「才能」とは「個性」ということ。

各人の個性こそが、社会をより豊かで瑞々しいものに変えていく、そういう未来を「才能主義」と言う。
シュワブは「高原社会の高度をこれ以上高めようとするのではなく、この高原社会を、私たちにとってより幸福なものにする方向へ転換しよう」と呼びかける。

また、テクノロジーイノベーションはGDPの成長率には貢献しなかったという。重要な点は「全体のパイは増えていない」ということ。イノベーションが新たな市場を創造したのは事実だが、むしろ省力化や機械化によって労働需要が減退し、失業率が上がり、報酬の格差が広がることで、貧困が蔓延した、といわれる。

GAFAMのサービスも同じで、たとえばFacebookの売上のほとんどは「広告」だ。つまり、それまでテレビ・新聞・雑誌・ラジオといった従来型のメディア企業があげていた売上を単に奪っただけでしかなく、少なくともGDPという観点からは、全体のパイを広げることに貢献していない可能性がある、ということだ。
posted by Nina at 00:00| 千葉 ☁| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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