2019年10月15日

日本の観光と「ホテル」

ホテルは、単に旅行者をもてなすだけでなく、その街の文化や歴史を象徴する大切な存在です。ホテル経営に携わるプロフェッショナルにたいして、敬意の念を含めて、欧米では「ホテリエ」と呼ぶのです。ホテルは、「ソーシャライジング(等身大の社会貢献)」という考えもあります。現代の観光はかつての団体旅行、パック旅行のマスツーリズムではなく、一人、少人数、家族の希望に沿って出かけるニッチなビジネスがねらい目にもなる時代。例えば、『ウエルネス』や『メディテーション』『エスケイプ』といったように、ハイからエンドまで、超ヒップでかっこいいを目指せるなど自由度が高く、うまく狙いが当たれば成功の果実も得やすい時代になっています。

そんな中で、日本の観光に熱いメッセージを送るのが、京都の老舗工房を任された異色の英国人社長・デービッド・アトキンソン :(小西美術工藝社社長)で、次のようなことを著しておられますので、日本観光をブラッシュアップさせるためにもご一読下さい。下記はその一部概要ですです。

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私は2015年に上梓した『新・観光立国論』のなかで、日本がもつ観光のポテンシャルが極めて高いことを指摘させていただきました。
さかのぼれば、2007年の訪日外国人観光客はわずか800万人強でした。残念ながらあまり景気のいいニュースを耳にしない日本で、「観光」は気がつけば10年で3倍もの成長を遂げている「希望の産業」なのです。「上」を見上げれば、アメリカ、中国、スペイン、フランス、イギリス、タイ、イタリア、ドイツ、香港など、まだ多くの「観光大国」があるという厳しい現実もあるのです。

また、少子高齢化によって社会保障が重い負担となっていくこの国では、「観光」こそが大きな希望になりうることを提言させていただきました。「国際観光収入」のランキングでは、日本は2013年に世界第19位でしたが、2015年には第12位までランクを上げて、トップ10入りが目前となっています。そのような立場からすると、日本がポテンシャルを発揮してきた昨今の状況は、本当にうれしく思っています。ただ、その一方で「まだまだこの程度で満足してもらっては困る」というものであります。

年間2400万人の観光客が訪れ、G7の一角をなす「経済大国」であるはずの日本に、タイの4分の1、メキシコの3割しか「5つ星ホテル」が存在しない。これは明らかに、日本が国際観光ビジネスを重視してこなかった結果だと思います。Five Star Allianceに登録されている3236軒の「5つ星ホテル」がある139カ国を訪れた外国人観光客数は11億4907万人(2015年)ですので、1軒当たりの外国人観光客は35万5090人になります。この計算でいくと、2020年に4000万人の訪日観光客を目指している日本には、最低113軒の5つ星ホテルが必要となります。2030年の6000万人だと169軒です。

実際、世界各国の国際観光収入と「5つ星ホテル」数の相関関係を分析すると、なんと相関係数は91.1%。極めて高い数値を示します。よく考えてみると1泊数千円の宿に泊まるバックパッカーが1人来るより、1泊10万円のホテルを利用する富裕層に来てもらったほうがよほど稼げるのは当たり前です。このような人は、ホテルに限らず、あらゆる観光資源にたくさん支出してくれる存在なのです。

そこで、日本のポテンシャルをどうすれば正しく引き出すことができるのかを、『世界一訪れたい日本のつくり方』という本にまとめさせていただきました。これは『新・観光立国論』で提言したことをベースにした「実践編」ともいうべきものです。重視すべきは「観光客数」より「観光収入」だというのは明らかです。

そこで、観光収入を決定する要因を探したところ、驚くべき事実を発見しました。さまざまな分析をする中で、世界の高級ホテルに関するデータを見つけて、大きな衝撃を受けたのです。

Five Star Allianceという有名な「5つ星ホテル」の情報サイトがあります。そのデータによると、世界139カ国に3236軒の「5つ星ホテル」があります。では日本はどうかというと、日本国内でこのサイトに登録されている「5つ星ホテル」はわずか28軒しかありません。これは、ベトナムの26軒を少し上回る程度です。

「ひとつの国にある超高級ホテルの数なんてそんなものじゃないの」と思うかもしれませんが、実は外国人観光客が年間2900万人訪れているタイには110軒の「5つ星ホテル」があります。バリ島だけでも42軒です。年間3200万人訪れているメキシコにも93軒の5つ星ホテルがあるのです。

タイはすばらしい実績を上げています。2900万人の観光客しか来ておらず、物価水準も先進国の半分以下であるにもかかわらず、タイの観光収入をドル換算すると、世界第6位の観光収入を稼いでいる計算になります。

「5つ星ホテル」を多くもっている「観光大国」がいかに潤うのかは、さまざまなデータが雄弁に物語っています。たとえば、アメリカは国際観光客数では世界一のフランスに及ばす第2位というポジションに甘んじていますが、国際観光収入では圧倒的な世界一です。

一方、フランスは世界で最も外国人観光客が訪れているのに、国際観光収入では第4位に転落しています。1人当たり観光客収入で見ると、アメリカは世界第6位なのに対し、フランスはなんと世界第108位にすぎないのです。ちなみに、タイは第26位と、かなり健闘しています。

つまり、たくさんの外国人観光客が訪れているものの、アメリカを訪れる外国人観光客よりあまりおカネを使わないというのが、フランスの課題なのです。実はアメリカにはなんと755軒の「5つ星ホテル」があり、これは、全世界の「5つ星ホテル」の23.3%を占め、断トツの世界一なのです。一方、フランスの「5つ星ホテル」はタイよりも少し多い125軒しかありません。つまり、渡航先で多くのおカネを費やす「富裕層」を迎え入れる体制の差が、そのまま1人当たり国際観光収入の差になっているのです。

それを踏まえて、日本を見てみましょう。先ほども申し上げたように、日本の国際観光収入はベスト10入りが目前に控えるようなポジションまで上がってきていますが、「1人当たり国際観光収入」で見ると世界で第46位という低水準に甘んじています。都市別に見ると、東京にある5つ星ホテルは18軒で、世界21位です。興味深いことに、東京は観光都市ランキングでは世界17位です。

このように見てくると、日本には2400万人もの外国人観光客がやってきているものの、彼らからそれほどおカネを落としてもらっていないといがいこう問題が浮かび上がるのです。






国連の数字によると、2014年の国際観光客は11億3300万人。そのなかで最も割合が高いのは、実は欧州発の観光客で5億7500万人(約51%)、その次にアジアの2億6790万人(約24%)、南北アメリカの1億8920万人(約17%)と続きます。

ここで、これらのすべてが「日本にやってくる可能性のある観光客」ではないことに注意が必要です。皆さんもそうだと思いますが、観光客はより近い観光地に行く傾向があります。データによりますと、観光客の約8割は地域内観光、要するに近隣諸国を観光する人々です。

各地域の観光客数と地域内観光をする人の比率がわかりましたので、日本にやってくる可能性のある観光客の総数=「来日潜在市場」が計算できます。欧州から地域外へ観光するのは、5億7500万人×20%=約1億1500万人、南北アメリカからは1億8920万人×20%=3784万人。一方、アジアは同じ地域ですので、2億6790万人×80%=2億1432万人。これが、日本の「来日潜在市場」となります。

日本のインバウンドが飛躍的に伸びたのは2015年ですので、2014年の訪日客数を使って比較してもしょうがありません。つまり、アナリストとしては非常に不本意ではあるのですが、2014年の世界市場のデータを、2015年の訪日外国人観光客の分析に用いているのです。

しかし、このような比較をしないことには、急速に成長している日本のインバウンドの実態と、そこに潜む課題が見えてきません。過去の国連データを見ても、1年でそこまで大きな変化は起きないと思いますので、異なる年のデータを分析に用いることをご理解ください

2015年の訪日観光客はアジアが86.5%を占めており、来日潜在市場の構成比である55.3%と比較しても際立って高くなっています。それは、中国などのアジアからの観光客が多すぎるということなのか、他地域が少なすぎるということですので、潜在能力と比較してみる必要があります。

アジアからの来日潜在市場は2億1432万人なのに対し、実際にはその8.0%の1707万人しか来日していません。これは、まだまだ伸ばしていく余地がある数字です。

ということは、アジアは多すぎではないということなので、他の地域が少なすぎるという結論が導き出されます。つまり、アジア以外の地域の実績を伸ばしていかなければいけないということです。

アジアの次に多くの人が訪れているのは、南北アメリカからで138万人(7.0%)となっています。これは来日潜在市場の構成比である9.8%と比較しても、そこそこの実績といえましょう。これはやはり、北米と日本の長年の関係で、観光客誘致にも力を入れてきた成果だと思われます。

そして、問題が欧州からの観光客です。世界の国際観光客の50.8%、来日潜在市場の比率でみても29.7%という潜在能力があるにもかかわらず、現実に日本を訪れているのは124万5000人足らずで、全体の約6.3%に過ぎません。これは「欧州は日本から遠く離れている」という距離の問題では片付けられないほどの少なさです。つまり、今の日本のインバウンドは、アジア、アメリカからの観光客と比較して、欧州からの観光客が際立って少ないという現実があるのです。

欧州全体の人口に占める訪日観光客の比率は0.21%。1人当たりGDPが低く、人口が非常に多いロシアとポーランドを除けば0.31%とやや上がりますが、欧州全体の人口に占める欧州からの訪日潜在市場である1億1500万人の比率は約2%。つまり、本来は欧州の人口の2%程度が日本を訪れるポテンシャルがあるのです。そのような意味では、日本が観光立国を目指していくうえで、欧州にはまだまだ多くの「宝の山」が眠っていると考えるべきではないでしょうか。

現在の訪日外国人観光客数は、全世界の国際観光客数の1.7%に過ぎません。これは、訪日潜在市場の5.1%にあたります。2020年の目標である訪日外国人観光客4000万人を達成するためには、今の世界の国際観光客の3.5%、訪日潜在市場の10.3%に来てもらう必要があります。つまり、日本が目標を達成するには、市場規模が成長しないなら、今の2倍にシェアを拡大していかなければいけないのです。

そのためには従来のやり方だけでは不十分だということは、容易に想像できるでしょう。桜、すし、富士山、芸者、という古くからの「ジャパン」のイメージだけではなく、スキージャパン、ビーチジャパン、ウォークジャパン、食べるジャパンなど、これまでにはない多様性に富んだ観光資源を広くPRしていく必要があります。

そしてドイツのように、本来であればもっと日本に来ていてもおかしくない国をあぶりだし、自治体と民間がうまく連携しながら、観光PRやマーケティングを行う。

そのためには、これまでのように「桜、富士山、芸者」という紋切り型の情報発信ではなく、各国の文化や観光客の嗜好に合わせ、カスタマイズした施策が必要です。

そのような賢く、きめ細かいマーケティングを実施していけば、日本のポテンシャルを考えると、4000万人は2020年以前に軽々と実現できるはずです。


posted by Nina at 06:00| 千葉 ☁| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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