ストーリーは、国民から嫌われ、史上最低の支持率を叩き出した総理大臣・黒田啓介が主人公。ある日、一般市民の投げた石が頭に当たり、彼は記憶喪失になってしまう。金と権力に目がない悪徳政治家だった黒田が、一夜にして善良で純朴な普通の「おじさん」に変貌してしまった。国政の混乱を避けるため、国民はもちろん、大臣たち、家族にさえ、記憶を失ったことを隠し、直近の秘書官たちに助けられながら、なんとか日々の公務をこなしていく。やがて、あらゆるしがらみから開放され、真摯に政治と向かい合うことになった黒田は、次第にこの国の未来を考えた政治に変えたいと思い始める、というもの。
主人公の総理大臣を熱演した中井貴一は「脚本が完璧。役者が小賢しいことを考えないでできる。それがコメディになる理想的な形だった」と、三谷監督を称賛。さらに「アドリブは、ほぼない」としながらも、三谷監督から「冒頭の『クソ野郎!』のセリフはアドリブだったよ」と指摘されると「そう言えば、あれはアドリブでした」と初日の舞台あいさつで笑った。
映画のメガホンを取った三谷幸喜監督は「本当は(米大統領役に)男性をキャスティングする予定だった。ただ予算の関係でジャック・ニコルソン、トム・ハンクスを断念して…。そうなったら木村女史しかいない」と冗談交じりに語りつつ「素晴らしかったです。ただ、セリフがほぼ英語なので、僕も何言ってるか分からない。雰囲気がよかったです」と大絶賛(?)していた。
木村佳乃がアメリカ初の日系女性大統領を演じ、舞台挨拶冒頭でも流ちょうな英語を披露した木村は「身に余る光栄な役。とにかく中学校時代、アメリカに住んだことがあってよかった。両親に感謝したい。オファーを頂いた時は、驚いてひっくり返りましたし、本当に緊張しました。」と、米国でも未だ誕生していない女性大統領役に感無量。役作りについて話題が及ぶと「ただ英語をしゃべるだけでなく、大統領として話す。ヒラリー・クリントンさんの演説をYouTubeで何回も観て、研究しました。外国の方は手振りが多い。その部分も頑張りました」と振り返り、苦労をにじませた。
そのほか、ディーン・フジオカ、石田ゆり子、草刈正雄、佐藤浩市、小池栄子、斉藤由貴、吉田羊、後藤淳平(ジャルジャル)など、実力派が勢ぞろいした映画は、この頃、テレビ社会の主流になってきたお笑い系タレントを排して、演技派の正攻法で製作したようだ。真面目に面白いので、政治と宗教は避けるという常識?を面白おかしく覆してくれそうだ。
みんなで観てこそと、社会をおもろく、仕切り直してくれそうだ。
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