2020年03月26日

公衆衛生の専門家が助言

公衆衛生の専門医である伊藤明子ドクターは東京外大・イタリア語学科卒業後、同時通訳の仕事を経て、ドクターになった異色の経歴を持つ。東京大学医学部附属病院小児科医師であり、かつ東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻を修了している公衆衛生専門医だ。

伊藤ドクターにインタビューするのは、機能性医学を唱える斎藤糧唱三ドクターで、腸内環境の再生によってアレルギーなどの慢性疾患を根治に導くことをめざす次世代型医療「機能性医学」を日本に紹介した実績を持つ。インタビューは3月22日(日)、伊藤ドクターが院長を務める赤坂ファミリークリニックの1室でおこなわれたWeb公開されていたので、有益、確かな情報であるので、転載する。

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伊藤 最初、中国・武漢から原因不明の肺炎患者が発生したと聴いて『あれ?』と、思いました。新興の感染症が発生しているのでは、と、思いましたね。まさに、“映画”のとおりです。

斎藤 映画とは?

伊藤 2011年に公開された『コンテイジョン”Contagion” 』(アメリカ映画)です。公衆衛生の研修でフィリピン・マニラにある世界保健機関(WHO)の西太平洋地域事務局にいた時に、WHOの先生が、私たち若いドクターに「公衆衛生にはさまざまな分野があるけれど、まもなく公開されるこの映画はわれわれWHOやCDC(米疾病予防管理センター)の人間がどう対応するかを比較的忠実に描いているから勉強になるよ」と言ったので、観たのです。
 映画では、未知の感染症が蔓延したらどうなっていくのか? が描かれていて、娯楽映画としてもよくできていました。その後、大学のドクター達に英語をご指導するとき、DVD学習の教材として『コンテイジョン』を勧めています。

斎藤 そうでしたか。

伊藤 一般に、“ほぼ10年に1度の周期で、大規模な感染症が発生する”とも言われています。最近では重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、それに新型インフルエンザなどが猛威をふるいました。ドクターたちの間では、「いずれ、もっと感染力の高い病原体が蔓延するのでは?」と、言われていました。

斎藤 新型コロナウィルスに対する各国の対応についてはどう思いますか?

伊藤 国によって大きな差がありますね。イタリアは、以前こそ先進諸国のなかで人口当たりの医師数が多いほうの国でしたが、医師の勤め先が統廃合などで減少して、医師資格があってもタクシー運転手として生計を立てている人もいるようになっていました。また、財政難などに伴い、政策として、病院の統廃合をおこなって医療施設や機器を絞ってきたことなども、死亡者の増大に関係しているのではないかと考えています」

斎藤 アメリカも今、感染者が増加していますが、アメリカについては?

伊藤 オバマケアは、日本の医療保険制度、皆保険制度を一部参考にしたオバマ政権下の2010年に発効した保険制度で、アメリカ市民の保険加入を義務化しました。それによって、当時約4800万人いた無保険者、つまり病気になっても高額の支払いが発生すると困るので医療にかかれない人たちを救済する制度が導入されたのですが、トランプ政権がオバマレガシーをつぶすために2017年に廃止を決定したんですね。そのためもあって、いまなお約2700万人の米国市民が“無保険”なので、高額な費用を要する病院に行くのをためらっているようです。そういう状況も感染拡大に関係しているのかもしれません。

斎藤 日本人は他国に比べ、感染者が少ないように見えますが、それについては、どうお考えですか?

伊藤 本当に感染者が少ないのか、検査を一律で積極的に実施していないから見かけ上、感染者数が多くなっていないのか、じつのところ、よくはわかりません。あるいは、すでに集団免疫がつきつつある、つまり新型コロナウィルスに対する抗体を持っている人が多くなっているのかもしれません。高齢者が多い国ですが、死亡者数が他国ほど多くはないという理由は、私にはよくわかりません。文化的背景や生活習慣の違いからくるのかもしれませんし、医療制度も関係しているのかもしれませんし。 “日本が島国だから” という人もいるうようですが、それは関係ないと思います。なぜなら、イギリスもそうですが、海外との交流が盛んにおこなわれているからです。

斎藤 ウィルスの属性が国や地域によって異なる可能性はありますか?

伊藤 それはなさそうです、新型コロナ関連の論文がすでに多数、出ていますが、現状では、ヨーロッパのウィルスがことさら強い毒性を有する、と結論づけた論文はありません。

◆日常での対策は
伊藤 通常の夜間の時間帯における睡眠時に、修復ホルモンや成長ホルモンが分泌されるので、夜10時くらいに就寝し、朝日とともに起きるのが心身の健康のためにはよいことです。

斎藤 食事に関して気をつけるべき点も教えてください。

伊藤 朝、昼、晩と毎回の食事で100g程度のタンパク質を摂取することが理想です。そして、肉、魚、大豆、卵などから2種類以上の食材を組み合わせて摂取することが望ましいです。ちなみに、豆乳や豆腐などの大豆食品だけでは、たんぱく質はあまり摂取出来ません。栄養バランスに優れた食生活が重要です。不足しがちなのは、たとえばタンパク質で、30〜40代の男性でも、タンパク質不足の人が意外に多いものです。

斎藤 野菜も重要ですよね。

伊藤 はい、大切です。野菜は毎食120g程度、摂取するのが目安です。生野菜では量が食べられないので、加熱した野菜をお勧めしています。国が推奨する一日の野菜の摂取量は350gですが、すべての世代が下回っているのが実情ですから、なおさら量は重視してほしいです。量とともに種類も意識してください。

斎藤 加熱調理のデメリットはありますか?

伊藤 茹で汁などを捨ててしまうと、水溶性ビタミンが摂取出来ません。汁ごと食すのであれば、加熱しても問題ありません。

−−栄養素をサプリメント類だけで補うのでもよいのでしょうか?

伊藤 サプリメント類のみでは、栄養は足りません。野菜の栄養価は50年前の4分の1になっているという事実もあり、ある程度の量をとることが重要です。肉や魚、野菜などには、研究し尽くされていない良さが豊富にあるはずだと考えています。


◆ビタミンDの重要性
斎藤 先生は、ビタミンDに関する研究をされていますが、新型コロナウィルスにも、ビタミンDは効果があるのでしょうか?

伊藤 “新型コロナウィルスに効果がある”とまでは言い切れませんが、ビタミンDをしっかり摂っている人の方が、ビタミンDを多くとっていない低い人より感染症にかかりにくかった、という研究は、メタ解析も含め、複数あります*2」

斎藤 日本人の多くは“ビタミンD不足”と、言われていますね。

伊藤 そうですね。たとえば、妊婦さんの約80%がビタミンD欠乏者という研究があります。妊婦さん以外でも、成人人口の約4割から8割の人が、ビタミンD不足に陥っていることを示すデータもあります。ビタミンDが不足すると、こどもではくる病、大人では骨軟化症など骨の不調の原因となりますし、認知症リスクが約3倍になるという研究もあります。、うつとも関連していますね。

斎藤 ビタミンDの血中濃度はどのくらいが理想ですか?

伊藤 ビタミンDについては認知度が低いため、不足している人がほとんどです。不足していると脳機能に関わるので、積極的に摂取してほしいですね。具体的には日本内分泌学会では30から100 ng/mLを基準値としていますが、諸々のリスクの低下には50 ng/mL以上あったほうがよいと研究論文でも示されています。

斎藤 ビタミンDの効果的な摂取方法は、どんなものでしょうか?

伊藤 これについては、サプリメントで摂取するのが効果的です。本来ビタミンDは、太陽光(紫外線)を直接浴びることで生成されます。ただし、日焼け止めクリームを塗ると生成されません。冬は紫外線が弱いため、短時間の日光浴ではビタミンDがあまり生成されません。とはいっても、太陽光を浴びすぎると皮膚癌やシミのもとにもなるので、浴びすぎはおすすめできません。ということで、サプリメントがもっとも効率のよいビタミンDの摂取法になる、というわけです。

斎藤 ビタミンDを食品で摂取する場合、オススメの食材はありますか?

伊藤 鮭やいわしなどの魚がおすすめです。きくらげなどにも含まれますが、動物性のビタミンDに比べて吸収が3分の1です。とはいえ、いずれの食品もビタミンDの量はそれほど多くないので、サプリンメントで補充するのがよいでしょう。ちなみにドイツやオーストラリアなどでは公衆衛生対策として、赤ちゃんが生まれると、全員にビタミンDの液体を配布しています。つまりそれらの国では、ビタミンDを国民の健康対策として重要視しているのですね。

斎藤 ビタミンDの目標摂取量はどれくらいですか?

伊藤 すくなくとも1日400IU(10μg=マイワシ30g相当)ですが、成人でしたらその5倍の2000IU(50μgおよそ身欠きニシン100g相当)をお勧めしています。ただ、サプリメントでビタミンDを補う場合は、種類や内容に注意してください。とくにインターネット上で販売されている格安サプリメントは注意が必要です。それから、ビタミンDサプリではありませんが、市販のサプリメントを常用した副作用で、命を落とした人や肝移植をせざるをえなくされた人が出たというケースも報告されています。安心なのは医師が勧めるドクターズサプリですね。ちなみに、乳幼児用のサプリメントもあります。それを小さなお子様に服用させるのは問題ありませんし、欧米では推奨されています。

斎藤 ビタミンDの重要性を知っている親御さんは、積極的に乳幼児にサプリメントを与えていますね。

伊藤 一部の、偏った食生活をされているご家庭のお子さんは、ビタミンDが重度に欠乏しやすくなるので、動物性たんぱくも野菜もバランスよく、根気強く子どもに与えるのが大事だと思います。

斎藤 ビタミンDの摂取以外に、新型コロナウィルス関連で気をつけるべき点はありますか?

伊藤 消毒のしすぎで、のちのちアレルギーが増えるのでは、と心配しています。とくに、次亜塩素酸系の除菌剤を頻繁に使うと、腸内細菌の多様性が崩れてアレルギーリスクが上がる、という論文が複数あります。アルコールについてのデータはなさそうですが。

斎藤 では、最後になりますが、新型コロナウィルスに関して、再度、強調されたいことをおっしゃってください。

伊藤 オーバーシュート(爆発的な感染拡大)が話題になっていますが、そういう事態が避けられることを望んでいます。そのためにも、私たちひとりひとりが感染予防のための情報を、積極的に身に着けて行動を変えていくことが大切だと思います。


出典:GQ JAPAN(3/25)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200325-00010010-gqjapan-bus_all&p=3
posted by Nina at 10:47| 千葉 ☁| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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