この間、感染者に占める死者の割合は大きく変化した。感染した人のうち、どのくらいの人が死に至っているのか。米ジョンズ・ホプキンス大のデータにより、世界の各地域の致死率を計算すると、これまでの世界の死者を感染が確認された人数で割った致死率(9月27日時点)は約3%である。5月末までは6・1%だったが、6月以降だけでみると2・3%まで下がってきている。一時、欧州で隆盛をみせた感染状況だったが、5月末までは8・7%だったのが6月以降は1・7%に減じている。大半の地域が同じ傾向だ。
新型コロナが中国で検出され、その後、世界に広がっていった当初は多くの国で検査体制が十分に整っておらず、症状がある人たちを中心に検査していた。実際のウイルスの広がりのうち、検査で確定できたのは氷山の一角だとみられ、分母となる感染者数が実際よりも小さくなって、致死率が高くなる傾向にあった。その後検査の拡大に伴って無症状の人を検査することも増え、ウイルスが弱毒化しているわけではないが致死率がはがると多くの専門家はみている。検査で確定できるのが氷山の一角であって、検査の分母が大きくなり、このところの致死率が低下との見方になっている。
また、致死率に影響を及ぼすのは感染の広がった地域の事情もある。3〜4月には高齢者が多い先進国のイタリアやスペインで感染が拡大し、院内感染も多発した。5月以降に感染が急拡大したブラジルやインドでは人口に占める若者の割合が多く、重症化しにくい年齢層が中心だったという状況もある。特にインドは簡易な抗原検査を大量に実施していることも大きいとみられる。
国立国際医療研究センター(東京都新宿区)の忽那(くつな)賢志・国際感染症対策室医長は「世界の致死率は下がる傾向にある。検査の実施数が増え、早めに診断されるようになった。感染者全体に占める軽症者の割合が増え、重症化のリスクが高い人が相対的に減ったことが大きい。治療薬やケアの質の改善なども影響しているのだろう」と話す。
参照:朝日新聞社 2020/09/29
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