平成14年に児童文学作家、古登(こと)正子さん(故人)の私財提供から始まった。一時期の資金不足による存続の危機も乗り越え、文化が薫る我孫子発の文芸コンクールとして浸透している。
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我孫子市は大正時代に志賀直哉や武者小路実篤らの白樺派文人が暮らした文学の街。めるへん文庫はこの伝統を受け継ぎ、次世代の創作者を育てようと創設された。市内に暮らして童話活動に取り組み、2年前に亡くなった古登さんの1200万円寄付がきっかけだった。しかし、市教委が担当するめるへん文庫事業は、印刷費用などで1年で約100万円が必要とされ、24年には資金が底をついた。このため市が約50万円を拠出。生前の古登さんも寄付を上積みしてくれて、危機を乗り越えた。さらに古登さんは「遺産を運営に」と希望。没後には計4670万円が寄贈され、80年先まで長期継続が可能になった。
メジャーな文学賞の登竜門的な位置づけでは決してない。市は「子供たちがいろいろなことに挑戦するために、創作で想像する場面を提供したい」と、私財を投じた古登さんの思いを引き継ぎ、子供の成長をサポートする舞台であると強調する。
第1回から審査員を務める児童文学者の横山悦子さんも「書くことで自分の心を見つめ、生きる力が育まれる」と指摘。その上で、「子供たちにそうした機会を提供する文学賞は我孫子の宝であり、浸透してきたことで古登さんも喜んでくれているはず」と話す。
しかし「古登さんの遺志をつなぐには、これだけに頼るのではだめだ」と、市と市教委は市民や文学を支える人たちに協力を求めている。
市役所への募金箱設置もそのひとつ。市のマスコットキャラクター「手賀沼のうなきちさん」は、白樺派文学のファンで、手賀沼湖畔での読書が大好きとされる。市は「好意から始まった事業なので、めるへん文庫のPRや振興は使命だと思っている」と話す。
4千字以内の条件を満たせば、小・中・高の部門に応募でき、内容は小説でも童話、詩、エッセーでもよい。反響は全国に広がり、第1回は99点だった応募が、第15回には159点になっている。作品レベルも年々向上し、過去の入賞者からは、高校生の全国童話コンクールの入賞者が出ている。2019年の応募は4月1日(日曜日)から9月6日(金曜日)必着。詳細は下記で。
http://www.city.abiko.chiba.jp/event/culture_art/melhenbunko/meruhenbunko-bosyu.html
入選作品を掲載した作品集を作り、市内小中学校や図書館に配布するほか、1冊500円で販売するのが伝統。「めるへん文庫」の審査員も務める画家・絵本作家、長縄栄子さんが描く表紙、挿絵も人気で、第1・2回の入賞作品を一冊にまとめた第1集は完売。
参照URL:https://www.sankei.com/region/news/170514/rgn1705140043-n1.html
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