千葉県市原市の養老川沿いには、約77万年前、地磁気(N極・S極)が最後に逆転したことを証明する地層がある。この地層が、地質学の国際的な基準に登録され、約77万年前〜12万年前までの地質学上の時代を「チバニアン」と命名することが決定した。
<経過>
2017年6月:「国際地質科学連合」の専門部会(一次審査)申請し、模式地に選出された
2018年10月:国の天然記念物に指定
2019年11月:第三次審査を通過
2020年1月:最終審査を経て正式に認定
前から市原市はチバニアンは天然記念物として保存する予定であり、2019年に市有地として自由に立ち入れるようにしようと、民有地2万2500平方メートルを持つ地権者約30人に対し、買収の交渉に入った。ところが、155平方メートルを持つ地権者から、計画に反対する楡井久・茨城大名誉教授(地質学、土壌調査)が代表を務める「古関東深海盆ジオパーク認証推進協議会」(香取市)は1月には足場の悪い千葉セクションの模式地へのアプローチにコンクリートブロックなどで階段を設置し、天然記念物指定を目指し慎重になっていた市原市は困惑した。月5千円の賃料で10年間の賃借権を設定したため、6月にはこの協議会と交渉するよう市に通告していた。
今回の申請者の茨城大や国立極地研究所などの研究チームは、申請時には千葉セクションだけですべてのデータをそろえ、専門誌に掲載された査読論文に基づいてに「第四紀更新世前期・中期の境界地層の国際標準模式地(GSSP)」として申請していた。 これに対して、その以前から長年にわたる調査を続けてきた楡井氏らは、申請前の2015年に千葉セクションで十分なデータが取れなかったため、研究チームが2キロ先の地層のデータを使って補強した今回のを申請について、捏造/ドーピングなどとして「チームの論文に改ざんがある。チバニアンを認めない」とメールをイタリア学会などに送って告発していた。
昨年9月までに審査の手続きに入らないと、時間切れで計画が白紙に戻る可能性があった。国際地質科学連合が認定すれば、露頭にゴールデン・スパイク(金の杭)が打ち込まれるが、認定不可能になればライバルのイタリアの地層の時代が「イオニアン」として認定されるか、あるいは白紙となる可能性もあった。そのため、菅沼悠介・国立極地研究所准教授は「専門家による科学的審査は終わり、問題がないと認められている」と説明。また、申請チームの岡田誠・茨城大教授(天然記念物認定委員会の委員長も兼務)は「認定されなければ科学にとって大きなマイナスだ」と訴えて、「古関東深海盆ジオパーク認証推進協議会」からの指摘は事実無根とのチームの反論を学会側が認めて、申請手続きを再開した経緯があった。
それまでの研究で地球は、過去何回も北極と南極の地磁気の逆転が起きたことが知られている。そのたびに氷河期などの気象変動が起きたとの説もある。その最後の地磁気逆転現象が起きたのは約78.1万年前とされ、その境界は現在〜約78.1万年前まではブリュンヌ期(正磁極)、約78.1〜約258万年前までを松山期(逆磁極)と呼んでいる。M-B境界とは、2人の地球物理学者、松山基範とベルナール・ブリュンヌの名前にちなみ、Matuyama/Brunhes境界(M-B境界)と呼ばれる。ちなみに、日本で最初にM-B境界として提案されたのは京都市伏見区の大阪層群の露頭だが、その露頭は住宅地や工場用地として開発が進み、粘土採掘場はごく少なくなり、露頭条件は非常に悪くなった。
参照:朝日新聞(2018/2/12)
ビジネスジャーナル(2019/7/27)
2020年01月17日
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